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開かれる帝国舞踏会……后は誰がなる(1)

 


「あー、城の中は入んない方がいいッスよ。荒れてるし……」


「何でだ?」


「何でってもなぁ……あんな形で陛下が振られちゃったからなぁ……」


「えっ」


 どいつだか分からない三つ子の1人の発言にオペラを含む全員が振り返る。

 皆の様子にたじろぎながらも、その中に居るオペラの姿に三つ子は目を丸くした。


「え……ってか、何で魔王様や、えーと……オペラ様のお兄さんまでここに居るんスか」


「何でもクソも……詳しくは言えないが、オペラを含めた俺達は暫く違う大陸に行って戻って来れなくなっていたんだが」


「ええ……」


「ちょっと、一体どういう事ですの?! まさか、わたくしの偽者が居たとでも?!」


 困惑する三つ子の1人の襟元にオペラが掴みかかる。羽の無いオペラは三つ子に背が届いていないのでプルプルと背伸びをしている。申し訳ないがちょっと可愛い。


「えーっと、あー、その団長の話を信じるなら偽者だとは思いますが……色々とありましてそのー……」


「詳しく、詳しく説明なさい!!!」


「あーっと……まぁ、その、なんつーか……」


 バツが悪そうにオペラを見やりながら、三つ子は数日前の出来事を話し始めた。



 ―――――――――――――――――――



 オペラが東国に拐われたという事実は陛下以外の皆が知っていたらしい。

 俺を始めアークやロストなどその場に居た人物は皆オペラを追いかけてしまい、残ったのは怪我を負って倒れたシルバーと魔族のベルだけであり、詳しい事情を知る者は居なかったものの……知らせを受けた騎士や従者、町の者達が考えたのは――


『この事実を陛下に知られてはならない』という事である。


 季節は丁度×マス直前。そんでもって誕生祭。どうして恋人が一緒に過ごすべきイベントが近々に重なっているのかは知らないが、陛下がその日の為に仕事を詰め込んで長期休みを取ろうとしていたのを城の誰もが知っていた。

 なので、オペラが拐われただけでもムカ着火ファイヤーものなのに、輪をかけて時期が悪すぎる。

 せめてそのイベント部分だけでも何とかならないかと、騎士含め帝国民一丸となって×マスや誕生祭が恋人の為のイベントとならないよう頑張ったらしい。

 頑張りの方向性がどうだったのかは知らないが、ここまで拐われたという事実が明るみに出なかったのはグッジョブだとは思う。バレていれば陛下なら泳いででも東国に来たんじゃなかろうか。


 そんなこんなで陛下がオペラと過ごす日はいつまでも来ず、誕生祭も過ぎ去って暖かくなってきた数日前……

 オペラは突然陛下の前に現れたらしい。


 その姿はボロボロで、白く綺麗な髪は見る影も無く灰色になっていた。


『ええと、オペラ?』


 羽の無いオペラの様子に、何があったのかと陛下は混乱し焦っていたそうだ。

 焦る陛下の様子も構わず、オペラはたった一言こう告げたそうだ……


「『わたくし……もうルーカス様とはお付き合い出来ません』と」


「だっ……だれがっ!!!」


「いやー、俺達も騒然としたんスよ。だって、オペラ様って結構陛下にベタ惚れっていうかその為に帝国を襲っちゃくらいでしょ?」


「そっ――」


 それはそう、と頷く俺達にオペラは顔を青くしたり赤くしたり忙しそうである。


「で、陛下は呆然と石になっていたんスけど、俺達は……特にシャドウは信じてなかったっつーか……」


「シャドウ! 流石シャドウね!」


 パァと顔を明るくさせ、アイツはワシが育てたんじゃと言わんばかりに自慢げに胸を張った。お前が育てたんじゃない、シャドウは陛下の子だ。


「……で、茫然自失とする陛下は置いておいて、シャドウ曰く……もしかしたらこれは何かの罠なんじゃないかって。だから、敢えてそのままら陛下が破局したって噂を広めて敵の様子を伺おうってなったんスよ。というか、そういう噂を流せばオペラ様が黙っていないと思いまして」


「はぁ?!!」


 確かに。黙ってないどころか驚きすぎて石になっていたくらいだが。


「でも、ここの数日で瞬く間に噂は広がったばかりか大変な騒ぎになったにも関わらず、聖国は黙ったままで。もしかしてやっぱ本物だったんじゃないかムードも流れ始めていたので、折角だから后候補を募る舞踏会でも開こうかなって。誰かが言い始めて……あー、何か結構な騒ぎになっちゃってんスよね」


「……それ、陛下は知ってるのか?」


 その問いに三つ子の1人は目を逸らした。


「知ってはいる……と思うッス。多分……ただ、ちょっと今陛下結構……ショックがでかすぎたせいか誰も執務室に近づけないんスよ」


「なら、わたくしが行けば解決じゃ……」


「待ちなさいよ」


 オペラが城に向かおうとしたのを止めたのはロストだった。


「……何よ……あなた、また邪魔する気ですの」


「はぁ……話聞いてた? 誰かが、何かを狙ってアンタの格好をしてルーカスに近付いてかき回したっつってんでしょ? んで、逆に罠を張ろうってのにアンタが出て行って解決したら誰がやったのかわかんないじゃないの」


「そ……それは……」


「それに、アンタの偽者に簡単に騙された男なんて、ムカついてしょうがないんだけど。そう思うでしょ?」


 ロストは腕を組みながらアークを見た。アークは無言でそっぽを向いている。


「……だから、アンタを簡単に城に行かせる訳には行かないわ。でも、どうしても行きたいってんなら……これでアタシに勝ってからになさい」


「これ……」


 ロストの指差す先には后候補募集の舞踏会の案内だった。


「……え? それって……」


「アタシらには、その事情とは別にアンタとルーカスがくっついて欲しくない事情があるのよ。だから、あの男とヨリを戻したいなら、アタシに勝ってからになさい」


 嫌味そうに黒い笑顔を浮かべ、ロストはオペラに言い放った。……アークの腕を引いて。


「……は? ちょっと待て、何で俺まで巻き添えにするんだ……」


「アンタも邪魔したいんでしょ?」


「え? それはどういう……」


「ち、違っ!!」


「あー……参加するんだったらあっちの受付なんスけど、分かりました。纏めて参加で出しておきますねー」


 話が長くなりそうだと察した三つ子の1人は空気を読んでそのままスタスタと受付に向かってしまった。


 それにしても……オペラの偽者か。

 一体、何処の誰がそんな恐ろしくてややこしいことを仕出かすんだ……

 陛下はアレでこと一番肝心な自分の事には頭が働かないので、呆然としたたま荒れているのだろうな……犯人が見つかれば拳骨で済むか分からんが。


「アー……夢女子もいいけど……ルーカス様を巡って争うオネエと魔王様……それはそれでおいし過ぎる……アー……来て良かった……」


 口論を続けるオペラたち。それを見てほーっと顔を赤らめる古竜のファフニール。いや、その2人は別に陛下を巡ってはいないだろ……変なフィルターをかけて見るなし。

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