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獣人の国セリオンは俺に厳しい(後編)

 


「……なる程、経緯は分かった」


「今の俺には信じて頂けただけでありがたいです」


「俺は見た目で誤解されがちだが、こう見えて割と話はちゃんと聞くタイプだ。で、皇室騎士団長ジェド・クランバルと魔王アークよ。お前達は、酪農農家を見学したいのか、その原因不明の状態を解決したいのかどっちが先なんだ? ……まぁ、その村の方は自国の話だからこちらで解決するが」


「……とりあえず、お医者さんとかって居ます?」


 獣人の王アンバーは見た目はいかついのだが、意外にも寛大な男だった。そう言えば今の王に代わってから外の国と積極的に交流するようになったって言っていたな。


「医者か……居るには居るが、王宮医も含めて基本的にこの国には獣人や動物専門の医者しかいないからな。人間の事が分かるかどうか。まあいい、診てもらわん事には何とも言えないだろう」


 という訳でアンバーが呼んだ獣医達が謁見所に集められた。


「うーん……」


「どうなんですかね?」


 診てくれているのは白熊の獣人のお医者さんだったが、俺の問診と口の中を見て悩んでいた。やはり獣医には難しいのだろうか……


「何か分かったか?」


「確実では無いですが……話を聞く限りだと、アレルギーじゃないですかね」


「アレルギー?」


「私もそちらは専門ではないのでふんわりとした言い方しか出来なくて申し訳ないのですが、夜泣き茸は特殊な毒キノコでして、その毒を排除しようと身体が反応し一時的に生命力をそちらに回すため身体が幼児に戻るとされています。普通は一晩で戻るのですが、アレルギーでいつまでも身体が毒を排除しようと錯覚して幼児のままでいるという事じゃないですかね? 似たような事例を見た事があるので……」


 花粉症でいつまでも鼻水が止まらないみたいな事なのか……これ。


「それで、そのアレルギー症状とやらは治るものなのか?」


 聞かれた白熊獣医は困った顔で王を見た。


「先に言った通り、我々はそちらの専門ではないのです。なので専門医に診てもらった方が良いかと思いますが」


「うーむ……そうなると、ラヴィーンか」


「え? ラヴィーンって……竜の国?」


「ああ。竜の国ラヴィーンは高山に沢山の竜族が住む。竜にはその血が万病を治すとか不老不死になるだの伝説が多くあるのだが、それは昔から薬や医療の研究が盛んに行われているからだ。あの高山では様々な薬草も採れるし、医療研究も高い技術を持っているはずだ」


「ラヴィーンがそんな事を行っているなんて話は初めて聞いたが……」


「竜族は表向きは竜の貸し出ししか行っていないからな。その地に他者を入れないのはその技術を漏らしたく無いからだ。我々も余程のことが無い限りそちら方面での助力を求めた事は無い。ただでさえ竜族は面倒臭いからな……協力してくれるかどうか」


 獣医もアンバーも気の毒そうに見てきた。……え? これ、結構大変な話なのでは?


「……お前、最悪そのままでいる人生も覚悟した方が良いのかもしれないな」


 え? 嫌だい! 嫌だい! こんなちっちゃいままだと……お? ノエルたんと合法的に恋が出来ちゃう年齢だね。悪く無いかも……

 言ってる場合じゃない。やっぱ嫌だ。漆黒の騎士団長になる為に剣の修行頑張ったからなぁ。もう1回やり直すのは正直御免である。俺は親父達のように剣狂いじゃないので修行は1回でいいです。


「はぁ……まぁそうだろうな。仕方ない、俺も頼んでやるから幾分か対応もマシだろう」


 アークがため息を吐いた。そう言えば竜の女王は先代魔王に心酔していたって言ってたっけ……

 アークと一緒で良かった。1人で来てたら色々死んでた。


「ラヴィーンは険しい山だから行くのはかなり大変だ。十分に準備して明日出発するといい」


「……そうなんだよな。獣王アンバーよ、誰か人を貸してくれないか? 今の我々ではラヴィーンまで無事に行ける気がしない。頼りの騎士団長も子供だしな」


「……お主、魔王だよな?」


「俺は魔王だが、先代と違って王位を継承してこの方あまりちゃんと戦ってない上に最近運動不足でな……魔王領の統治の為座って仕事する事が多くて、膝と腰が痛い。何なら俺も診てほしい位だ」


