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探らない方がいい謎の洞窟(後編)



 落とし穴に落ちて1回休み(?)になったザッハとトルテを置いて、俺とロック、ロイとガトーの2組は先に進む事にした。


「さっきの落とし穴の事を考えると、止まったマスによっては何か罠があるかもしれないって事だよなぁ……何か進めるの怖くね?」


「まぁ、そこは最早進めながら確かめるしか無いですかねー。逆にそう言われちゃうと僕は先輩方がどのくらい頑丈か試してみたくなりますけど」


「お前、意外と腹黒いよな」


 ロイとガトーが呑気な事を話しているが、ロイが言うようにダイスを振らなくては後にも先にも行けない。

 特に交互に振らなくちゃいけない訳でも無さそうだが、何となくロイ達と俺達で交互に進める事にした。変に大きく離れてもなんか怖いので。


「よし、振ってみよう」


 ロックが投げた巨大ダイスは3を指した。2だったら落とし穴じゃねーか! 危ないなぁ。


 俺とロックは恐る恐る2人が落ちた穴を飛び越えた。下を覗くと、穴の中はクッションが沢山あり、2人で投げて遊んでいる。おいコラお前ら、真面目にやれ。


「このマスは何にも無いのか?」


 と油断していたら上から水が降ってきた。


「うわっ!! 冷たっ!」


「水攻め……ではなさそうだな」


 降ってきた水はロックと俺をびしょ濡れにしただけで、水攻めする程溜まりもせず穴の方に流れていった。下からは2人の悲鳴が聞こえたので恐らくあいつらもびしょ濡れだろう。暢気に遊んでいるからそうなるのだ。


「何かこう、微妙な罠ばかりだな。ただ冷たいだけの水に何の意味があるのだろうか……」


 服の中までびしゃびしゃになってしまい、肌に張り付いて微妙に気持ち悪い。だが、それだけなのだ。


「罠ってだけじゃないみたいですよ?」


 俺達と違うマスに止まったロイ達の手にはお菓子があった。何おやつ食っとんねん。


「どうしたんだそれは。……というか、どこから出した?」


「何かマスに止まったらいきなり現れました」


「こういう細い棒にチョコがかかったお菓子って、あんま見ないッスね。うーん……異世界のお菓子かなぁ」


 お菓子に詳しいガトーが知らないタイプの物とは。……というか異世界人が関わっているとすると余計厄介なんだが。


「とりあえず次に進めてみよう」


 ロックがもう一度ダイスを振る。次のマスは一見何にも無さそうだったが、足を踏み入れた瞬間――


「ぎゃ!」

「うわ!」


 ヌルヌルのスライム状の何かが一面に塗られていて、2人してズッコケた。

 しかも床一面その状態なので、上手く立てずなす術が無い。


「こ……これは陰湿だな」


「大丈夫か?」


 ロックが手を出して何とか助け起こしてくれるが、その後何故かロックはため息をついた。え? 急に何?


「何だよ」


「……いや、何でもない。ただ、この手を掴んでるのがこの間の女版のお前だったら良かったなと思っただけだ」


「……」


 ロックは俺の見た目じゃない俺には優しいのに、俺の見た目の俺には妙に冷たい。優しくされても気持ち悪いが、冷たくされるとそれはそれで傷つく。


「団長、副団長、大丈夫ですかー?」


 ロイ達は何故か風船を持っていた。


「どこから出したんだそれ……」


「いや、やっぱりマス目に泊まったら出てきました。んー? 2人で割れって書いてある」


「2人で割る意味あるんですかね?」


 風船は手で挟んだら簡単に割れた。

 ……さっきからマスに関連性が全然無いし、あとロイ達と俺たちの罠に差がありすぎない?

 次に俺たちが止まったマスには看板があった。何々……


「『相手の好きな所でしりとりせよ』? 何だこれ……何だか雲行きが怪しくなってきたな」


「何だというんだ……ちなみに俺はお前の好きな所など1個もない」


「1個くらいいい所位有るだろ!」


「論外だ……」


 団長の俺に対してこの言い草……酷い。そんなやり取りをしている所をロイ達が覗いてきた。


「んんんー、んんんーんんんん?」


「んんんんん、んんんんんんんんん」


「いや、お前らは何のマスなんだよ……」


「何か看板に「んんん」だけで会話しろって書いてありました」


 何なんだ? 益々わからん……え? 何なのマジで???


「ジェド……」


 次のマスに行くためダイスを振ったロックが、青い顔をしてそのマスを見ていた。指差す方を確認すると透明な薄い布が置かれている。

 看板には「ラップ越しにキスしろ」と書かれている。……え? ラップって、もしかしなくてもこの薄い布の事……? いやどんな布越しでもキスて……


 ロックと2人絶望感に苛まれ、顔を見合わせた時――すぐ近くの壁に穴が空き、そこから工事職人の格好をした女が出てきた。


「あれ?? ジェド・クランバル様」


「貴方達、こんな所で何してらっしゃるの???」


 そこに現れたのは見覚えのある令嬢だった。ゲーム令嬢のマリア・トリーゼとマロンである。


「君達こそ、ここで何をしているんだ? ……というか、そもそもこの洞窟は何なんだ?」


「何って、ここは私達のゲームシリーズの一つ『恋愛すごろく☆2人のダイスを回せ!』のゲームが遊べる洞窟ですわ」


 令嬢達は「何を当たり前の事を?」と言う顔で説明し始めた。


「私達、実は最近共同で体験して遊べる洞窟アトラクションを開発しておりまして。前世の時も脱出ゲームみたいな物が流行っていたから行けるかと思ってはいたのですが、これが大当たりですのよ。ちなみにあの岩を流す洞窟も筋肉アトラクションとして人気ですの」


「これ元のゲームは、マス目にある様々なハプニングを主人公と攻略対象が行う様子をスチルで楽しむ乙女ゲームなんですが、カップル向けのアトラクションとして売り出したら見事大流行! 今ではカップル達が集まるラブラブアトラクションとして密かに人気なんですよ!」


 確かに、先程はスタート近くに人が居なかったので全然分からなかったが、今いるマスの近辺には沢山の恋人同士がマス目に止まってミッションをいちゃいちゃしながら実行していた。棒状のチョコ菓子は両側から食べるのか……へぇ……


「人気にお応えして拡張工事していた所ですの。所で……何であなた方、男同士で入っていらっしゃるの?」


 令嬢達がドン引きしていた。何でなのかは俺達こそ聞きたい。


「なるほどー、だから酒場のご主人があんなに行くのやめた方がいいって言ってたんですね。納得」


 そう、ロイの言う通り酒場の主人が言っていた事は本当だったのだ……恋人のいない俺達騎士団員には関係ないから探らない方がいいものだった。

 いや、意味深な言い方しないでちゃんと説明してよー!!!


 ラブラブで楽しそうなカップルを見ながら、俺は泣いた。いいなぁ。

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