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帝国に居る竜族の説得(前編)


 

「はい、どうぞ」


「……」


 シルバーが魔法陣を描くとそれはゆっくり鍵の形に集まって行き、オペラの拘束具の鍵へと嵌った。

 前にアークが付けていたものは反魔法がかかっていて魔法学園の生徒達が鍵を開けるのに苦労していたのだが……仕様が違うのか、それともシルバーには関係ないのだろうか? 魔法の事は俺には良く分からない。


 結局その後、陛下は暫く起きなかった。

 流石に一国の女王を拘束してボロボロの衣服のまま下敷きにしておくのもどうなのかという結論になり、全員総出でオペラから陛下を引っぺがした。

 家臣一同が陛下を残念そうな目で見ていた。陛下は死んだように寝ていたし、引き出された方のオペラは魂が抜けていたが。

 それから暫く経った今も呆然としているオペラの事はメイドに任せる事にした。その内正気を取り戻すだろうから今のうちにお風呂に入れたり着替えさせたりしてあげて欲しいとお願いすると、メイド達は張り切って固まったままのオペラを運んで行った。


 陛下は何をしても起きなかったので相当疲れているのでは無かろうか。

 とりあえずそのまま執務室のソファーで寝かせてあげる事にしたのだが、起きた後の事を考えると男としてだいぶ居た堪れない。

 未だ彼女無しの俺達ではあるが、そんな俺達でも流石に同情した。嫌われないと良いと思ったが、そんな事で嫌う様ならば最初からこんなに困難な相手を好きになどならないだろう。多分。

 最強で出来る男にも出来ない事があるのだな……と家臣達は少し陛下を身近に感じた。まぁ、最近は陛下も色々と困ったり落ち込んだりしている気がする。


「その半分以上はお前のせいだぞ」


 と、心外な事をアークが言ってきたのだが、こと恋愛事情に関しては俺はマジで何もしていない……と、思う。多分。

 細々は何かしたかもしれないけど……


 前のようにスイッチオフになった訳じゃ無いにしろ、暫く起きない陛下と呆然としてる聖国の女王とは色々話し合わなくてはいけない事があるだろうし、更にアークやシルバーも陛下を待っているのだが……時間がかかりそうなので俺は先に陛下の言っていた人を探そうと思った。


「なぁエース。帝国に竜族なんて居たか?」


「竜族ですか……?」


「ああ。陛下が帝国にいる竜族の者達ならば次の王になれるかもしれない、って言っていたんだ。何でも、前の女王の方針に反対して自ら国を捨てた唯一の者達だとか……」


「あー……まぁ、居るには居ますけど……」


 エースは微妙な顔をした。え?? 何??


 エースの考えを唯一瞬時に理解できる魔王アークの方をチラリと見ると、すでに明後日の方を見て耳を塞いでいた。……何なんだ???


「なぁ、アーク……お前も知ってるのか???」


「……知ってるも何も、お前も会った事あるぞ」


「え?? いつ???」


「……ラヴィーンに最初に行った時、村に泊まっただろ? ……あいつらだよ」


 ああー! あの村の!! そういやゲートを壊した直後にあの村を素通りして以来見てなかったが帝国に来ていたのか。しかし何で帝国に?? あと、何でエースもアークもそんなに嫌そうな顔をしているのだろうか……

 そう言えば新しい王にと話す陛下もだいぶ微妙な顔をしていたな。一体アイツらが何なのだろうか……?


「彼女達でしたら……多分、集会真っ只中かと思いますので……行ってみては如何でしょうか」


 エースの提案にアークはギョッとした。


「俺は絶対に行かないぞ。行くならお前だけで行けよ」


 アークは耳を押さえて何も聞こえない素振りをした。

 ……何なの君達。あと、何なのその人。



 ―――――――――――――――――――



「みんな薄情だねぇ。私はジェドの友達だから、ちゃんと付き合ってあげるよ?」


 何故か誰も一緒に来てくれようとしない中、シルバーだけが一緒に着いて来てくれた。

 たまに友情が重すぎて怖いが、そういう所はありがたいような気もする。


「それにしても……集会って、やっぱ例の集会だよな?」


 エースから集会と聞いて嫌な予感がしたのだが、誰もが一緒に来てくれない所を見ると間違いないだろう。


「何の集会なんだい?」


「……帝国には規制しても禁止しても絶対に流通が止まらない『薄い本』というものが存在するんだよ……」


 例の薄い本――そう形容すれば帝国民は誰しも察しがつく、いわゆる不認可小説である。

 発行する小説に認可も不認可も無いっちゃー無いのだが、それらの本に関しては許可は一切していない。何故なら内容が結構……平たく言うと腐の国の住人達が描く男同士のロマンスが多いからである。

 特にイケメンが餌食になりやすく、帝国一のイケメンの皇帝は人気ナンバーワンである。ハッキリ言って不敬極まりない。

 そもそもコレらは、異世界の記憶を持つという令嬢から広まったらしいが……誰だか知らないけど多分悪役令嬢であろう。


 今、帝国のその集会で1番人気があるという作家こそ、いつぞやに俺を苦しめたレイジー・トパーズとかいう占い師の悪役令嬢である。

 彼女は占いに見た未来で俺を呪いながらボーイがラブするその世界に目覚めたという最悪の令嬢なのだ。

 その名と本は今や外国にまで轟いているらしい……勝手に人の変な妄想かつ捏造を広めないでほしい。


「ふーん。何か魔塔でも噂を聞いた事があるような気がするけど、そんな物が帝国では流行っているんだねぇ」


「アンデヴェロプトにまで……やめてくれ。まぁ、とにかくそういう集会に行ってるってことは、そういうものを好む人なのだろうか……まさかラヴィーンにまで広まっているとは、恐ろしいな」


