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ようこそ天獄学園へ~死後の世界で学園生活~  作者: うるさいゲーム屋さん
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第3話 百鬼夜行~逃げられません~

 チカゼは後悔していた。

 こんなことなら大人しく死んでおくんだった。

 今、目の前で防戦一方になっているコモリを黙って見ていることしかできないこの状況を、心から憎んだ。


 コモリは実力者だった。人型の鬼なら敵ではなかった。

 しかし、鬼の中にひときわ異彩の放つ、人型より二回りは大きい鬼が2匹。


 更にコモリはチカゼの施したプロテクトに張り付いた鬼を引き剥がしながら戦っていた。


 限界は近かった。 

 コモリの額は血で濡れ、肩で息をしている。


「はあっはあっ小癪な・・・・」


 プルルルル。プルルルル。

 着信がなった。

 

「何をしている!!コモリ!!」

 チズリ副会長だった。

「っはい!こちらコモリ!只今おびただしい数の鬼と交戦中っ!」

 コモリは副会長と仲が良いのか、少し冗談交じりに応える。


「そんなことはわかっている!逃げろ!お前でもこの数では死ぬぞ!」

「逃げられません!」

「ふざけるな!お前のコア能力【プロテクト】なら、無傷で体育館まで来られるはずだ」

「できません!」

「なぜだ!」


「それだとチカゼ新入生を守りきれません」


「・・・なんだと」

 誤算だった。

 新入生であるチカゼにはまだ『コア』が発現していなかったのだ。

 故にレーダーには映らない。


 完全にオペレーションのミスだった。

 チズリ副会長が、少し早く新入生とコモリの存在に気づいていたら対策は打てた。

 想定外の百鬼夜行は、チズリ副会長に新入生の存在を失念させた。


 しかし、それでもチカゼ副会長の判断は冷静であった。

 非道で冷酷で、悲しい程に正解だった。





「コモリ防衛隊員。生徒会最高軍事司令として命ずる・・・」

「新入生を見捨て・・・・ここから早急に離脱せよ!」


 罪は全てチズリが負う。その覚悟があっての決断であった。



「断る!」



 しかしコモリはそれを一蹴した。

 そしてその瞬間、中型の鬼の巨大な腕が華奢なコモリを軽々と吹き飛ばした。

 コモリは壁に激突し、受け身も取れず崩れ落ちる。


「命令を聞け!コモリ!これは上官命令だ!」

「いやです・・その命令は聞けません・・・・」

「コモリ!頼む聞いてくれ!このままだと、お前ごと死ぬぞ!」

「チカゼさんを見殺しにするくらいなら死んだ方がマシです!」


 コモリは震える手で、落とした長剣を拾い上げる。


 ここで、チカゼが震える喉を酷使し、初めて声を荒げる。

「行ってください!」

「私を!私なんか置いて・・逃げてください!」

 なぜか涙が溢れる。死への恐怖ではない。自分の無力と大切な友人の安否を願っての涙だった。


 コモリはボロボロの体を長剣で支え、ゆっくりと立ち上がる。


「弱者をその鉄の血肉で支え・・・交わした約束に命をかける・・・」

「私が憧れる・・マモル防衛隊長の言葉です!!!!」


「このコモリ!差し違えても守りきってやりましょうとも!それが第2防衛隊としての務め!」

「さあ来なさい!化け物ども!」

 コモリは鬼の群れに刃を向ける。

 ボロボロの彼女を動かすのは、眩いばかりの騎士道精神だった。

 その時だった。


 バリイイイイイイイイイイイイイイイン


 第一校舎二階の渡り廊下の窓ガラスが吹き飛んだ。

 いや正確には、渡り廊下の窓から何かが吹っ飛んできた!


 恐る恐る鬼の方に目をやると・・・・

 

「・・・とおくから・・・ぐうぜんみつけた・・だいじょうぶ?」

 

 中型鬼に2mほどの大きな斧が突き刺さっていた。

 それも二本。

 中型鬼は音もなく崩れ落ちる。


「・・・レアか・・・・・・・よわすぎ・・」

 

 少年だった。小学5年生くらいであろうか。

 130ほどであろう小さく華奢な体で鬼から巨大な斧を二本引き抜く。

 そこにいたのは、およそ巨人向けであろう巨大斧を軽々担ぐ二刀流小学生だった。


「ファング突撃隊長・・・・」

 コモリの顔には、少し安打の様子があった。


入学5年目にして、生徒会最大武力組織、第1突撃部隊の隊長に抜擢された規格外の天才

幼き身体で巨大な武器を振り回す姿はまるで操り人形


彼こそが生徒会直属第1突撃部隊隊長

通称【踊るマリオネット】ファング5年生


「・・・のこるはノーマルいっぱいと・・レアいっぴき・」


とういうや否や、ファングと呼ばれるその少年は、目にも留まらぬ速さで斧を振り回し、渡り廊下中の鬼を殲滅して見せた。


「す、凄い・・」

 一瞬の出来事だった。


「・・・・おまえも・・・ぶじでなにより・・」

 ファングはコモリのプロテクトに囲まれたチカゼに顔を向ける。


「・・あっち・・たいくかん・・・いけ・・」

 巨大な斧で、階段を指す。


「あ、ありがとうございま(ドガアアアアアアアアアアアアアン)」


 悪夢はまだ覚めないようだ。

 コモリの言葉を遮ったのは、ファングが破壊した窓ガラスから覗き込む巨大な眼光。

 そこには、先ほどの鬼とは比べものにならないほど巨大な鬼が二階渡り廊下にへバリついていた。

 渡り廊下のスピーカが鳴り響く。


「大型!大型が出現!これが最後の鬼だ!ファング!やれるか!!」


 チズリ副会長だった。

 それを聞いたファングは、無邪気に目をキラキラに輝かせている。

 

「・・・・・・スーパーレア!・・・きた!」

まるでガラスケースのおもちゃを覗き込んでいる子供のようであった。


「おまえら・・まきぞえになる・・はやくいけ・・・・」


「は、はい!・・・・行きましょう!チカゼさん!」

コモリはチカゼのプロテクトを解除すると、再び手を取り走り出した。


次回 第一章完結 最後の地獄が待ち受ける


人生初めての小説執筆ですが、「お手を柔らかに・・」などどいうつもりは毛頭ありません。

厳しい意見、感想鋭意募集中です。


また、少しでもよい印象を頂けたら、是非高評価をお願い致します。

ツイッター:https://twitter.com/noisy_gameshop


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