魔剣な乙女は所望する(後編)
漆黒の騎士団長ジェド・クランバルは【聖剣の薔薇乙女戦記】というゲームに登場するというラスボスの魔剣・常闇の骸と何故かデートする事になってしまった。
何を言ってんだと思うじゃん? 俺もそう思う。
「とりあえず、どういうデートを所望しているのか聞いてもいいか?」
『はー? 女の子にそういう事聞いちゃう系男子な訳ー? デートプランって男子が考えてエスコートするものじゃないの? それでも紳士? レディファーストって知ってる?? 女性が1番なのよ?? エスコートされるものなのよ??』
うーん、この剣何か面倒くさくない?
大体、エスコートするものって言われても……こちとら彼女なんて一度もできた事なんて無い、悲しみで心が漆黒の騎士様やぞ? なめんなよ??
「デートプランについては俺が考えてやるから……はぁ」
アークがプランを立ててくれるらしいが……え? 魔王の癖にもしかして彼女とかいた事あるの?
『分かったわ。それで、どんなプランで私を満足させてくれるのかしら?』
そんで剣、何でお前はそんなに偉そうなんだよ。
「どうやらこの近くに恋人同士が楽しめる穴場スポットがあるみたいなんだ。そこは最近出来たのだが知る人ぞ知る、みたいな感じで人気らしいぞ」
フゥン、知る人ぞ知る恋人同士が楽しめるスポットねぇ……
アークに連れて来られたのは、町はずれの洞窟であった。嫌な予感はしていたのだが、うん。もしかしなくてもカップルすごろく洞窟だわコレ……
「何だ? 知ってるのか?」
「知ってるも何もさっき来たわ」
『何ですって?! アタシを差し置いて誰と来たって言うの??』
騎士団員の男達と来ましたが……?
「まぁ、とりあえず入ってみればいい。来た事があるなら話が早い、この恋人同士で楽しむ洞窟は2人でしか進む事は出来ないらしい。が、剣は1人にはカウントされないので俺もついて行く。構わずラブラブしてくれ」
構うわ。何が悲しくて連続して2回も男と入らにゃならんのだ……その上、パートナーを差し置いて剣とラブラブするとか、やべえヤツすぎんか。
確実に他のカップルから変な目で見られるのでもう既に帰りたい。
「それには心配に及ばんぞ?」
「ん?」
アークがそう言うので周りを見ると誰も居なかった。魔王と魔剣の魔の波動が洞窟内に充満していて禍々しい。その強力な魔気に怯えてカップルが続々と帰っていく。
「貸切だ。特別感があってデートとしてはいいだろう?」
『魔王は気が効くのね』
何も良くない。カップル洞窟が一気にラスボスのダンジョンみたいな雰囲気になってますがな。
「よし、じゃあこのダイスを振るぞ」
『ドキドキするわね』
と、アークが振ったダイスは6であった。ちょ、おま、それ……
「……」
落とし穴と分かっているが、行かないと進めないので何も考えずに無の心でマスへと進んだ。案の定床が開く。酷いネタバレである。
『きゃー!』
「おわっ!」
時間差で落ちて来た魔剣が危うく刺さりそうになった。おかしい、クッションで安全なはずの落とし穴が致死の罠に変わっている。
魔王は魔法で浮く事が出来るらしく、穴には落ちて来なかった。ずるい。
『こんな落とし穴に落ちて密着しちゃって、何だかドキドキするわね』
「……そうだな」
剣が密着する事を装備というのでは……? あと密着というより、こちとら刺さりそうになっているので違う意味でドキドキはしている。
落とし穴に落ちて1回休みだったので剣とゆっくりと密着(装備)しながら這い上がると、アークが再度ダイスを振った。
そのマスはチョコのかかった棒菓子がある所だった。
『ポッキーゲームね! 両側から食べてキスしちゃうヤツよ』
剣とキス……? 唇切れませんかね??
「剣は菓子食べられんからな。それは普通に食べて次に進もう」
そう言ってアークが次のダイスを振る。あっ、この菓子ポキポキして美味しい、癖になりそう。
次に止まったマスには4色の丸が1列に書かれた布が置いてあった。何これ???
『それは、あのゲームね! このルーレットに手や足と色が書いてあって、回して出た色に出た部位を乗せるのよ! 恋人同士が密着してドキドキ楽しいゲーム!!』
あのゲームが何だかよく分からないのだが、やれと言われたのでやってみる。俺がルーレットで出た色に手や足を乗せながら剣がルーレットで出た色に剣を突き刺してくるので、それを避けるという難易度の高いデスゲームになった。これ、楽しいのか……? 俺は楽しくない。
その後も水浸しになった剣をタオルで拭いたり、風船を剣と挟んで破ろうとして危うく刺さりそうになったり、ラップ越しに剣にキスを迫られたりと……中々のスリル、ショック、サスペンスであった。恋とはそういうものだと聞いた事があるが、そうなのか? まぁ、まだ恋をした事がないから分からんのですがね。
「お、ここがゴールみたいだぞ」
最奥まで進むと、ハート型のモニュメントが見えた。
そこには【恋人証書】と書かれた紙が置いてある。最奥までたどり着いた2人に貰える記念品らしい。
剣はそれを見て感無量の表情である。いや、表情分からんが。
『……嬉しい。漆黒の騎士様、ありがとう。こんなに恋人同士が楽しいなんて、初めて知ったわ。私、朽ち果てる運命を受け入れようと思ったけど……本当の恋を探して、今度こそ本当の恋人と楽しく過ごす為に、運命に立ち向かう事に決めたわ!』
「……それは良かった」
何か軽く俺が振られたみたいな感じになったが、魔剣も満足したみたいで良かったね。
あと、剣は1人に数えられないので、この恋人証書は俺と魔王の証書なんだなー。これが。帰って燃やそう……




