都落ち
米騒動に巻き込まれ、若者たちが捕まってしまった後、タケルと澤北は都から逃げることに決めた。市場は混乱し、物価高の影響で商人たちの態度も冷たく、銀鉱石を持つ二人の立場は厳しかった。
「これ以上ここにいても、何も買えないな」とタケルはため息をついた。
「そうだな。村に戻ろう。せめて銀鉱石だけでも何かと交換できればいいが…」と澤北は深刻な表情で答えた。
二人は銀鉱石を交換しようとするが、商人たちは皆、足元を見てくる。
「銀鉱石一つでこれだけか?」とタケルが驚いて声を上げる。
「物価が上がっているんだ。これが精一杯だ」と商人は冷淡に答える。
「どうする、澤北?このままじゃ村に何も持ち帰れないぞ」とタケルは焦った。
澤北は周囲を見渡し、冷静に考え始めた。「このままではいけない。俺たちが村に持ち帰れるものを考えないと…」
澤北は一計を案じた。「タケル、まだ一人、話をしていない商人がいる。あそこに行ってみよう」と言い、二人は最後の望みをかけて市場の隅にいる銀細工師の元へ向かった。
銀細工師は年老いた職人で、その顔には多くの年季が刻まれていた。
「おじいさん、この銀鉱石で何か交換できませんか?」と澤北が丁寧に尋ねると、銀細工師はしばらく考え込んだ。
「この銀鉱石は上質だ。しかし、今の状況では簡単に払えない。でも、お前さんたちが本当に困っているなら、少しは助けてやれるかもしれない」と銀細工師は静かに答えた。
澤北は銀細工師の工房に入ると、目を凝らして周囲を見回した。工房には様々な工具や材料が並んでいる。
「おじいさん、この銀鉱石の価値を最大限に引き出せるものを探しています。何か見せていただけませんか?」と澤北が尋ねると、銀細工師は頷いて工房の奥から古びた箱を取り出した。
「これは私が長年使ってきた道具だ。こちらはもういらないものだ、もしお前さんたちに役立つかもしれんから、交換してもよい」と銀細工師は箱を開けた。
澤北は箱の中を覗き込み、一つ一つの工具を手に取りながらじっくりと鑑定した。
「これは…鋳造用の型か?これがあれば、村で農具や道具を作れるかもしれない」と澤北は興奮気味に言った。
「それに、この錆びついているけど頑丈そうな鎚は、修理すればまだ使える。これも役に立つだろう」とタケルも興奮を隠せなかった。
「これらの工具があれば、村で何かを作り出せる。おじいさん、この工具と引き換えに銀鉱石を差し上げます」と澤北は提案した。
銀細工師は澤北の真剣な目を見つめ、ゆっくりと頷いた。「いいだろう。その銀鉱石をもらおう。その代わり、この工具一式を持って行きなさい。村のために役立ててくれ」
「ありがとうございます、これで村の皆を助けることができます!」とタケルは感激して答えた。
「助かったよ、おじいさん。これで少しでも村を救える」と澤北も感謝の意を表した。
銀鉱石と引き換えに手に入れた工具一式を持って、タケルと澤北は村に戻ることを決意した。
「これで村の皆が少しでも元気になれるといいな」とタケルは希望を抱いた。
「俺たちができることは小さいけど、村のために全力を尽くそう」と澤北は決意を新たにした。
二人は村へ戻る道中、これからの計画を話し合いながら歩みを進めた。村の未来を信じて、彼らの冒険はまだまだ続く。