 エースに言われた場所に行くと、丁度大きな集会があるらしくかなり賑わっていた。

 イエオンの商隊が飲食の店を並ばせ、大きなお祭りレベルの大規模の集会になっていた。何でこんなに広まってしまったのか……


「こんな人混みから探すのは結構難しいな……」


「竜族を探すだけなら全員に中規模の攻撃魔法でも撃ち込むって手もあるけど。どうせ竜なんだから強いだろうし、最後まで立っている程の実力者に絞ればかなり楽だよね」


「……お前はサラッと恐ろしい事を言うな」


 どうしたらこの人混み全体に攻撃するとかいう恐ろしい発想が出来るんだよ……こちとら皇室騎士団長やぞ? いくら不認可書物だからってそんな鬼みたいな事できる訳ないだろ……


「竜族達は11人の女の集団で、しかもレイジー・トパーズとかいう作家の大ファンらしいからそこに行けば何か手掛かりがあるだろう」


 俺達は人混みを上手くすりぬけながらそいつらの居る場所を目指した。



「あら……ジェド・クランバル様」


 目指すレイジー・トパーズはすぐに見つかった。人気作家と聞いていたが、その場所には行列は無く片付けている所だった。


「ん? もう帰るのか……?」


「ええ、かなりの数を持ってきたのですが全て売れてしまったので。やはりジェド様の妄想は皆に愛されているのですよね。光の速さで無くなりました」


「勝手に堂々と本人の前で変な妄想本を広めないでほしい……」


「ほほほほ、本人の前でなくとも売れてしまうものは仕方がないのですよ。ここまでしても断罪されないのでしたら私の未来は大丈夫ですね」


 コイツは占いで見た未来で断罪されるはずだったらしいのだが、個人的には早く断罪されて欲しい。まぁ、そもそも帝国には処刑とかそんな物騒な法律はありませんがね……


「……所でジェド様、そちらの御方はどなたですの?」


 レイジーが早速シルバーに目を付けていた。

 絶対に妄想するだろうからちゃんと紹介等したくも無い。ただでさえ友情が重すぎて燃料として燃えやすいのに……これ以上変な事を広めないで欲しい。


「まぁ……ちょっとな。何も全く関係はないが」


「まぁまぁ……言えない仲、という事ですか?」


 ……コイツの耳どうなってんの??


「いや、言える仲だ。何の関係も無い赤の他人だ」


「――え?」


 今度はシルバーがとんでもなく傷付いた顔をした。お前……いや、うん、友達だよ? でも今その顔はやめて??


「……お2人の間に……何かあったのですか……?」


「いや、全く何も無い。そうじゃなくてただの友達だ。何もやましい事は1個も無い」


「……私はジェドの為なら何処にでも駆けつけるんだけど……」


 シルバーが何かめちゃくちゃ落ち込んだ。いや、確かにそうだし今回は助かったよ? でもね、今はやめてマジで。


「やはり指輪が壊れてしまったのがいけないね。もう1個あげる……いや、何個でもあげればいいかな?」


「え……? 指輪……?」


「いやお前、今は本当やめて。後で何個でも貰うから今指に嵌めるのはやめろ」


 シルバーが嵌めていた指輪を外して俺の指に嵌めてこようとしたので全力で阻止した。


「……2人きりの時に嵌めたいという事なのですね……」


 レイジーがまた勝手な変換をし始めた。だからお前の耳はどうなっているんだよ。


「こうしちゃいられないわ!!!! 新たな妄想が降りてきたわ!!! しかも今度はかなり信憑性が高い妄想ね!!! ルナ!!! ルナ!!」


 レイジーは片付けを手伝っていたルナ・トピアスを呼んだ。コイツもやはり迷惑悪役令嬢で、ルナのせいでとんでもない目に遭った事がある。2人は腐の国の住人として連んでいた。


「ルナ、魔法使い様×騎士団長と騎士団長×魔法使い様……どっちだと思う??」


「……指輪を渡してる位だから魔法使い様×騎士団長じゃないですかね?」


「やはりそうよね」


 いや、すみませんがどちらでもありません。


「早く帰って執筆よ!」


「はい!!」


 2人は目をキラキラとさせて片付けをて早く終わらせて足早に帰って行った。次の新刊は俺とシルバーの変な本が生まれてしまうらしい……やっぱり来るんじゃ無かった。今なら誰も行きたくなさげだった気持ちが良く分かる。


「ジェド、薄い本はともかく、竜族の手掛かりが何も掴めなかったねぇ」


「はっ! そうだった……」


 俺はレイジーに無駄に燃料を投下しただけで終わってしまったのだ……ああちくしょう。


 俺が落ち込んでいると、隣でも膝から崩れ落ちる人が1人居た。


「ああああ!!! またしてもレイジー先生の新刊に間に合わなかった!!!」


「議長!!! まだまだ我々には集会の列の壁は厚すぎました……」


「かくなる上は徹夜しか無い……」


 崩れ落ちて泣いている女性に仲間と思しき女達が駆け寄ってきた。紫色のフードに覆われた11人の集団……

 崩れ落ちている女は見覚えがあった。


「お前……あの村の宿の店員……て事は、竜族か??」


「……え?? あ、貴方あの時のショタから裸に変わった騎士……!!!」


 議長と呼ばれた女と他10人は俺を凝視していた。……その記憶は早く忘れて?

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