「……分かった。誰か案内人を付けよう。運動不足はいかんぞ? ちゃんと鍛えておけよ」


 獣人が誰か付いてくれるのならば安心だ。獣王もいい人で良かった。

 しかし運動不足の魔王って、どうなんだよ本当アークお前……

 これにはアンバーも呆れ顔である。


「……言っておくが、運動不足なのは魔王領を統治する為に忙しくてだからな。そもそも、お前が変な悪女や悪役令嬢事件に巻き込まれるせいで危険な目に遭ってるだけで、普段は魔王領だって平和なのだが」


 はいはい、この旅も俺のせいでどんどん厄介な事になってますよー……本当申し訳ないね。


「? ジェドはそんなに女性関係の事件に絡まれるのか?」


「ああ。コイツはそういう体質なんだ。悪役令嬢とか悪女とか……そういう特殊な女性に絡まれやすい」


「悪役、令嬢……? 何だか分からないが大変だな」


 本当ね。俺にも何だか分からないので本当大変です。アンバーにはここに来てからずっと可哀想なものと変なものを見る目で見られっぱなしである。


「まぁ、とにかく明日はラヴィーンに向かわなくてはいけないからな。とりあえず街に出て準備をしよう。獣王様、よろしくお願いします」


「ああ。すまない、こちらも来客が絶えなくてあまり相手をしてやれないが……明日には人を送るから宿で待っていてくれ」


 そうしてアンバーに別れを告げ、俺達は城を出て街中の宿に向かった。



 ★★★



 ジェドと魔王が去った後、家臣から獣王に面会を求める者の知らせが来た。


「アンバー様、旅の商人が謁見を求めています」


「ふむ……商人か。良かろう」


 謁見所のアンバーの前に膝をついたのは和かな笑顔の若い男だった。


「して、お主はどういった物を売りに来たのだ?」


「はい、こちらに。もし気に入って頂ければ是非……」


 男が車輪の付いた大きめの鞄を開けて取り出したのは、大量の本だった。


「む……本か。見ての通り俺はあまり本を読むようなタイプではなくてな」


「ふふ、皆さん最初はそう言われますが試しにいくつか読んでみてくださいよ。そんなに難しい物ではありませんので、きっと気に入ると思いますよ?」


 男は狐のような目を細めてニコリと笑って本を差し出した。



 ★★★



 翌日――街中の宿。

 ラヴィーンに行く準備を万端にし、俺とアークは宿を出た。セリオンの首都は旅人向けの店も沢山あり、必要な物は粗方買い揃った。


 もっぱら必要なのは食料と……俺の服とか防具なんだが。


「……ジェド、よく似合っているぞ……」


「……」


 アークは笑いを堪えていた。

 というのも、売っている子供用の服や防具がことごとく可愛らしいふわふわの猫耳の付いたツナギや毛皮がモコモコの手袋やレッグカバーばかりだった。獣人の国の子供用だからなのか毛皮が特産だからなのか……


「まぁ、竜族は人間にあまり良い感情は無いみたいだし、そうしていると獣人の子供みたいで良いと思うが」


「……もうこうなったら何でも良いや。所で、獣王の送ってくれる人って何処にいるんだろうな」


「宿の近くで待っているはずだが――」


 アークが誰かの思考を読み取ったのかそちらを向いて硬直した。


「?」


 俺もそっちを見ると、そこには見覚えのありすぎる人が装備と旅支度を完璧にして準備万端で待っていた。


 そこに居たのはライオンの立髪のような髪、ムキムキの筋肉。

 ……どう見ても昨日見た獣王アンバー・ビーストキングその人だった。何故か目の下にクマがあり、眠そうなのだが……昨夜何かあった???


「ジェド、アーク、待ってたぞ。さ、行こう」


「???? え?? えーと、ちょっと待って? 本当に獣王が自ら付いてくるとか言わないよな??」


「その通りだ。俺の事はアンバーでいいぞ、ジェド」


 アンバーは良い笑顔で歯を見せて笑った。……だから、一体何なの???

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