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竜の国ラヴィーンも優しくはない(1)

  


 竜の国ラヴィーンへ至る石畳は山を蛇行しながら登って行く。

 歩きながらアンバーがラヴィーンについて話してくれた。


「竜の国は聖国同様、神聖な国とされている」


 石畳には竜への信仰心が感じ取れるような石の像がいくつも両脇に並んでいた。見えない程先まで伸びる石像は、永延と続く門のようであった。


「竜は長い年月を自由に生き自由に過ごす種族で、ラヴィーンは前はただの竜の修行場だったそうだ。竜に挑戦したい勇者等が険しい山を登り、そこに辿り着いて戦う……そんな国だった」


「ん? 竜の国って医療研究が進んでいるって言ってたよな? それはまた随分と国の様子が変わったな」


「俺も王になってから周辺諸国に詳しい者に聞いただけなのだが……医療や薬剤の研究を行い始めたのは今の女王に代わってかららしい。その頃から諸外国に竜の貸し出しも行い始めた。研究資金を稼ぐ為らしいが、竜族の中では古竜がかなり怒り揉めて内紛までに発展したらしい」


「へー……でも今は医療研究の方に国が落ち着いたんなら、その古竜を黙らせたって事だよな?」


「ああ。今の女王がかなり力があるのもそうなのだが……ここだけの話、噂では異世界人の力を借りているんじゃないかと言われている」


「異世界人? 勇者とか聖女とかそういうヤツだよな……」


 アンバーは小声で話続けた。


「確実な話じゃないのだが……どうも研究内容が進みすぎてるとかで、そういう話も上がっているんだ。ま、確認しようが無いがな」


 確かに、話だけ聞くとその可能性は高そうだよな。異世界人って聞くと今まで面倒臭くない奴の方が少なかったので本当にそんなヤツがいるなら関わりたくないなぁ。


「でだ。俺は一連の騒動も含めて、どこかに悪役令嬢が関わっているんじゃないかと思っている」


「いやそれはお前の願望だろ」


「そんな事は……あるかもしれない」


 この獣人の王は、何でか分からんが悪役令嬢に会いたがるんだよなぁ。悪役令嬢に会っても何も良い事なんて無いけどいいの……?


 ふと、アークの口数が少ない事に気が付いた。

 アークはラヴィーンに近づくにつれて何か考え込んでいるようだった。何かさっきの村でも疲れていたけど。


「どうしたんだ? 何か気になる事でもあるのか? さっきの村から元気が無いが」


「あ……いや、あれはまた別だ。……ちょっと子供の頃を思い出してな」


 そういや、アークは先代魔王とラヴィーンに行った事があるって言っていたな。何しに来たんだろう?

 だが、アークはそれ以上何も言わなかったので、俺も気にしないことにした。空気は読む男だ。



「何か門が見えてきたけど、あれがラヴィーンか?」


「まぁ、そうっちゃーそうだな」


 竜のレリーフが付く門が見えた。街に着くにしては早いと思っていたら、そこには魔法陣の描かれたゲートがあるだけだった。

 聖国やゲート都市で見る物とは違い、年期の入った石に描かれた魔法陣にはいくつもの魔石が嵌め込まれていた。


「これって、やっぱワープゲート?」


「ああ。古くから竜の隠れ道として使われていたらしい。ここから竜の国に行く事が出来るんだ。さぁ、行こう」


 魔法陣に足を踏み入れると周りの景色が歪み、一瞬で変わった。鬱蒼とした森の景色が一変して開けた街並みとなる。


「ここが……竜の国ラヴィーン……」


 景色の変わった先に現れた竜の国は、見た事の無いような造りの家が多かった。


 空に飛ぶ竜や鱗を持つ竜族達。それらが入って行くのは材質も製法もよく分からない建物だった。

 近年、魔術具の開発が進んで便利になってはいるが……ここの様子は更に先を行くようにも見えた。

 街中を通る道は綺麗に整備され、歩いている竜族達の服装や様子も明らかに違う。


「……やっぱ、異世界人とか絡んでるのかなぁ?」


「うーむ……俺が前に来た時より更に変わっているからなぁ」


 そんな街の中心に丸いドームのように建てられていたのがラヴィーンの王城であった。他の国の王城よりは小さめな気がする。

 その入り口には沢山の竜の兵士達が並んでいたが、コチラを見るなり和かな笑顔で駆け寄ってきた。


「これはこれは獣王様ご一行ですね。連絡は受けております、お待ちしておりました。さぁ、こちらへいらして下さい」


 竜の兵士に案内されるまま、俺達は王城へと足を踏み入れた。


 外から見た王城は円形のドームのようだったが、中に入ると真ん中が吹き抜けとして空いている白壁の建物だった。その明かりが入り込む中心に王座があり、そこに女王が座っている。


 案外簡単な作りっぽいけど……寝る時とかどこで寝るのか気になった。竜の事はよく分からないな。


「獣王アンバー・ビーストキング……よくお越しくださりました。貴方が王になった時以来ですね。そして共に来られた方々、初めまして。わたくしが竜の国の女王、ナーガ・ニーズヘッグですわ」


 竜の国の女王、ナーガ・ニーズヘッグ。

 そう名乗った竜族の女王は黒い鱗を持つ美しい女性であった。

 青みがかった黒く長い髪と蛇のような目を持つ、美魔女って感じの大人のな女性なのだが……竜族って長生きって言うし年齢は想像出来ない。何歳なんだろう。


「女王、お久しぶりです。こちらはジェド、そしてアークです」


「まぁ……貴方、魔族なのね」


 ナーガはアークをじっと見た。アークもナーガを見るが、明らかに顔色が悪くなって冷や汗をかいていた。どしたん? 大丈夫?


