道中記?!
村の長老に見送られ、タケルと澤北は意気揚々と旅を始めた。空は澄みわたり、気分も爽快だったが、それは最初のうちだけだった。
「なあ澤北、あの村に寄って休もうぜ」とタケルは指をさした。道中最初に立ち寄った村の様子はひどかった。人々は痩せ細り、活気が全くなかった。
「これ、何かの間違いじゃないか?この村、どうしちゃったんだよ、以前と全然違う」とタケルは驚いた。
「物の値段が上がりすぎて、誰も物を買えないんだ」と澤北が説明した。「見ろ、あのおにぎり一個が銀銭一枚だ。」
「おにぎり一個が銀銭一枚!?そりゃあ生きるのも大変だよな」とタケルは呆れ顔で答えた。
彼らが進むにつれて、道はどんどん荒れていった。本来首都に近づけば近づくほど、きれいになっていくのにだ。舗装もほとんど崩れ、人々は道端で物乞いをしていた。
「澤北、これって本当に大丈夫なのか?俺たち、無事に首都までたどり着けるのかな、かなり壊れてきている。」とタケルは心配になった。
「心配するな、タケル。俺たちには銀がある。これをうまく使えば、何とかなるさ」と澤北は冷静に答えた。
その夜、彼らは宿屋を見つけて泊まることにした。しかし、その宿屋はひどい状態だった。
「布団がカビ臭いし、飯は乾いたおにぎりと水だけだぞ!」とタケルは文句を言った。
「これでもマシな方さ。他の宿屋なんて、寝る場所さえないんだから」と澤北は冷静に言った。
「本当にこの国、どうなっちゃうんだろうな」とタケルはため息をついた。
翌日、彼らは道中で奇妙なキャラクターに出会った。ある男が自分の持っているものを高値で売りつけようとしてきた。
「この木の枝一本、銅銭三枚だ。どうだい、買わないか?」と男は言った。
「木の枝一本が銅銭三枚!?冗談だろ」とタケルは笑い飛ばした。
「いや、冗談じゃない。物の値段がどんどん上がって、これが普通になっちまったんだよ」と男は真顔で答えた。
「おいおい、これじゃあ何も買えないじゃないか」とタケルは頭を抱えた。
さらに進むと、彼らは道端で喧嘩をしている村人たちを見かけた。
「なんだ、こんなところで何をやってるんだ?」とタケルが近づくと、一人の村人が言った。
「この男が、銅銭五枚で買ったはずの魚を、銀銭二枚で売りつけようとしてきたんだ!」
「そりゃあひどいな。でも、魚が銀銭二枚とは高すぎる」と澤北は呆れた。
「こうなっちゃ、まともな商売なんてできないよ」とタケルは首を振った。
さらに進むと、彼らは行商人に出会った。彼は背中に大きな荷物を背負い、道端で休んでいた。
「おや、旅の方々。何か買っていきませんか?今なら特別に安くしておきますよ」と行商人は言った。
「何を売っているんだ?」と澤北が尋ねた。
「おにぎり一個、乾いた肉、それに新鮮な野菜少々。全部で銀銭五枚です」
「銀銭五枚!?それでこの少しの食べ物?冗談だろう」とタケルは驚いた。
「冗談じゃありませんよ。これでもかなり安くしてるんです」と行商人は真顔で答えた。
大きな町に入ると、町全体が騒然としていた。市場では人々が押し合いへし合い、物を奪い合っていた。
「澤北、これじゃあまるで戦場だよ」とタケルは呆然とした。
「人々は何でもかんでも値上がりするから、少しでも物を手に入れようと必死なんだ」と澤北は冷静に答えた。
市場の片隅で、果物を売っている老婆がいた。タケルがリンゴを手に取ると、老婆は言った。
「そのリンゴ、銀銭一枚だよ。」
「銀銭一枚!?たった一つのリンゴがか?」とタケルは驚いた。
「これでも安い方さ。他の店では銀銭二枚だ」と老婆は肩をすくめた。
町を抜けると、道はさらに荒れていった。瓦礫やゴミが散乱し、野良犬がうろついていた。
「澤北、この国、本当にどうなってるんだ?」とタケルは不安げに言った。
「経済が崩れて、人々が生きるために必死なんだ」と澤北は答えた。「でも、俺たちは銀を売って村を救うんだ。諦めずに進もう。」
夜道を進む二人の前に、突然、盗賊が現れた。
「おい、お前ら!その荷物を置いていけ!」と盗賊はナイフをちらつかせた。
「なんだと!?こっちは大事な銀を運んでるんだぞ!」とタケルは反論した。
「そんなこと知るか!今すぐ渡せ!」と盗賊が迫ってきたその時、澤北がふと近くの木を見上げた。
「タケル、あれを見てみろよ。あんな大きなクモが!」と澤北が言うと、タケルも慌てて木を見上げた。
盗賊もつられて木を見上げたが、何もいないのを確認して「なにやってんだ、お前ら!」と叫んだ。
だが、その瞬間、タケルが素早く持っていたおにぎりを盗賊の顔に投げつけた。
「うわっ、何するんだ!」と盗賊が驚いて顔を拭っている隙に、澤北が銀鉱石を取り出して「これが俺たちの宝だ。触ったら呪われるぞ!」と叫んだ。
盗賊は一瞬ひるんだが、タケルがそのまま盗賊の足を引っ掛けて倒した。
「逃げろ、澤北!」とタケルが叫び、二人は全速力でその場を駆け抜けた。
ようやく首都近くの最後の町に到着した。ここでも物価は異常に高く、人々の顔には疲労が色濃く見えた。
「タケル、もう少しだ。銀を売って、村のみんなを助けるんだ」と澤北は決意を固めた。
「そうだな、頑張ろう!」とタケルも頷いた。
「それにしても、なんでおにぎり投げた?呪われるってなんだよ?」と冷静になった澤北は突っ込む。
「そういうのは勢いなんだ!」とタケルはわけのわからないことを言っている。
道中で出会った様々な人々との出来事が彼らの心に刻まれ、二人はさらに強く結束を固めた。首都までの残りの道のりは険しいが、二人の冒険はまだまだ続く。