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皇帝の妃を決める舞踏会……?(中編)


 

 何がどう間違って伝わったのか分からないが……舞踏会を開くはずだった代わりに開かれた武闘会は我々の心情とは逆で大盛り上がりであった。

 会場内は酒や食べ物の売り子や屋台も出ていてお祭り騒ぎである。


 種族問わず集まった令嬢達は何故か武闘派ばかりである。おかしい。戦争してる訳でも魔王や魔獣の危機に晒される訳でもない帝国で、そんなに女性が強くなる必要は何処にあったのだろうか。


 歓声が上がり次々と勝敗が決まる中、ひときわ厳つい女性が見えた。

 鍛え上げ過ぎた筋肉はもはや令嬢の程を為してない。そして何故かそのたくましい肩に男が乗っていた。肩に乗っている方が兄かな?

 いや、よく見るとその男には見覚えがあった。あいつアレだ、『改革ヒロイン! 恋愛成就大作戦』とかいう乙女ゲームのダイエット悪役令嬢の婚約者のカイルじゃないか!

 てことは、その筋肉ゴリラは悪役令嬢エリスなのか? 何でそんなパンプUPしてるの?

 エリスはカイルを肩から下ろすと2人で愛を誓い合う。


「エリス……僕は正直、君にそんな事はして欲しくはないんだ。君が怪我でもしたら僕は……」


「カイル! 私は必ず勝つわ。そして優勝のトロフィーを貴方に捧げる!」


 トロフィーなんて用意してるのかは謎だが。

 そんなダイエット筋肉ゴリラ令嬢エリスに対峙するのは、2人の令嬢マリア・トリーゼとマロン姫であった。あの岩が流れてくる洞窟のゲームの令嬢だ。


「貴方達があの洞窟の……面白い。2人同時にかかって来なさい!」


「ふふ、私達も舐められたものね。【あああああ】」


「ええ。行くわよ【魑魅魍魎の鎮魂歌】」


 マリアが何も無い所から岩を出し、それをマロンがゴリラ令嬢に向かって投げつけた。……え? どっから岩を出した今?? アイテムボックス??

 ゴリラ令嬢は正拳突きでその岩を打ち砕く。


「ふん、もろ過ぎるわ」


「ならば、これならどう?《無限岩地獄アンリミテッドイワインフェルノ》!!」


 マリアが岩を大量に出す、マロンが投げる、ゴリラが壊す!!

 嵐の様に連射される岩を練撃の拳で打ち砕く様に会場中が息を呑んだ。何コレ……普通に白熱バトル始まっている。


「! くっ……!」


 先に悲鳴を上げたのはゴリラ令嬢の拳であった。

 だが――


「!! 岩切れよ……!」


「これが、最後の一投……勝負!!!」


 マロンが全力を込めて投げた岩とゴリラの拳がぶつかり合う!!


 ガコォン!!


 岩は粉々に砕けた。だが、ゴリラ令嬢の拳は血だらけだ。


「エリス!!」


 カイルが駆け寄り、拳の手当てをする。


「素晴らしい拳ね……でもどの道、私達の手札はもう切れてるからここで敗退ね」


「貴女の勝ちよ。いい戦いだったわ」


「2人とも……」


 ゴリラ令嬢も拳が使い物にならずそこで棄権となったが、3人が握手をし合う健闘に会場からは拍手が起こった。

 会場は砕けた岩の残骸掃除の為一時休憩となった。



「……なかなか皆健闘してるね」


 陛下はもう後の事は考えたく無いのか、とりあえず武闘会を楽しむ事に専念しようとしていた。エースは最早素面ではやってられないのか魔王と酒盛りしている。お前は妃候補探すんじゃないんかい。


「まぁ、強い人は嫌いじゃないけどね」


「俺は守ってあげたいような可愛い子がいい……」


「人間も中々やるな。ん? 次はベルが出るみたいだぞ」


 岩掃除が終わった会場には魔族のベルが立っていた。黒いマントが薄着の防具を覆っていて中々にセクシー魔族である。会場の男達も盛り上がっていた。

 対峙しているのは、やはり黒いマントに身を隠した令嬢であった。

 えーっと、誰だっけ……


「あれは、占術師の悪役令嬢レイジー・トパーズ……」


 陛下が嫌な顔をして言うので思い出した。ああ、あの地味に痛い電気の呪いかけてきた奴か。

 よく見ると、入れ替わり事件の時のルナ・トピアスが客席で応援していた。


「レイジー先生!! 頑張ってください!!」


「任せて」


 マントから紫の水晶を出してベルに対峙するが、普通の令嬢が魔族相手に大丈夫なのか……?


