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出会いⅠ
君と初めて会ったのは、鮮やかな青葉がよく映える5月だったっけ。
その日、図書委員当番だった私はカウンターにいた。
高校の図書室は知る人ぞ知る秘密基地みたいな感じで、あまり沢山の人は来ない。
いつも来る人は決まってるから、皆ちょっとした顔見知りだ。
その時、私は2年生の紬先輩の貸出と返却手続きをしていた。
「この本、どうでした?」
「いやー、やっぱり描写上手いよね、1ページ目から惹き込まれちゃった」
「ですよねー!私も読み返そうかな」
「良いんじゃない?この本は何度でも読めるわ。」
「ですね、今日借りよっと」
「じゃあ今日はこの本借りてくわ。」
「はーい!では、また明日」
「はいはい、じゃあねー」
帰る先輩にお辞儀をし、カウンターの席に座る。
そして、せっかくだから、とさっき紬先輩が返された本をいそいそと開く。
と、その時、
「お邪魔します。」
という声と扉の開く音がした。