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いざ再び竜の国ラヴィーンへ


 

 セリオンから乗った鳥籠はプレリ大陸の遥か上空からラヴィーンを目指して進んでいた。


 鳥ってこんな高い所を飛ぶんだっけ? と思っていたが、この籠を掴んで飛んでいる鳥達は元々高所を物凄いスピードで飛びながら狩をする種類のワシで、交渉して今は乗り物として働いているらしい。


 オペラは籠には乗らず鳥と仲良く飛んでいた。鳥同士気が合うのだろう。


「一緒に乗れば良いのにな……だが、そのツンツンした態度がまた良い」


 アンバーがウットリとオペラを見ていたが、オペラは睨み返していた。お前、それはツンデレのツンとかじゃなくて単純に嫌われているだけじゃないのか?

 シャドウも何か苛々した様子でアンバーを見ているし。お前、そんなんだっけ? ま、シャドウも成長期だからな、苛々する事もあるだろう。心が育っているようで良いんじゃないかな。何か心なしか苛ついている時の陛下に似ている気もしなくもないが……元が同じだからそれはそうか。


「それで、この鳥で何処まで行くんだ?」


「ああ、ラヴィーンの首都から離れた山にひとまず降りようと思う。ラヴィーンは岩山だが、比較的なだらかで降りやすい地点があってな」


「そこからは首都は遠いのか?」


「そんなに離れては居ない。ただ、難点はなだらかで着地がし易い分見つかり易い所だ」


「……ダメだろ」


「いや、構わん。いざとなれば戦うまでよ」


 そう言ってこの筋肉バカは大斧を取り出した。空中で大斧をどうするんだコイツは。絶対に真っ先に落ちるタイプだろうな。


「……目的地に着く前に来ているみたいだけど?」


 オペラが指差す方向には竜兵が飛んできていた。飛竜に跨る女兵士や竜の姿で武器を構えながら空を飛ぶ者。何十もの兵士達に囲まれて鳥達が焦り始める。


「お前達、不法侵入と分かっているのか?」


 竜の女兵士が代表して声をかけて来た。


「見ての通りそうですな」


「今更何の確認だ?」


 俺達は堂々と答えた。そもそも不穏な暗躍をしている時点で不法侵入はお互い様なんですが?


「いっそ清々しいな。ならば、攻撃されても文句は言えないと分かっているな」


「うーむ、本当はこんな手荒に行くつもりは無かったんだがなぁ。仕方ない」


 アンバーは全然仕方なくない笑顔で楽しそうに鳥籠を飛び出して行く。ダンッ! と音を立てでかい飛竜に着地し、そのまま大斧の嶺で次々と飛竜を殴って行った。


「アンバー、お前絶対戦いたいだけだろ……」


「ふん、俺の国はラヴィーンのせいで大迷惑を被っているからな。宣戦布告も同じ事だ」


「それなら、聖国も同じね」


 オペラまでそう言って竜の群れに突っ込んで行った。何だか知らないが急に戦いが始まった。まぁ、そもそもこちとら竜の国に殴り込みに来てるんだけどね……


「いや、だがいくらなんでもいきなり武力で解決するというのは良くないと思うんだ。こちとら平和を愛する帝国民だからなぁ」


「……騎士団長の口からそんなまともな事を聞くとは思いませんでした」


「何を言ってるんだシャドウ。俺はいつだってまともだぞ――ん?」


 そうこうしている間に俺とシャドウが残る鳥籠を飛竜の群れがブレスを吐く体勢で囲んでいた。うん、良い標的ですよね。


「騎士団長……流石にこれは……」


「慌てるなシャドウ」


「え?」


 俺はポケットからドラゴンの装飾の入った瓶のキーチェーンを取り出した。一斉に放たれるブレスを感じて勝手にビンの蓋が開き、火やアイス、毒等全てのブレスが瓶の中に吸い込まれていく。


「なっ?!」


 ブレスを吐いた竜達に一斉に動揺が走った。


「……何ですかそれ?」


「何かブレスを無効にするアイテムらしい。シルバーに貰った」


「シ……魔塔主様に? 何でそんな物貰ってるんですか……それって価値知ってます?」


「え? そんなに高い物なの……?」


 何か賭けの景品としてくれた位だからそんなにたいした物じゃないと思っていたんだが……たしかに竜の国の女王ナーガのブレスさえも防いじゃう位だからなぁ。やっぱり結構価値のある物だったのか。


