第2話 百鬼夜行~地獄の始まり~
この学園が本当の姿を見せる
食事は普通のパンとスープだった。
なんというか、期待してなかったといえば嘘であった。
「さて!昼食も取り終えた事ですし、ちょっと他の教室を案内しますね」
コモリと食事を取った後、チカゼは少し食堂を離れた渡り廊下を歩いていた。
「っとそうそう!大事なコアの説明を忘れていました!」
ぽんっと手首を叩き、コモリは思い出したように話し出す。
「ここの生徒は全員『コア』と呼ばれる特殊な能力を持っています!」
「コアですか・・?」
「はい!戦闘向きだったり、サポート向きだったり。たまに変わった能力が発言する人もいますね!」
なんだかいよいよ頭が痛くなってきた。
「コアの能力やその出力量は個人差がありますが、その人の性格や資質に依存する事がわかっています」
「性格?好戦的な人なら攻撃力が上がったり、優しい人なら回復能力とかそういうやつですか?」
「理解が早いですね!捻くれた人は能力も捻くれたものが多くて、逆に単純な人はシンプルな能力が多いですね!」
コモリさんのコアはシンプルそうだな。といささか失礼な想像をする。
「私はどうですか?特段何も実感はないんだけど・・」
「チカゼさんはまだ入学してばかりなので、何もできないのは当たり前です!」
コモリは優しそうに微笑むと、話を続ける
「コアの能力は自分で発言させるしかありません!チカゼさんはどんなコアが目覚めるのでしょうか!楽し「ブーーーーーーブーーーーーーブーーーーーーー」
その時だった。
急に廊下中、いや校舎中のランプが赤く点滅し出し。もの凄い音でブザーが鳴り出した。 その直後、廊下中に設置されているモニターに目が痛くなるほど真っ赤な文字が点滅し始める。
「百鬼夜行」
「緊急事態!緊急事態!百鬼夜行です!百鬼夜行です!」
無機質なアナウンスが校内に爆音で響き渡る。
「非戦闘民は直ちに体育館へ避難してください。繰り返します〜」
その瞬間。幅にして2.5mほど、直径20mほどのの渡り廊下から、得体の知れない何かが大量に湧き出した。
10、いや20はいるであろう、その人型でいて無機質な、およそこの世の生物とは思えない異形の物体をみてチカゼは確信する。
「・・・・・・鬼」
「こっちです!!!!!!」
頭が状況に追いついていないまま、チカゼはコモリに腕を掴まれ走り出す。
その鬼気迫る横顔に、先ほどの元気で笑顔のコモリはもういなかった。
鬼の縫い目を掻い潜るように渡り廊下の先を目指すが、階段を5mほど前にして、鬼に阻まれる。
他の鬼より、一際大きい鬼だった。
「・・・・・・・・くっ!」
彼女の判断は早かった。
コモリは私を渡り廊下の端に押し倒す。
「プロテクト!」
突如チカゼの周りが透明な光の膜が覆われる。
「・・・・コモリさん!これっ!」
「私のコア能力です、バリアを貼るだけの単純効果ですか、強度は保証しますよ」
プロテクト。空間や物体にバリアを付与し、攻撃を弾き返す事が可能。単純で仲間思いなコモリの性格を体現したコア能力。
この危機的状況で、チカゼは震えて動けなかった。
見た事もない化物に自分たちの命が狙われているという状況が、ただただ怖かった。
怯え切った私の顔をみたチカゼは、一瞬ハッと我に帰る。
そして、その顔をさっきまでのようなハニカミ顔に戻してこういった。
「大丈夫です。私は生徒会直属第2防衛部隊員コモリ。あなたを必ず守ってみせます」
彼女は腰に納められた長剣を引き抜いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時は10分ほど遡る。
そこはおよそ学校の教室とは考えれない程に帯びただしい数のコンピュータとモニター。
中心から円を描くように10名ほどの生徒がコンピューターを制御している。
ここは生徒会本部。またの名を天獄学園総司令部
そしてその中心に立つのは・・・・
「本日の入学生の対応は滞りないか」
凛とした清廉な顔付きと、長い黒髪がたなびく大和美人なこの女性。
彼女こそが天極学園1000人の頂点
現役生徒の最古参であり、この学園の最高権力者。
『天獄の女王』セツゲツ生徒会長 98年生
「ええ。コモリのやつに向かわせてます」
そしてその隣には、鋭く理性的な言葉遣いとメガネから、正に参謀といった風貌をかもちだす女性の姿。
彼女こそが天国学園ナンバー2
本学園の軍事最高司令官
『天獄の頭脳』チズリ副会長 40年生
「そうか、彼女なら問題あるまい」
「すこし落ち着きのない面もありますが・・・正義感が強く後輩想い。適任でしょう」
「やけに彼女をかってるじゃないか」
「どうだか。案外あのテンションについていけず、新入生は煙たがっているかもしれません」
「普段のキミのようにか?」
そんな取り留めない話をしていると、突如としてオペレーターの一人が声を挙げる。
「副会長!第一校舎2Fに未確認生体反応アリ!鬼です!い、いや1F、第二校舎3Fにも・・・・まだまだ増えます!!こ、これは・・・・」
ピコピコピコピコと学園敷地内の生体反応を投影したモニターが瞬く間に真紅に染まっていく
「こ、これは・・・・」
「ひゃっ百鬼夜行です!!」
「馬鹿な!前回の百鬼夜行からまだ1ヶ月だぞ!!」
副会長が声を荒げる。
「だが、事実だ。」
セツゲツ会長が冷静に、そして静かに言い放つ。
⑧百鬼夜行・・天獄学園はおおよそ1年に1度の間隔で、大量の鬼が同時発生する。
徒党を組んだ鬼は通常時より獰猛さが増し、危険度が上がる。
場合によっては数十%の生徒が命を落とすこの学園最大の厄災。
「総員配備にかかれ!非戦闘員は体育館へ避難!警察部隊と防衛部隊は非戦闘員の誘導!突撃部隊は鬼どもの殲滅にかかれ!一人も死なせるな!」
副会長の指示が開戦の合図となる。
「体育館の守りは如何しましょう!」
「マモル防衛隊長に現場の指示に任せる。奴に任せれば悪いようにはならん!」
ここで何やらソワソワしているセツゲツの様子に気づく。
「会長はここで待機です。あなたが出れば、生徒にまで被害が及びます」
「か、加減出来ているつもりだ」
「ダメです。あなたはこの学園の最後の砦。ここ待機していて下さい」
「・・・・わかった」
数分後・・・
「副会長!鬼の密集箇所に一人分のコア反応が!逃げ遅れです!」
「どこだ!」
「第一校舎二階渡り廊下!敵の数およそ20!そのうち中型3体!囲まれているのは・・」
「コモリ防衛隊員です!」
「クソっ!彼女まで通信を繋げ!」
次回、絶体絶命の危機にコモリたちは!?
人生初めての小説執筆ですが、「お手を柔らかに・・」などどいうつもりは毛頭ありません。
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