表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

595/649

激闘のクロッケー大会! 白い花は誰の手に(中編)

 


「よしっ!」


『さぁ、2順目を終えて各者ゲートを順調に進んでいく! 白熱のクロッケー大会、トップを行くのはオペラ様、続いて何とフェイ・ロン様も最年少ながら健闘している! やる気があるのか無いのか、ロストさんもそこそこ進んでいる! ……えーと』


 実況のガトーが口ごもるのも分かる。


「お主……真面目に止める気は、あるのだよな?」


「……ああ、至って真面目だ」


 俺の目の前の黒いボールは2順目を終えた今も1番最初のゲートを通れずに明後日の方向に居た。


 オペラの番を終えたあと、ちゃんとした木槌を持ったフェイくんは競技慣れしているのか1つ目のゲートを進んだ後オペラのボールに当てて更に2つ目のゲートの人まで進んでいった。そこら辺にあった棒で参加しているロストはやる気が無いように見えて1回につき1つのゲートは進んでいる。一応ちゃんとゲームに参加しているのだ。……問題は俺であるが。


「俺は……球技が苦手なんだ……」


『あー、そういう人、いますよねー。でも、団長のそれって、そういう問題ッスかね?』


 1順目、俺も木槌でボールを叩いて転がした――つもりだったのだが、ちょっと力を込めて叩いたボールは真っ2つに割れた。そのまま木槌だけが宙を駆けた。

 しんと静まり返る会場で「……どういう原理だ?」とフェイが疑問を投げかける。

 ここまで読んでくれた賢明な読者ならばお分かりだろうが、俺は棒状の物ならば何でも武器に出来る男。バターナイフどころかペンでも鉄柵を斬ってしまう系チート騎士。万能とはいい難い……こんな所で俺の強さが仇となるとは思わないじゃん……?

 そんな事もあり2回目はロストと同じくそこら辺にあった木の枝で小突いてみたのだが、やはり1回目と同じように真っ2つにぱっかりと割れてしまった。


「くっ……俺の剣が……右腕が、溢れ出る剣の達人の血が抑えきれない……」


「年頃の少年か。どうするんだ、我だけではとてもじゃないがオペラ殿に追いつけぬぞ?」


 困った様子でオペラを指し示すフェイ。ワーッと歓声が響く中、オペラは順調にボールをゲートの間に潜らせていた。流石に素手を武器にするのは止めて魔法で作り出した真っ白な木槌を使っている。


「確かに……このままでは負けてしまうかもしれない……」


(お困りのようだな……?)


 ふと聞こえてきた俺の心に直接語りかけてくるような声……


「いや、全然困っていない。さぁ、次はもっと慎重に恋人に触れるようにソフトタッチで行くぞ」


「お主、恋人おらぬだろうが。あと、何か聞こえてきたが無視して良かったのか……?」


「てっきり俺だけに聞こえていた幻聴かと思ったのだが、フェイくんにも聞こえていたのか。いや、完全に他の人にも聞こえるタイプの幻聴だから無視して大丈夫だ」


 と、無視を決め込んで木の棒でソフトタッチショットを決め込もうとした俺の収納魔法から溢れ出す光。空間の裂け目から出てきたのは光の剣だった。


「ジェドくん! 酷いじゃないか!!!! ジェドくんのピンチには力になる男、光の剣士にしてジェドくんの愛剣クレスト、俺を使ってくれ!!!!」


「さぁ、優しく……優しく……」


「無視しないでくれーーー! いや、あえて俺に寂しさを与えるこれ……正に放置プレイ。寂しさを最大限に与え、その後に必要としてくれた時……喜びは数倍にもなるという……」


「ああもう! 気色悪いな!!! というか勝手に収納魔法に入って勝手に出てくるな!!! どっか行け!!!」


「ああっ……その冷たさもたまらない……」


 光の剣士にして光の剣クレスト……剣にもオッサンにもなれるちょっとだいぶマゾ気質のオッサンである。俺の両親と因縁のある剣士であり、何故か俺に付き纏ってくる……

 結構前に勝手についてきて、安住の地を見つけて勝手に旅を終わらせたはずなのに……気がついたら勝手にまた俺の所有物になっていた。何こいつ怖い……


「なぁジェド、可哀想だから使ってやってはどうだ?」


 フェイが必死なオッサン剣を哀れに思ったかそう言ってくるが、俺は2度とこの汗ばんだ剣を握りたくない。


「……そう思うならお前が使ってもいいんだが……?」


「え?! わ、我は剣士では無いし、剣を扱った事も無いし、かの剣はお主に使われたがっているから……」


 と嫌そうに首を振った。自分が嫌なことを人に強要するのはどうかと思うんですが?