「……魔族に果敢に立ち向かうとは褒めてやろう。だが、来ないのならばこちらから行かせて頂くとしようか」


 ベルがマントを翻した次の瞬間、レイジーの頭上にいた。長い爪を上から振り下ろす。いやいや、早すぎるて。一般の人見えないだろ。魔族大人気ない。

 だが、決まるかと思ったベルの爪はレイジーを捕らえる事が出来ず床に突き刺さった。


「何? ――ふん!!」


 まぐれかと誰しもが思った。が、2撃目、3撃目とベルの爪は次々と避けられる。


「あの人間、ベルの爪避けたのか。なかなかやるな」


 魔王が驚いてる位だからベルもそこそこ強いのだろう。だが、何度繰り出してもベルの攻撃は一向に当たる気配は無かった。


「あれは……なるほど、占術か」


 確かにレイジーはベルの一撃が見えているというよりは、最初からその場所が分かっているかのように避けていた。

 そういえばレイジーは未来視が出来るらしいが、そんな風に戦う占術師は初めて見た。いいなぁ。


「中々やるな人間。だが、ちょこまか逃げ回っているだけではないか」


「それはどうかしら?」


「?!」


 ベルが踏んだ床に一瞬魔法陣が見えた。その瞬間、青い電気がベルの体を駆け巡る。

 あ、あれ見覚えあるわ……地味に痛い電気や。


「地雷か……」


「そうよ。私がただ逃げ回っているだけだと思った? 床に呪いの魔石を埋め込んだの。私は何が何でも勝たなくてはいけないのでね……全力で行かせて頂くわ」


 攻撃は全て当たらない上に罠まで張られてしまうとあっては、魔族のベルも流石に苦戦していた。

 意外にも優勢となっているレイジーに客席のルナが声援を送る。


「レイジー先生、我々の願いの為に頑張ってくださいー!」


「ええ。私はこの戦いに勝って、陛下とジェド様に生BLのモデルをお願いするのよ。その為にも、絶対勝つわ!!」


 ん?? 今何か言った?? 生BL???


「BLって何だ?」


 ちょっと笑っている魔王の問いに陛下は頭を抱えていた。あいつら……懲りずにまだ妄想してたんかい!

 これは絶対にベルに勝って貰わねば……


「なるほど、それがお前の望みか」


 そう言うとベルは攻撃を止め、レイジーの目の前に近づいた。


「どうしたの? 攻撃は終わり?」


「私が勝ったら、ジェド様とルーカス陛下に猫耳と尻尾を付けて我がモフモフ小魔獣カフェでモフモフ達と共に撮影会を行おうと思うのだが、いかがかな?」


 ベルの言葉にレイジーの目が見開く。


「えっ……」


「元々、私が勝ったら陛下にうちのカフェで何かイベントを開いて貰おうと思っていたから丁度いい。どうだ? モフモフ達と猫耳、妄想が滾るんじゃないのか?」


 ……は?

 ベルの提案にレイジーは100万回頷き手を握った。


「それは……めちゃくちゃいい!!! いいです!! 次の新刊はそれだ!!!」


「利害が一致したな」


「貴女の勝ちです!! 絶対優勝してください!! 私は妄想を紙に起こさないといけないのでこれで!!」


 そう言うとレイジーとルナは光の速さで帰って行った。魔族ベルの交渉勝ちである。


「ははは!! いいなそれ、絶対勝てよベル!!」


 魔王はお腹を抱えて大爆笑していた。

 陛下は何も聞きたくないようで両耳を押さえていた。


 絶対に優勝しないでください……誰か……アイツを倒してくれ……

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