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聖国の危機(2)



 暗く、辺りが見えない部屋の中で白く輝く聖国の女王オペラ・ヴァルキュリア。


 ジェド・クランバルは彼女と対面して固まっていた。



 ――……一旦落ち着こう。そもそも、聖国の女王で合ってるよな? 実は、1度も見た事が無いので自信がない。

 だが、白い髪に赤い目の有翼人……オペラ・ヴァルキュリアで間違いないだろう……はず……多分。

 よし、ちょっと聞いてみるか。


「あの、聖国の女王オペラ・ヴァルキュリア様ですよね?」


「……」


 案の定無言である。仮にそうだとしてもいきなり現れた怪しいヤツにはいそうですとは言わないよなー。

 よし、ここは普通の事を聞いてみよう。


「あのー、なんかゲートが間違えてここにワープさせちゃったみたいなのでですが、ここどこでしょう?」


「……」


 うーん、MU・GO・N!

 んー、もしかして言いたい事が溢れすぎて逆に無口になってるのかな〜?


「……ジェド・クランバル……」


 お? やったー! 喋ってくれたー! ひゃっほーう! いやぁ、自分、無口な人とは一緒にいたくないタイプですからね。……ん? あれ? 変装しているはずなのに普通に正体バレてない?


「あなたが……ゲートに何かをしたの?」


 ????? オペラは何かめちゃくちゃ忌々しい表情でこちらを睨んでいるが、ゲートに関しては全くの冤罪である。


「あのゲートが壊れるなんて……余程の聖気をかけないかぎりあり得ないわ。それに、仮にゲートが暴走したとしてもここに現れるなんて……一体どうやって……」


 ???? うん、余程の聖気をだれかがかけたんじゃないですかね? 少なくとも俺と陛下では無い誰かが。

 ここに何で現れたのかも全然分からない。分からないが何故だろう……ここに来たのは確かに自分のせいな気がして仕方が無い。俺のなんかそういう女の人達を引き寄せてしまう性質が……


「やはり……あなたが全てを邪魔するのね……ジェド・クランバル」


 いやそもそも何の邪魔をしてるのかもサッパリ分からない。教えて、せめて。


「邪魔というか……そもそも聖国は何を企んでいるのでしょうか?」


「とぼけないで。貴方は全て知っているから、いつもわたくしの邪魔をしているのでしょう?」


「全……て……?」


 アカン。素直に聞いてみたもののサッパリわからん。オーケーオーケー、一旦状況を整理してみよう。

 俺は陛下が来たいって言うから聖国に来た。何故かオペラの部屋に飛ばされた。

 ……うん、俺何かした?

 この前とかもその前も、オペラが散々帝国を狙ってきた件を解決した事に関してはさぁ、ほら……騎士団長だから職務で帝国守らなくちゃいけないじゃん?

 だが思い出してほしい。オペラは勘違いをしてるようだが、俺はオペラが襲って来た時もマジで邪魔など一切していない。何なら解決したのも多分俺じゃ無い……ような気がする。多分。

 つまり完全なる誤解である。あと全てとか言われてもマジで分からないから、まずそこから説明してほしい……


 話が噛み合わない事に困惑しながらオペラににじり寄られて後ろに下がったた時、何かにつまづいて思いっきり後ろに転び何かを倒した。この部屋暗すぎない?


「あっ、申し訳ない――」


 倒した何かを拍子に掴んでいたので見てみると、手には額縁に飾られた小さな姿絵があった。

 見間違いじゃなければ、それは陛下の絵である。


 ??????


 手に小さなライトボールの魔法を出して辺りを見ると、そこは寝室だった。恐らくオペラの寝室だろうが、天井にも陛下の姿絵。ベッドには陛下っぽい人形が置かれていた。


 ……


 見てはいけない物を見てしまったような気がして恐る恐る振り返ると――案の定、目を見開き怒りの形相でこちらに魔法陣を描き、手をかざしているオペラがいた。


「やっぱり見ちゃいけないヤツだったーー!!!」


「っ!!!!!」


 オペラの手から光の白い矢が飛んでくる。無数に飛んでくる矢をかわしながら走るも、次々と白い矢は俺を追いかけてきた。


「ジェド・クランバル! やはりあなたは1番最初に始末しなくてはいけない男ね!!!」


「ええー!? 何で?? これは別に俺が悪い訳じゃないでしょう!!! 言わないから! 絶対にオペラ・ヴァルキュリア様が陛下の姿絵見ながら陛下の人形抱いて寝てるとか、絶対に言わないからーー!!!」


「死ねえええええええ!!!!!」


「一国の女王様がそんな言葉遣いしちゃいけません!」


「させてるのはお前だー!!!!」


 何でか分からないが俺の言葉はことごとく火に油を注いでいるようだ。話せば話す程オペラはめちゃオコになる。何故? どうして?


