米騒動
長屋での宴会の翌朝、タケルと澤北は若者たちの声で目を覚ました。昨夜の賑やかさとは一転して、今朝は緊張感が漂っていた。
「今日は米騒動に参加するぞ!」と一人の若者が声を上げた。
「米騒動?」とタケルはまだ半分眠りながら問いかけた。
「そうだよ。物価が上がりすぎて、もう我慢できない。お上に訴えるしかないんだ」と若者は真剣な表情で答えた。
タケルと澤北が戸惑う中、若者たちは準備を進めていた。昨夜のおにぎりが、彼らにとって最後の晩餐だったことを知ったタケルは見て見ぬふりはできなかった。
「タケル、どうするんだ?」と澤北は不安そうに尋ねた。
「こんな大変なことになるなんて…でも、一宿一飯の恩義がある。俺たちが見て見ぬふりをするわけにはいかない」とタケルは決意を固めた。
「いや、俺たちは巻き込まれるべきじゃない。逃げるべきだ」と澤北は言い、逃げようとしたが、タケルは彼を掴んで引き止めた。
「澤北、俺たちは助け合うんだろ?あの若者たちを見捨てるわけにはいかない!」とタケルは強く言った。
若者たちと共に、タケルと澤北は米騒動の現場へと向かった。市場には怒り狂う人々が集まり、お上への抗議が激しさを増していた。
「米が高すぎる!」「お上は私たちを見捨てたのか!」と叫ぶ声が響き渡る。
「これが物価高の影響か…」と澤北は冷静に状況を分析しながらも、内心は恐怖に震えていた。
「お前たち、何をしている!」とお上の役人が現れ、若者たちを取り押さえようとした。
その時、一人の若者が役人に捕まりそうになった。タケルは躊躇なくその若者を助けに駆け寄った。
「放せ!この人たちは何も悪くないんだ!」とタケルは役人に立ち向かった。
「お前も共犯か!」と役人は怒鳴り、タケルをも捕まえようとした。
「タケル、ダメだ!逃げろ!」と澤北は叫んだが、タケルはその声を無視して若者を助け続けた。
「このままじゃタケルも捕まってしまう…」と澤北は焦り、逃げようとするも心が揺れ動いた。最終的に彼は決意を固め、タケルを助けるために駆け戻った。
「タケル、こっちだ!」と澤北は叫び、タケルの腕を掴んで逃げ道を指し示した。
「澤北、ありがとう…!」とタケルは感謝しながらも、まだ若者たちを助けたいという気持ちを捨てきれなかった。
それでも、役人たちが迫る中、澤北はタケルを無理やり引っ張り、訳も分からず、走り続けた。
「ふぅ…危なかった」とタケルは息を整えながら、澤北に感謝の眼差しを向けた。
「お前、本当に無茶するな…」と澤北は息を切らしながらも笑顔を見せた。
「でも、若者たちを見捨てるわけにはいかないんだ」とタケルは答えた。
しかし、周囲を見回すと、若者たちは次々に役人に捕まり、連行されていた。昨夜一緒に宴会を楽しんだ彼らの姿は、どこにもなかった。
「澤北、あいつら…」とタケルは言葉を失った。
「これが現実だ。俺たちも捕まっていたかもしれない。」と澤北は冷静に言った。