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探らない方がいい謎の洞窟(前編)



 魔王領の温泉へ慰安旅行に出かけて数日後、俺達は帝国へと戻っていた。


 特に変わった様子もなく、陛下の執務もちゃんとエースが代わりに行っていた。流石、出来るソームブチョー。

 そんな頑張っているエースに魔王領のお土産を渡しに行った時の事――



「いや〜、そんな訳で魔王領でも色々あってな。ただ、温泉はめちゃくちゃ良かったから今度はエースも行こうな」


「温泉かー……良いなぁ。つくづくこの世界の世界観が謎だけど。ところでジェド、これは?」


「それ、魔王領の土産屋で見つけた魔獣の人形なんだけど、話しかけると喋るらしいぞ? 何かキモカワというか、見てると愛着湧かない?」


 人形の首元を横からチョップすると「モルスァ」と鳴いた。


「これってファー……いや、何でもない。それはそうとジェド、騎士団にまた調査依頼をお願いしたいのだけど」



 ―――――――――――――――――――



 ――というエースからのお願いがあり、漆黒の騎士団長ジェド・クランバルと騎士団員数名は件の洞窟に来ていた。


 そう言えば、騎士団員の事にはあまり触れていなかったので、今日は少し紹介したいと思う。

 副団長のロックと新人騎士のロイ……こいつらはまぁ、いつも居るから省略するとして。実は他にも何人かいつものメンバーがいる。

 皇室騎士団はいくつかの部隊に分かれていて、俺達は陛下の1番の守護である第1部隊なのだ。第1部隊はは俺、ロック、ロイの他にあと3人――それが三つ子の騎士ガトー、ザッハ、トルテの3兄弟だ。

 何か美味しそうな匂いのする名前だが、ショコラティエ伯爵家は領地でスイーツ作りが盛んらしいので、そんな名前なのだろう。

 こいつら三つ子は似過ぎていて、正直全然見分けがつかない。親も見分けがついておらず、鑑定しても何故か見分けがつかない。鑑定のスキルが追いつかない位似ているのだ。帝国で見分けが付くのが陛下位しかいないのだが……逆に何で分かるの??


 それはさておき。この6人の仲良し第1部隊は、岩流れ洞窟事件の調査の時や先日のように温泉に行ったりと小部隊で動く時は大体一緒である。ロイでも無くロックでもなく喋っているモブ騎士みたいなヤツは三つ子の誰かなのだと覚えておいてほしい。


 そんな少数精鋭で、陛下に1番近い第1部隊が何故洞窟調査のような下っ端みたいな仕事をしているのかというと……何の事は無い、陛下が強すぎるせいで暇だからだ。

 陛下は自分の身は自分で守るスタイルなので、割と自由に動き回り側近護衛も意味を為さない。何の為に組織されてん俺達……

 という訳で、1番のエリートのはずが1番の雑務をさせられるというねじれ現象が発生しているのだ。

 というか陛下や宰相が雑務をしているので俺達も自動的に雑務が主になってしまう。まぁ、そりゃあ騎士団モテませんよね。特に第1部隊は雑務処理班だし……


 無駄話が長くなってしまったが……

 エースの依頼は街外れにある洞窟の調査であった。前にもそんな調査無かったっけ……?