「ずっとルーカス様の周りをうろちょろして目障りなのよ!!!」


 アカン、もうダメだ。訳がわからんから一旦整理しよう。

 つまり、オペラ・ヴァルキュリアは陛下の事が大好きだから、魔族と戦う為に同盟の帝国を狙っていた訳ではなくて最初から陛下狙いだったって事か? おお、何だ、そう思うと案外聖国の女王もかわいい所あんじゃ――」


「途中から声に出てるのよ! いい加減にしなさい!!!」


 オペラは真っ赤な顔でプルプルと震え出した。


「うーむ……俺的にはスンとしてるよりそちらの素直な方が可愛くて良いと思います」


「消 え な さ い !!!!」


 オペラが描いた魔法陣には見覚えがあった。あれは分かる、神聖魔法のヤバいヤツである。

 神の裁きとかいう、断罪の雷が身体を切り刻むような物騒な魔法です。うん、多分食らったら死ぬ。

 どうしようか……公爵家に伝わる技で、描いてる途中の魔法陣を真っ2つにするとかいう魔法学的にも謎な技があるんだが……使う時かなぁ。

 と思い腰に手をやるが、剣が無かった。あ、今旅人の変装しているから収納魔法の中に入れたままですわ。うん、間に合わない。詰んだ。


 だが、魔法陣が描き終わる直前――2人の頭上にゲートが突然開いた。


「ん?」

「え?」


 それぞれのゲートから1人ずつ人が落ちてきてオペラと俺の頭を直撃する。


 痛みに悶えている一同。俺の頭は相当硬いからぶつかった人はめちゃくちゃ痛いだろう。男が床でゴロンゴロンと転がって苦しんでいた。


「なっ、何なの次から次へと――」


「もー! また変な所飛んだんだけど? ここどこよ――」


「お前……空中回廊のゲート手当たり次第発動させやがって、全部壊す気か……よ……」


 現れたのは聖女・茜と騎士団員の……


「アッシュ、お前何でこんな所にいるんだ?」


「きっ、騎士団長……ん? あれ、ここオペラ様の部y――」


「キャアアアア!!!!!」


 2人が周りを見渡す前にオペラは魔法陣を描いた。4人の足元に現れた魔法陣は移動の魔法で、4人を一瞬で違う景色へと連れて行く。

 余程見られたくなかったのか、オペラはゼェゼェしていた。うんうんそうだよね、あんなに早く魔法陣発動する人初めて見たよ。


 移動した先の景色は一面青空で、恐らく空中回廊の最上階だろうか。そこは広い庭園であった。

 オペラは息を整えて、何事も無かったかのようにスンとしていた。


「どういう事か説明して貰おうかしら?」


「お、オペラ様……これは、その……」


 ん? アッシュとオペラって知り合いなの? それに何で聖女と一緒にいるの??? WHY誰か説明して???


「そう……アンタがオペラね」


 アッシュの前に聖女が出て、オペラと睨み合った。


「何? 貴方」


「帝国に色々仕出かして、私の可愛いノエルたんを泣かせたお礼参りに来たのよ!!!」


 聖女が叫んだ瞬間、聖気を纏った拳をオペラに振り下ろす。が、オペラはそれをかわして空中に飛んでいた。


「そう、貴方……帝国の聖女ね。わたくしに危害を加えようとするなんて……無謀な子。思い知らせてあげる……」


 オペラの周りに無数の魔法陣が現れた。俺を追いかけた光の矢である。大量の矢が四方から聖女を狙うも、全て聖女は素手で叩き割っていた。


「思い知るのはどっちかしらね!!!」



 空中回廊の最上階『世界一空に近い場所』と呼ばれる美しい庭園は突然、女同士の戦場と化した。

 何、この状況……陛下、助けて。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い! 悪役令嬢に巻き込まれるアホなことばかり考えてる(by陛下)主人公を見て爆笑してます [一言] 予想はしてたが、オペラさんの部屋が陛下一色w
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