 そう思ってマジマジと見てると、瓶の蓋がカチカチと外れそうになっていた。中身が膨張して蓋を押しているようにも見える……


「……騎士団長……それ、何か……大丈夫ですか?」


「えーと……大丈夫じゃないかも」


 瓶の蓋が限界に達し、開くと沢山のブレスが勢いを増して爆発したかのように四方八方に飛び出した。


「ヤバッ!!」


「ちょっ!!」


 瓶が開く前に鳥籠を繋いでいたロープを慌てて斬ると、鳥達は一斉に上空に飛び出した。

 竜兵達も異変を感じたのか逃げようとしたが、ブレスはそのまま四方八方の竜達の方へと勢いよく向かって行く。返って来たブレスを食らい次々と落ちる竜兵達。


「え!??」


「何だ!??」


 瓶のブレスの勢いは止まらず、その先で戦っていたオペラやアンバーの方にも飛び火する。

 ブレスの渦は様々な色を織り混ぜ上空の者達を包み込んだ。


「どわ!!」


 ウインドブレスに吹き飛ばされアンバーは勢いよく落ち、そのまま下の川に突っ込んだ。見ると下は山間を流れる大きな川だったみたいで、空から落ちた竜兵は皆川に流されていく。


「?!」


 オペラの方にファイヤーブレスが向かい避けようとするも、上から落ちて来た竜兵にぶつかり体制を崩した。

 だが、着弾しかけたその身体をシャドウが抱き止める。


「何処ら辺が平和でまともだ!!!!」


 シャドウがそう叫んでオペラと一緒に川に落ちて行った。本当にごめん、わざとじゃないんだ。

 俺は皆に手を合わせながら籠ごと川に落ちて行った。



 ★★★



「――ぶはっ! はぁ、はぁ……」


 遥か上空からの川へのダイブ……いくら頑丈とは言え、全身甲冑でしかも人を1人守りながらでの状態は流石に肝を冷やした。

 自分は大丈夫だが、絶対に傷1つ付けてはいけない。

 オペラを抱えながら陸に上げてあげる。水には慣れてないのか気を失っているようだった。


「大丈夫ですか?」


 肩を揺するが起きる気配が無かった。

 もしかしたら水を飲んでしまったのかもしれない。心配になり近づくとその唇が目に止まった。


「あー……えっと……」


 いつぞやの襲撃事件を思い出す……が、そんな事を言っている場合では無い。兜を外してオペラを抱き起こした。顔を近づけようとしたその時……


「う……ん……?」


「!!!??」


「え??」


 オペラが目を覚ました。目蓋が開くのが見えたので光の速さで兜を被り直した。


「……あれ? わたくし……今一瞬ルーカス様の幻影が見えたような……」


「ゆ、夢を見ていらしたんですかね??? 起きないから心配しましたが、無事で良かったです」


 自分は一体今何をしようとしていたのだと、後悔して頭を抱えた。


 その直後、川からザバザバと這い上がる人影が見えた。


「ジェド、お前無茶苦茶するな。何人か倒して撤収させるつもりだったが、俺でも流石にブレスで全員を川に叩き落とすような真似まではせんぞ」


「いや〜、本当わざとじゃないんだが……まぁ、でも川に落ちた竜兵皆元気そうだったので、追いつかれないように一通り峰打ちで気絶させまくってきたからな。もっと下流まで流されてるし暫くは大丈夫だろう……」


「お前も中々鬼だな……ん? おお! オペラにシャドウも無事で良かった」


 川から上がって来た2人の事は大して心配はしてなかったが、やはり無傷だった。

 ――が


「……また、貴方の仕業なのね……」


 ジェドは冷たい目のオペラに死ぬ程蹴られ、また川に突き落とされた。



 ★★★



 魔法で服を乾かし、今いる場所をアンバーの持つ地図で確認する。


 落下したのはラヴィーンの首都から南に外れた場所で、川に沿って北上していけば王城のある首都まで辿り着けるようだったので気を取り直し、川沿いを上流へと歩き進んだ。

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