「遠慮することは無い、俺とジェドくんの絆があればこの競技もなんなくクリア出来るはずだ!! さぁ、俺を、ソフトタッチで、優しく、ボールに触れるんだ……」


「ええい! 気色悪い声色で気色悪い事言うな!!!」


 あまりのオッサンの気色悪さにソフトタッチで触れてこようとしたオッサンをそのまま投げ飛ばした。テルメでマリリン達と過ごしていたせいかオッサンの気色悪さに磨きがかかっている……


「あ」


 オッサンが吹っ飛んだ先は1番のゲートの人だった。ごめん……

 だが、オッサンの下敷きとなったゲートの人の隙間からコロコロと黒いボールが転がると、ガトーのアナウンスが響き渡った。


『おお、これは……騎士団長、ちょっと気色悪いオッサンごと投げ飛ばして見事1番のゲートを潜らせたー!』


「……そ、そんなのアリなの?!」


『まぁ、ルール上ボールを打つものは何でもいいみたいッスからね。ボールを打つものとゲートの人には被害は行ってッスけど、プレイヤー同士で危害を加えた訳じゃないし……』


「なるほど……アリなのか」


 俺は倒れているオッサンの元へと近づいた。


「オッサン、悪いな……俺は棒状の物は武器にしてしまう不器用な男だが、オッサンが居ればちゃんと競技になりそうだ。そうだな、力を貸してくれるか……?」


 手をポキポキと鳴らして近づく俺の姿に、オッサンは頬を赤らめてコクリと頷いた。その顔やめい。


「……何の競技だこれは……」


 真面目に木槌でボールを打つフェイくんが頭を抱えるのも仕方ない位、競技場はカオスと化した。

 ボール目掛けて投げられる汗臭いオッサン……阿鼻叫喚で逃げるに逃げ切れないゲート役の聖国人。(時折オッサンに抱きつかれていた)


「くっ、卑怯ですわよ!!!」


 と競技を破壊しかけている俺に怒りの雷を浴びせようとしたオペラだったが、プレイヤー同士への攻撃は反則行為であるため手を出せずにボールに攻撃を浴びせ、オペラも何回かボールを破壊していた。

 相変わらずロストはやる気があるのか無いのかのんびりとボールを進め、フェイくんだけが真面目に周回していた。


『さぁ! 各者プレイスタイルが混沌を極めておりますが意外にもいい勝負で勝敗は読めませんが、今の所リードしているのはオッサンごとボールを確実にゲートの人にぶつけまくって潜らせている騎士団長! 続いてコツコツと真面目にプレイしているフェイ様! オペラ様は団長とフェイ様に地味に邪魔をされつつロストさんと連携が取れてないせいかすこし遅れている模様!』


「はぁ……はぁ……ねえ貴方も同じチームなのだから少しは協力なさい!!!」


 イライラを募らせたオペラの怒りはやる気の無さそうなロストにも飛び火していた。俺とフェイはオペラのボールを妨害しつつ進めているが、ロストはマイペースで付き合っているだけでまともに参加している様子はない。プレイヤー同士の攻撃も禁止ともなるとオペラが苦戦するのも無理は無い。


「……だって、アタシ、別に花なんてどうでもいいし」


「あなたねぇ!! だったら何で――」


「アンタこそ、何でそんなに世界樹の花が見たい訳?」


「え……」


 ロストの問いに黙り込むオペラ。


「……最初は、考え疲れて……綺麗なものが見たくなって、ふと……世界樹の花を思い出して……」


 目を瞑り考えるオペラ。


「伏せっているルーカス様にも、見てもらいたいって、思ったの」


「……そう」


 オペラの答えを聞いたロストは、自身の順番が来たのでボールの傍に行き持っていた棒で打ちつけた。先ほどよりも真面目に打っているようにも見えるボールは、次々とゲートの人の間を潜っていく。


「え……急にどうしたの……」


「……さぁね」


 オペラの疑問に答えようともせず、ロストは次々とゲートを潜らせていった。


「うーむ……非常にマズいぞ、ジェド」


 フェイくんが心配する通り、ロストが真面目に参加し始めたせいで戦況は思わしくなく、俺がオッサンを投げ飛ばすコントロールも次第に外れてきた。というかオッサンがハァハァと段々気持ち悪くなってきているのでゲートの人もそこから上手く動かないように飛んでくるオッサンとボールを避け始めている。うーむ、出来る。


「いや、避けるのはズルいだろ! 聖国人だからって女王に忖度するのは駄目だろ!!」


「忖度じゃありません!!! こっちだって正々堂々とやりたいですけど、汗ばんで頬を赤らめているオッサンが飛んでくる方の身にもなってみてくださいよ!!!」

「オペラ様のスレスレヒヤヒヤショットよりも性質が悪いですよ!! せめて飛ばすのはボールだけにしてください!!!」


 とゲート役の聖国人達からぶーぶー文句が飛んできた。ついでに観客からもブーイングの嵐である。俺の味方はおらんのか……


「ほーっほっほっほっほ、完全に貴方の方が悪者ね。残念だけど、次で決めさせて貰うわ」


 と、悪役令嬢かと思うほどの高笑いを決め込んだオペラが放ったショットは、勢いよくゲートを潜り抜け、最終地点のペグまで飛んで行こうとした。


「ジェド……」


 絶望の顔で見つめるフェイ……俺は「仕方ない……」と汗ばむオッサン剣を地面にぶっ刺そうとした。

 直接攻撃かどうかはスレスレだが、恐らくこの地面自体はホワイトスライムだから剣気を込めてぶっ刺せばあわよくばペグが揺れて外れるはず……力加減を間違えるとスライムが大暴走するかもしれないけど……202話参照。


「はっ!!!」


 俺が勢い良く剣を地面にぶっ刺そうとしたその時――


「ジェド」


 上空から声がして、おれはピタリと剣を止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=620535292&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