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出会いⅡⅠ

「あー……、俺が打ち込んでる物が暫く出来なくなっちゃって、本でも読んでみようかな、と」


「それは大変!何かあったんですか!?大丈夫ですか??」


「大丈夫大丈夫、暫くの間だけだから。それより何かおすすめの本とかある?」


私の勢いに驚いたのか、男の子が苦笑しながら言う。



いけない、本人より私が取り乱してどうするのよ。


おすすめの本か……。

高校一年生の男子って何を読むんだろう?ナルニア国物語?幼いかな…宮澤賢治?取っ付きにくいかな。どうせなら元気になる本を読んでほしいし。えーっと、えっと……


「あ、そんな真剣に悩まなくても大丈夫だよ、」


「えっと…

あっ!」


目に付いた本……いや、辞典をカウンターの、机に乗せ、男の子に見せる。


「……国語辞典?」


「そう、新明解国語辞典!

これ、とっても面白いんですよ!」


そう言うと、男の子があっけにとられたような顔をした。


「面白い?」


「そう!例えば、公僕の説明。カッコ書きでただし実状は、理想とは程遠いって書いてあるの。なにか恨みがあるのかっておもっちゃうよね。

あと、魚……例えばひらめを引くと、説明の後に美味って書いてあるの。そう書いてあると逆に書いてない魚はまずいのかと思っちゃったり。

他にも、右の説明で一般の人が箸や金槌を持つ方って書いてあるの。じゃあ左利きは異常なのか、そもそも金槌なんて普通は持たないとか考えちゃったり。因みに新しいものだと一般の人が多くの人に変わってるんだ、クレームが来たのかもね。

新明解国語辞典は他の辞典よりこういうちょっとした面白さが詰まってて読んでると面白いの!」



一息つき、はっと我に返った。

お薦めの本を聞かれて辞書を薦めるとか、どれだけ変人なのよ、私は!


恐る恐る男の子を見ると、案の定がぽかんとした表情で私を見ている。


「ご、ごめん!辞書薦めるなんておかしいですよね!」


「あ、いや、ちょっと圧倒されただけ。おもしろそうだし、借りてみようかな?」


「気を遣わせちゃってごめんなさい……」


あぁー、もう、なんで私はこうなんだろ……。

もうちょっと気を遣えてもいいじゃない!


「えっと、どうやって借りればいいのかな?」


「あ、えっと…」


借り方を説明しようとして気が付いた。


「辞書って貸出禁止なんだった……」


「あぁ、確かに家の中学も辞書は貸出禁止だったかも」


もう、本当に何で私はこうなんだろう……


「本当にごめんなさい!!!」


「いやいや、全然大丈夫」


「…もしかして、心なしかホッとしてます?」


あんまり残念そうじゃない男の子に言ってみる。


「そ、そんなことないよ」


「本当は?」


「……重いもの持ち帰らなくていいから良かったってちょっと思ってる」


「もう!」


顔を見合わせ、笑い合う。


「でも、面白そうだなって思ったのは本当だよ。聞いてて面白そうだったもん」


「本当!?嬉しいです!面白いから、今度時間があるときにでもぜひぜひ読みに来て」


「わかった、今度来るね。今日はどうしようかな。他にお薦めある?」


「んー……ハリー・ポッターとか、ですかね?」


「あ、懐かしい。小学生の頃読んでたなぁ」


「あれは幾つになって読んでも面白い、不朽の名作ですね」


「成程、じゃあそれ借りて帰ろうかな。……出来れば文庫本で」


「ハードカバーだと辞書と同じになっちゃいますもんね」


また笑い合う。


「えっと、そこの引き出しにクラス順に図書カードが入ってるから自分の出席番号のを取ってくれますか?」


「おっけ。

はい、お願いします」


「ありがとうございます」


カードを読み取り本のバーコードも読み取って貸出期間表示のスタンプを押す。


「貸期間出は2週間です、延滞はしないようにお願いします」


「了解です。ありがとう」


「いえいえ、読み終わったら感想聞かせてくださいね」


「了解、んじゃまた明日来るね」


「はい、ではまた」


「ばいばい、委員会頑張ってね」


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