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まさかの第2回オペラ杯(中編)

 


『オペラ様と結婚したいかーーー!』


「「「うおおーーーー!!」」」


『ニューヨークへ行きたいかー!』


「「「うおおおーーーーー!!」」」


「……ニューヨークって何だ?」

「何だか分からないけど、みんなが盛り上がってるから凄い所なんじゃないか?」


 予選会場となるエレベーターゲート内はそれはもう盛り上がっていた。ゲート内に設置された魔術具からは参加者を盛り上げるアナウンスが鳴り響いていた。声はいつものあのドワーフとは違うようだ。

 会話内容からも分かる通り、参加者は前回にも増して有象無象である。半分くらいノリで参加している者ばかりで、そういう俺もほぼ流れで参加させられているようなものだろう。

 人は人が集まる所に集まるものだとかの豪商ビーク・イエオンさんも言っていた。行列が出来れば何だか分からなくてもとりあえず並んでみよう、人気があるのだから間違いない、と思ってしまうもので。

 だが、それこそ聖国の狙いなのかもしれない。

 手段がどうであれ、陛下を邪魔出来れば良いのだ……女王が平和的になったはずなのに、また別の軋轢が生まれてしまっているとはこれいかに。


「まぁ、女王の今後がかかっているんだからな。これくらいの抵抗で済むならば平和的な方なんじゃないか。武力で抵抗された方がルーカスには簡単だったかもしれないけどな」


「それは簡単でも、やりたくないけどね。良いさ、端から簡単に許されるとは思っていなかったのだから、こういう方法で白黒決着をつける決心をしてくれたのであれば私はそれに従うよ」


 陛下を国に入れる事すら拒んでいた聖国民達の最後の抵抗であり、ここを乗り越えれば晴れて陛下とオペラと(ついでにアークも)結ばれるのだ。長かった……本当に長かった。一体何百話使うつもりだったのか。


『ここにお集まりの諸君は幸運な事に聖国の女王オペラ様との結婚を賭けたオペラ杯に参加出来る権利を得た。だが、思いの外参加者が多かったのでまずはこのエレベーターゲートにて予選を行い、それに無事合格出来た者が本戦に進む事が出来ることとした』


 前回のオペラ杯の時も同じような事を言っていた気がする……確かに、このエレベーターゲートも結構な広さがあるが、その中がみちみちになる位には参加者がいる。外を良く見ると隣にも同じようなゲートがあり、そちらもみちみちの満員だ。

 と、突然足元に図形と線が現れた。俺の立っている辺りは青い丸、線で区切られた向こう、陛下の立っている辺りはバツ印が書かれていた。


『今から聖国の女王オペラ様に関する丸バツクイズを行う。制限時間内に正しいと思う方に進め』


「なるほど、単純だな」


『尚、魔王アーク様はクイズ権限は無いものとする』


 皆がぎょっとしてアークの周りから下がる。「魔王だ」「魔王も参加しているのか……?」とざわめき始めた。


「確かに、俺は他人の心が読めるから参加は難しいだろうが、ならば俺には結婚する資格は無いという事か?」


『いえ、クイズ以外でしたら参加可能です。どなたかに参加資格を委託していただければ』


「そうか……頼んだぞ。ジェド」


「いや、何で俺なんだよ……」


「……」


 ……こいつもしや、あわよくば陛下が敗退すればいいと思ってないか……?


「いや、そこまでは思っていないし負け知らずのルーカスが敗退する訳無いだろう。ただまぁ、ルーカスのみに任せきり、というのもなんだからな。ちゃんと正面から勝負する機会なんて無いだろうし、ルーカスとは別で、俺は俺でちゃんと目指そうと思ってな」


「それで何で俺が代役にされるの……?」


「俺には参加資格が無いし、お前はルーカスに付き合わされて強制参加。その上、見届けて欲しいと言われてる以上何がなんでも最後まで残らなくてはいけない。これ以上何かあるか?」


