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ナイトメアの見せる悪夢(前編)



「おい。いい加減起きろ」


 目を開けると目の前に魔王アークがいた。


「ウワアアアア!!!」


 条件反射でピコピコするハンマーを目の前のアークに思いっきり振り下ろしたが、その手にハンマーは無かった。


「何だ……夢か」


「条件反射で人をぶっ叩くとか、どういう種類の夢なんだよ……」


 それは見た俺も逆に聞きたい。1つ言える事は、悪役令嬢のせいだという事だけである。

 寝ていたソファーから起き上がると、アークにシャドウ、それに寝ているルーカス陛下と……あと何か黒い馬がいた。……何で馬?


「皇城や首都の皆さんは、聖国の女王の神聖魔法による白い霧によって眠りについてしまいました。起きているのは我々だけです」


「俺も危うくトラウマの記憶が作る悪夢を幸せな夢に変えられ、そのまま囚われて目を覚ませなくなる所だったからな」


 そう言ってアークはネックレスにしている指輪を見た。

 何だか知らないが、何やかんやで助かったのだろう。


「私は悪夢として見る程のトラウマは……ほとんど無かったので、すぐに起きることが出来ました」


 何故かシャドウは俺から目を逸らす。……何?


「そうなのか。でも何で俺はすぐ目覚めたんだ?」


「それは私がお答えしましょう」


 馬が急に喋り出した。お前、喋れるのかよ。さてはただの馬じゃないな?


「コイツはナイトメアだ。お前が寝てる間に魔王領から連れてきた」


「ナイトメア? 悪夢ですか?」


「はい。私は眠る人に悪夢を見せる魔獣ナイトメアです。ちなみに雌馬です」


 雌か雄かはどうでもよくないか? 馬は馬だろ。


「帝国の危機に夢が関わっているとお聞きして来ました。確かにこの街中で寝ている人達はトラウマを掘り起こすような悪夢を強制的に見せられ、それを幸せな夢に変えられてずっと夢に囚われる魔法にかかっています。ですが、騎士団長には極端にトラウマが少ないというか……」


「どういう事だ? 俺にも嫌な事位あるぞ?」


「うーん……本人には分からないかもしれませんが」


 どういう事?? 俺にだって嫌な事くらいあるぞ?? 多分……ほら、悪役令嬢とか?


「それよりも、自身のトラウマとは関係無い悪夢見ませんでした?」


「見ました」


「つまり、ジェドには悪夢にするようなトラウマが無かったので、幸せな結末に変えて夢に囚われる事が無かったという事か……」


 まぁ、確かに。今の所1番嫌な思い出は悪役令嬢のエピソードだが……それについては全部解決(?)してるし、それに俺には現実以上に何も望むもの無いからなぁ。

 さっきは眠すぎてひたすら寝たい願望強めだったけど、寝たらスッキリしたのこれ以上寝る必要も無いしなぁ。そういう事なのか……?

 そもそも公爵家の人間はポジティブ思考で出来ているのだ。妹の中身が男だったのがここ最近で1番悲しかったが、今の今まで忘れていたし。元気かなぁジェリーちゃんこと田中。慣れると田中も可愛いんだよね。


「コイツの話は分かったからもういい。問題は……この街中の人々をどうやって起こすか、だ」


「それならば簡単です。逆にトラウマ以上の悪夢を見せて、現実の方がマシだと思わせてやれば目が覚めるでしょう」


 何か馬が恐ろしい事を言い始めた。


「私の魔気ではこの街中の人々全員に悪夢を見せるのは難しいので、魔王様にもお助け頂きたいです」


「え? お、おう……」


 アークも戸惑っている。そりゃそうだろう。魔王アークはこう見えて良心的な魔王だ。自分自身も嫌な夢を見たらしいので、尚更いい夢を見て幸せな人々に悪夢を見せるなんて気が引けるのだろうな。……だが、背に腹は変えられないんだなぁ。


「アーク……結果、皆の為なんだ。ひと思いにやってくれ」


「……これじゃあマジでどっちが悪役なのかわからんな……まぁ、俺魔王だし……深く考えるのはやめよう」


 アークが馬に触れた瞬間、馬が紫色の炎を纏い走り出した。そして城内や街中の寝ている人の上に乗り始める。

 馬に乗られた人は聞いた事が無いような恐ろしい悲鳴を上げてがばっと起きた。また次の人次の人と馬は悪夢を見せに駆けていく。馬が通る度に上がる悲鳴。

 首都は阿鼻叫喚に包まれた。


「……確かに、帝国を愛する陛下にはとてもじゃ無いけどこの惨状はお聞かせ出来ませんね……」



 城や街中に悲鳴が木霊して悪夢のようだ。すまん皆、悪気は無いのだ。

 そして、陛下には最後に特大の悪夢を見てもらおう……

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