 アークに心が通じたのかこちらを見て頷き、小声で耳打ちした。


(……大丈夫だ。ただちょっと……あの女王の声が全然聞こえなくてな)


 聞こえない? そんな事ってあるのか?


(いや、聞こえない事自体は案外ある話なんだ。現に聖国のオペラの声も聞こえなかった。だが……この女は、ちょっと気を付けた方がいいかもしれない……)


 え、そんな事言われると怖いんだけど。

 だが、アークの言っている事とは逆でナーガは優しく語りかけてきた。余計こわい……


「して、何用で来られたのですか? わざわざ王自ら出向かれたという事は何か理由があるのでしょう?」


「ああ……実は、このジェドという者だが、草原の村にある村で食べた夜泣き茸で子供になったまま元に戻らなくなってしまったのです」


「夜泣き茸ですか? それは確か1日で子供から元に戻るはずですが……」


「うちの国の獣医もそう言っていた。だが、もしかしたらアレルギーでこのような症状が出てしまったのかもしれないとも言っていた。竜の国は医療や薬の研究に明るいと聞いた。何とか力を貸してもらえないだろうか?」


「分かりました。そう言う事でしたら、すぐに医師を手配しましょう」


 ナーガが家臣を呼び、声をかけた。


「ああそれと……実はセリオン領内の牧場で不可解な事が起きてな。その、変な牛が現れたんだ」


「変な牛……」


「マーブル模様に黒い刻印の入った牛でな。何か心当たりは無いだろうか?」


 その牛の特徴を聞いたナーガは、頬に手を当て考え込む素振りをした。


「さぁ……心当たりは無いと思いますが……念の為皆に聞いてはみますね。それより、そちらの子供を診て貰わなくてはいけませんのよね? ご案内させますわ」


 家臣が俺達を呼びにきたので、それに着いて女王の前を後にした。アークがチラリとナーガを見ると、青黒い瞳で蛇のように凝視していたようでアークはすぐに目を逸らした。何かロックオンされてない君……?


 俺達は竜族の家臣に案内され、地下へと降りて行った。なる程、この王城は地下に伸びていくのか。



「こちらで少々お待ち下さい」


 案内されたのは応接間のような部屋だった。俺達の為にお茶が用意されている。


「今すぐに参るという事ですので、それまでこちらでお待ち下さい」


 家臣が部屋を出て行き、俺達3人だけになる。

 用意されていたお茶を飲んでみると少しスパイシーな香りがした。


「何かお茶って色んなところのヤツ飲んだりしてるんだけど、ラヴィーンはどういうお茶なんだろうな?」


「確か、竜の爪や生薬の入ったブレンド茶が有名だった気がする。身体に良さそうだな」


「お前はそんなガタイして健康に気を使うのか?」


「健康あってこその身体だろ。それはそうと、すんなり医師を紹介してくれそうで良かったな。何か不穏な事が多いから、てっきり女王が悪役令嬢なんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぞ」


「ぶっ!!」


 アンバーが変な事を言うのでお茶が気管に入ってしまった。


「げほっ、馬鹿! やめろ! 変な事言うなよ!」


「俺も考えが読めなくて焦ったし、何か部屋を出る時もめちゃくちゃ見てくるから怖かったが……もし仮にあの女王が悪役なら今頃このお茶に何か盛られてるな」


 アークも落ち着きお茶を飲みながら不吉な事を言い始める。


「お前までやめろよ……そう言うのさぁ……なんて言うか知って……る……か」


 何かアークが変な事を言うから心なしか力が抜けて来た気がした。気のせいだろうか……?


「あー……これ……あれだ。気のせいじゃ……ない……」


 俺達は本当にまんまと何か盛られていたみたいで3人とも意識が途絶えた。


 いや、何でアークもさぁ、まんまと飲んじゃうんだよ!! 気をつけろとか言ってたじゃん……



 ★★★




「……ここは……?」


 意識が戻ると地下牢のような所にいた。檻の向こうには用途の分からない魔術具が沢山置かれていた。医療具だろうか……? 怖いんだけど……


「うーん……」


 近くにアンバーの姿も見える。こいつも今起きた所らしく頭を振って意識を戻していた。


「何だここ……くっそ、何か盛るとはいい度胸じゃないか……ん? 待てよ……て事はやっぱ女王は悪役って事で決まりなのか???」


 アンバーは何故かこの期に及んで嬉しそうであった。いやお前……俺達、捕まっているんですが? そんな事言ってる場合??


「全く。しっかし、何でこう次から次へと問題が起きて一向に解決しないんだろうな……なぁ、アーク――」


 てっきりアークもいるものだと思って辺りを見回したが、アークの姿だけがこの部屋の何処にも無かった。


「あれ? アーク……居なくないか?」


 何処行ったの……?

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