 この洞窟だが、街の者達が次から次へと呼び寄せられていると噂になっていた。何それ不気味。

 洞窟の噂を酒場などで探ってみたが「お前達には関係ない。あの洞窟の事は探らない方がいい……」と口々に言われ、何故か情報は掴めなかった。

 何故そんなに情報が隠されているのか、一体何が起きているのか……不穏な雰囲気を感じながら俺達は洞窟へと足を踏み入れた。


 その洞窟、入り口は普通だったのだが奥へと進むにつれて少しずつ様子が変わっていった。

 床が一列のマス目状に区切られており、それが奥へとずっと繋がっている。


「何ですかねこれ。自然に出来たようにも見えないですが」


「このマス目、どこまで続いているんだ?」


 ロックが目を細めて奥の方を見るが、マス目は果てしなく奥へと伸びていて、洞窟が分岐している所はそのままマス目も分岐していた。


「終わりは見えないッスねー。それにコレどうやって進むんすかね?」


 三つ子の1人が奥に進もうとしたものの何かに遮られたらしく、見えない壁をコンコンと叩いていた。どうやらこのマス目、先には行く事は出来ないらしい。


「一体何なんだ……この洞窟」


 俺達は何かの不気味さをひしひしと感じていた。こういう正体の分からないものが1番怖い……


「団長ー、コレ何すかね?」


 指差す方を見ると、大きな四角い箱が置いてあった。それをロックが拾い上げるが箱は意外と軽そうだ。

 その箱、それぞれの面に星が付いている。星の数は全ての面が違うみたいで、1〜6が刻まれていた。何かこう、アレだな……でかいダイス。


「うーむ……中には何も入ってなさそうというか、開く気配は無いな」


 ロックはそのダイスっぽい箱を軽く振ってみたが何の音もしない。


「それってもしかして……副団長、それを軽く転がして貰っていいですか?」


「ん? こうか?」


 ロックが言われた通りに投げると、転がって止まったダイスの上の面が光り出す。そして、そこに書いてある星の分だけマス目も同じように光った。


「??? 何これ?? ん? 進める??」


 マス目の方を見ようと身を乗り出すと、先程あった透明な壁は無くなっていた。ロックも同じように壁のあった場所に手を触れたが、透明な壁は何処にも無い。


「これは……恐らくそういうゲームなんじゃないですかね? 何か本で見ました、ダイスを振ってマス目を進めるゲーム。異国ではサイコロゲームとかスゴロクとかいう名前で流行ってるらしいですよ」


「つまり、この洞窟自体がそのスゴロクだがサイコロゲームとかいうヤツで、ダイスじゃないと進めないという事か?」


「恐らく……あと」


 ロイが空中に手を出すと、やはり先程のように見えない壁に阻まれた。


「多分これ、2人ずつしか進めないですね」


 確かにマス目は大人2人が入ってちょうど良い位の大きさだった。

 つまり、俺とロックは1回のダイスで入れたが、後の人達はまたダイスを回さないと進めないという事らしい。


「何の為にこんなもん、誰が作ったんだ?」


「分かりませんが……とりあえず2人ずつに分かれて進んでみません?」


 ロイは飽くなき探究心に目がキラキラしていた。この状況で楽しめるの凄いなお前。


「そうするしか無さそうだな、これ」


 ロックが進んだマス目から後ろに下がろうとしたが、また見えない壁に阻まれた。

 どうやら始めてしまったが最後、ダイスを振って先に進むしか無いらしい。しまった……迂闊に乗り出すんじゃなかった……


「まぁ、どちらにせよいつかは調査しなくちゃいけないッスからね〜。じゃあ俺はロイと行きますからザッハとトルテで1組になって行こうぜ」


 という事はお前はガトーなのか? 見た目が同じすぎて見分けが付いてないから自己申告してくれないとマジで分からない。


 という訳で俺とロック、ロイとガトー、残り2人の3組に分かれて進む事にした。


「これってやっぱ魔法ですかねー。何かいつの間にかダイスも増えてるし」


 そうなのだ。俺たちが振った巨大ダイスは俺たちの所にあり、ロイ達の所にも何故かダイスが出現していて、更に残り2人の所にも出現している……無限ダイスである。


「これ魔法で作られたとしたら相当変な魔法ですよね。誰が何の目的で……?」


「まぁ、1番奥まで行けば分かるんじゃね? よし、俺たちも振ってみようぜ!」


 ザッハだかトルテだかどっちか分からないヤツが勢いよくダイスを投げた。止まった目は6だったので最初に4を出した俺達は追い抜かれてしまった。


「へっへー、団長、お先にー……――っ!!??!」


 2人がマス目に着いた瞬間、床が抜けてそのまま消えて行った。え?!!?!


 助けようにも誰もが透明な壁に阻まれて進む事が出来ない。


「2人とも!! くそっ、罠か!!」


 ゲームみたいな仕様だと思って油断するとは……ザッハ、トルテ……どっちがどっちか分からんがお前たちの死は無駄にしない。


「だんちょー……」


 落ちた先の方から2人の声がした。あ、生きてたのね、ゴメン。


「団長、今俺たち死んだと思ってましたよね?」


「仮に死ぬような罠だったとしても皇室騎士団の第1部隊の騎士がそんなんで死ぬわけないでしょう」


 それもそうだな。俺達は頑丈には自信ありの皇室騎士団員。


「それにこの落とし穴、ご丁寧に下はクッションですよー」


「……何かここに1回休みって書いてある。どの道登るのに時間かかりそうなんで先行っててくださいー」


 そう言われたので、俺達は2人を置いて先に進む事にした。


 本当に何なの、この洞窟……

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