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アンデヴェロプト大陸へ至るゲートは通れない(後編)



 シルバーと2人、白い空間をしばらく歩くと黒い手が見えた。

 黒い手の下にはノエルたんが居たので身構えるが、ノエルたんは驚いた表情でこちらを見る。


「騎士様!」


「ノエル嬢、怪我はないか?!」


「私は大丈夫です……それより、あの――」


「この手が君を拐った犯人だね」


 剣を抜こうとしたが、何故かその手をノエルたんがしがみついて止める。


「ち、違うのです!! 彼女の話を聞いて下さい!!」


「……彼女?」


 そう言われてノエルたんの所にいた手を見ると、心なしか案内してくれた手より細くて女の子らしいと言えなくも……ないような?


「君、人工精霊の言葉が分かるのかい?」


 シルバーが感心したようにノエルたんに聞く。ノエルたんはソラを撫でながら答えた。


「はい……私、この子とお話ししたくて。意思のある者の心を感じ取る練習を沢山したのです。複雑な事は分からないけど、何を伝えたいかは分かります」


 何かノエルたん、普通にソラと話してるなーとは思っていたが……そんな能力があったのか。ソラとお話する為に頑張ったんだね。うーん偉い。かわいい。


「それで、人工精霊は何を伝えたくて君をここに連れてきたのかね?」


「ええと……このゲートの子達には個々の意思が生まれています。他のゲートとは違いこのゲートには沢山魔力が溢れていて、それで成長したそうです」


「なるほど。このゲートは魔法使いが沢山通るから、その溢れ出てる魔力を吸い取ってしまったのか……これは新たな発見だねぇ。聖国も大気に聖気が溢れているから、それで人工精霊が成長していたのかもしれない。そんな不具合があったとはねぇ……すぐに対処せねば」


 やっぱ聖国のゲートの暴走は半分くらい魔塔のせいだったんじゃねーか。いや、8割方聖女が悪いけど。


「人工精霊達はどの程度の個々を持っているんだい?」


「この手1つ1つが個性を持っています。この空間の中で生活し、コミュニケーションを取っていて、その中で男女にも分かれたみたいです」


「それは素晴らしいね」


 シルバーがワクワクした目で見ている。オイ、不具合だぞ?


「彼女はその中で、1番最初に意思が芽生えた人工精霊です。このゲートの中では1番力を持っています。彼女は……夢を見ました」


「夢? 人工精霊が夢? どんな夢を見たというのだね??」


「それは予知夢のようだったそうです。まだ見ぬ先の未来、溢れる魔力が止められず……暴走してしまうのです。必死で止めようとする仲間を消し、悪い精霊となってゲートの外に出てその力を放出するとか……」


 なるほど、悪役人工精霊……か? なるほど?


「ふむ……それは確かにダメだねぇ。予知夢か……人工知能が予測して夢として見た未来かもしれないなぁ。ならば信憑性は高いだろうね」


「……彼女を助けて頂く事は出来るのでしょうか?」


「ふむ、早急に対処しよう。ゲートを通過する者の溢れる魔力を吸い取らないようにすれば良いからねぇ。すぐに取り掛らせるよ」


「良かった! 良かったね!」


 ノエルたんと黒い手(女子)は喜び合った。そして彼女は案内した黒い手(男子?)とも抱き合った。というか恋人繋ぎ? みたいな感じで手を絡め合った。


「……お前ら、恋人だったのか」


「ふーむ、人工精霊が個々を持ちコミュニティを作り、男女に分かれて恋人にまでなるとは……新発見だねぇ」


 シルバーは興味津々で2人を見ていた。

 ノエルたんが彼女にかけよって、持っていたリボンを薬指に結んであげると彼女は喜んでいた。


「しかしジェド、君は噂通りだねぇ。悪役令嬢の類に巻き込まれては解決していくというのは本当だったんだ。何かの呪いか、前世の因果か、はたまたただ運が悪いだけなのか……一度じっくり調べてみたいなぁ」


「……俺は何も解決に役立って無いし何の因果とかも多分無く偶然だから勘弁してくれ。あと、どこからその噂を聞いたんだよ……」


「ん? アレ? 私の事本当にルーカスから何も聞いてないのかい?」


「陛下から……??? 何か聞いたっけ……」


 そんな話をしている間に黒い手が白い空間を切り開くと、そこから景色が半分に裂けてゲート都市とアンデヴェロプト大陸とに分かれた。2つの狭間にいたので新たな景色に足を下ろしアンデヴェロプト大陸に降り立つ。


「凄い……」


 アンデヴェロプト大陸は、大陸全体が魔法に覆われた地であった。

 空にはオーロラが走るのだが、あれは魔塔の魔法使いがかけた他国からの防御魔法なのだとか。

 魔鉱石が採れる山々は様々な色に輝き、遠くに見える魔法都市や魔塔も不思議な造りをしていた。魔塔に関してはどうやって建っているのか謎な感じに一部の建物が浮いていたり稲妻が柱になってたりしている。前衛的なセンスだなぁ。


「魔法学園はあちらだよ」


 シルバーが指差した方には大きな門があり、石造りの古い大きな建物が並んでいる。


 魔法学園はノエルたん位の歳から入学する事が出来て、一応年代によってクラスが分かれているのだが才能ある者は上のクラスへ行く事も出来るらしい。

 全寮制であり、ノエルたんとは長期休みまでしばしお別れである……


「騎士様……ここまでありがとうございます」


「正直、凄く寂しいよ」


「ふふ……帰ったら1番に会いに行きますね」


 そう笑ってノエルたんとソラは一緒に魔法学園へと歩いて行った。

 ソラも使い魔として一緒に入学が認められている。魔王からも、ソラはもうだいぶ成長したので魔法学園位の環境ならば大丈夫だろうと言われていた。ノエルたんの事はソラが守ってくれるから安心だ。


「さーて、俺もそろそろ帰るかなぁ……」


 帰ろうとすると、その肩をガシッと掴まれた。


「いや君、魔塔に用があって来たんだろう?」


 シルバーが困った顔で笑っていた。

 ん……シルバー?


「あ! もしかして魔塔の主人シルバー・サーペント???」


「はぁ……やっぱり聞いているんじゃないか。本当、ルーカスに聞いていた通りアh……いや、面白い子だねぇ」


 シルバーは心底呆れた顔をしてクスクスと笑った。


 魔塔の主人シルバー・サーペント。魔塔を取り仕切る大魔法使いで、様々な魔法や魔術具の開発や研究を行っている……魔法マニアである。



 俺は魔塔の主人シルバーに連れられて、魔塔へと向かった。

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