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緑の魔女  作者: 猫蓮
本編
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ヘクセ談議

 ヘクセに緊急招集が掛かった。学会以外で集まることは滅多にしない。魔女選別でも、情報交換でも全員が集まることはない。逆に言えば今回はその必要があると判断された。


「遅いぞシアノス」

「老人は時間にうるさくて嫌ね」

「アルノー飛行船の後でいいから空中に足場を作る魔道具って作れるか?」

「機動力カ、待テ構想ヲ練ルノ」

「わぁーバーンさん頭取れてますよ! 大丈夫ですか」

「是、接着強度の不足を確認。タタに修正を要求」

「静粛に」


 ラトスィーンの一声でピタリと静かになる。


「状況を整理しましょう。アルノー報告を」

「魔物ヲ暴走化サセル魔道具ダガ、タダノ魔力増強ダ。無理矢理周囲ノ魔力ヲ流シ入レルモノ」

「んーでもそれだったらあんなに意識が朦朧とするのはおかしいよ」

「精神干渉系の魔術ならどうかしら」

「魔物相手にか?」

「うーん、ない話ではないかな。シアノスさん、確証は?」

「炎赤石ノ王が洗脳されていた」


 シアノスの言葉に騒然となる。


 精神干渉は並みの人間が扱える魔術ではない。加えて魔術全集にも載せていない。それを炎赤石ノ王、Sランクの魔物にかけれるとなると相当の手練れ。


『ジェスター』


 誰も声には出さない。それでも考えることは同じだった。出来るのは彼しかいない。忌々しいヘクセの汚点。今なお生きていることが許されないヘクセの敵。空気は重々しく殺気だっている。


「話には聞いたがそれほどすごいのか」


 八人の中で比較的新しい魔女であるゾルキアとインデックスの二人は彼と直接会ったことはない。情報として伝えられているだけだ。


「思考全てがねじれ曲がっておる。彼奴に正常な思考も感情も期待するだけ無駄じゃ」

「まだ生きていたとは、やはり逃がしたのは大きな痛手でした。ヘクセの包囲網にも引っ掛かりませんし厄介ですね」


 ジェスターは元魔女で今はヘクセから追われる大犯罪者だ。自らのお大事を殺めるという非常にイカレ狂った行為を犯した。彼に向ける慈悲はない。この時ヘクセによる総攻撃による排除を実行したが命からがら逃げおおせた。逃がしてしまったのだ。全員が本気で殺そうとしていたにも関わらずとどめを刺すことが出来なかった。


「それと食のがいたわ」


 今度こそ言葉を失った。食の魔女はラトスィーン同様交流を図る魔女でよく他の魔女に料理を振る舞っていた。勝手に来ては料理を食わせる変わり者。強引なお節介焼きだった。豪胆な性格で惜しい人物だった。


「そうですか。それでは人形も増えているのでしょうね」


 死霊術、これこそがジェスターを殺し損ねた要因だった。死んだ人間に疑似的魂を与え蘇らせる。思考も性格も生前と同じ、身体が記憶している通りに動く。一つ違うのは深層心理をジェスターによって書き換えられていること。だから彼の傀儡人形として行動してしまう。


 サーカスという名も彼を示唆してつけた名だ。ちょうどその時から魔女狩りが現れた。彼に煽られ矛先を向ける魔女狩りは都合の良い下っ端。配下の一員(クラウン)は彼の自慢の傀儡。生者が所属しているのかは不明だが仮にそうだとしても同族だ。実体も人数も不明。潜伏場所すらつかめていない。


 インデックスが手を上げる。


「道化が舞いし暴虐の凶」

「捕らえた魔女狩りの証言によりイーシス国現国王スプメテウロ・イーシスと推定」


 静寂が満ちる。誰も言葉を発しない。


「過去、ヘクセに来訪、テーマは融合」

「ああっ、もしかしてあの改造野郎のこと!?」

「是」


 バーンの補足情報とマオの悪態でようやくピンときた。魔女を目指してヘクセに来た男だった。しかし試験は満場一致で不合格。男が魔女になることはなかった。


 シアノスはインデックスを襲った魔女狩りを思い出す。あの異形の化け物は恐らくその男によって混ぜられたのだろう。だから殺すな(捕まえろ)なのね。


「なら暴走化もそれの実験か投薬の類ではないかしら。あれがやるにはあまりにお粗末だわ」

「確かに一理ありますね。そうでなくても彼には忠告を反故した疑いがありますから、調査を実行しましょう。今なお実験を続けているようなら制裁を与えねばいけませんね」


 ラトスィーンが不敵に笑う。その男を嫌っているマオもやる気満々だ。



 話しはまとまり今後の指針も決まった。解散する流れをぶった切ったのは意外にもシアノスだった。


「お大事を任命するわ」


 緊張しながらも表明する。ここに来る前に相談して了承を得た。


「覚悟は定まりましたか」

「ええ」


 覚悟の決めたシアノスの表情にラトスィーンは懐かしむ。彼女が魔女になるときと同じ顔をしていた。


「ソレナラ一緒ニ飛行船モ通達スルノ。調整ハ完了シテル、後ハオ披露目ダケダ」

「特大ニュースが二つか~」

「しばらく騒がしくなりそうじゃな」

「タイミングは良いかもしれませんね」



 ほどなくしてヘクセから各国主要施設に伝達が届く。どちらも世間を震撼させるには十分すぎる内容だった。


「飛行船! これで物資の運搬はさらに捗りますぞぉ」

「空を飛べるんだって、楽しみ~!」

「おいおい嘘だろ」

「こんなのも許されるってのかよ」


 一つ、魔具の魔女による飛行船の登用。新たに空路という選択肢を増加し、大陸の行き来の利便性向上。

 一つ、緑の魔女がお大事を任命。相手は氷薔薇ノ王。

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