 ぐぅ……勝ち残ってもオペラと結婚したい訳じゃないにも関わらず残らなくてはいけない俺は適任中の適任じゃないか……責任だけが重い。


「そうか、アーク。私は君やオペラの為に共生を選んだけれども、初めての真っ向勝負だね。私は勿論負ける気は無いが、君も敗退なんてするんじゃないよ」


「ああ」


 いや、勝負に参加するのは俺なのですが。


『それでは第一問、オペラ様が身につけているイヤリングはバラである。丸かバツか』


 予選の第一問だからかとんでもなく簡単な問題だった。オペラが身につけているのは確か世界樹かなんかの葉っぱのイヤリングだ。

 白い髪にキラキラと緑に揺れるイヤリングは一度見ればバラじゃ無い事くらい分かるだろうが


「そういやオペラ様ってイヤリングをするくらいだから女なのか?」

「いや、女王って位だから女だろ」

「何となくゴージャスっぽいからバラで合ってるんじゃないか?」


 と、この様に集められただけの烏合の衆、とんでもないニワカ連中はこんなサービス問題でも間違うのだ。

 そしてそれらの人達は周りの様子をお互い伺いつつ移動するものだから、一問目にしてほぼ半分くらいに割れていた。


「ライバルが減ってくれるのは嬉しいけど、いい加減な参加者がこうも多いのは、聖国としてどうなんだろうね」


 流石の陛下もこれには呆れていた。


『おおっとー、これはサービス問題だったのですが意外にも割れている! 気になる正解はーー……当然バツです!」


 分かってはいたものの、正確に安堵する声。そしてあーあと残念そうにため息を吐く不正解者達。


「ま、ノリで参加したから仕方な――おわ!!」


 すると不正解者側の床が突然無くなり、そこに居た人達は下に落ちて行った。


「お、おい!」


「あいたたたー……そんなに上がっていなくて助かったー」


 心配したのは一瞬で、まだ然程高度を上げてないエレベーターゲートの下はすぐ地面だった。

 不正解者達は尻餅をつく位で済んだみたいだ。


『さぁ、落ちた方々は資格を失いますのでお帰りください。そして残った方々は第二問に進めます』


 そうアナウンスが鳴るとともにエレベーターゲートが上がり始めた。


「おいちょっと待て、もしかしてこれは問題が上がる毎に高くなる、という事か……?」


『はい。聖国に着くまでに落ちなければ予選通過です』


「いや……聖国直前で落ちたら死ぬだろ」


『正解すれば良いだけですので。聖国の女王との結婚ですから、それくらいの覚悟で望んで頂かなくては。それともここで棄権しますか?』


 その言葉にサーッと青くなり、高くならないうちに自主的に降りる者もちらほらと現れた。

 だが、


「落ちなければどうという事は無いのだろう。私は構わないよ」


 と陛下は平然としていた。まぁ、陛下は頑丈だから世界樹から落ちても死ななそうだけど……


『それでは第二問、オペラ様は甘いものが大好きである、丸かバツか』


 これはまだ俺でも分かる。オペラはああ見えて食いしん坊万歳であり、お忍びで各地のスイーツを食べに出掛けているのだ。たまに油断して太ったりするのを気にしているかわいい一面もある。

 アークも頷いているし陛下もそちらへ行っているから間違いない、答えは丸だ。


『おっと、これは丸の方が多いようですが、答えは……バツです!』


「はぁ?!」


『甘いものも好きだけど、辛いものも好きなので、答えはバツです』


「そんな引っかけみたいな――おわ!」


 またしても床が抜け、今度は俺達の居た方が空中に投げ出された。


「くっ! はぁ!!!」


 ここで終わりかと思いきや、陛下は落ちる寸前に世界樹の柱を蹴って反動で戻って行った。

 俺を置いて行かないでと思ったが、俺は獅子に変わったアークが首根っこを咥えて飛んでくれたおかげでゲート内に戻る事が出来た。


『そ、それはルール違反では!』


「いいや、さっき『落ちたら資格を失う』とは言ったけど、不正解で資格を失うとは言っていないからね。そういう言葉の穴を突くような問題を出すならば、こちらだってルールの穴を突かせてもらうよ」


『くっ……良いでしょう。ならばこちらも手段を選ばずに貴方を落としてやりましょう、ルーカス陛下』


 怒りに燃えるアナウンス。宣戦布告を受けた陛下も受けて立つように不敵に笑みを浮かべていた。

 いや……趣旨が物騒な方に変わっているだろ。

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