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シーカーズ ~大器晩成魔法使いの異世界冒険譚~  作者: 霧島幸治
第一章 キュレム王国編 前編
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第5話 王国・世界の現状

 キュレム王国ーーこの世界に存在する七大陸の内の一つ、イニティム大陸というところの北西部に位置する大国。そして俺達は今、そのキュレム王国の王都シトロンにいる。


 内陸部にある国のため大規模な水産業は行えないが、豊かな土地に加え、農業・商業・牧畜等により国の財政は潤っていた。更に、王の政策により軍備に関しても余念は無いという。




 この世界はやはり俺達のいた世界とは異なるものであるらしく、世界地図を見せてもらったところ、大陸の数も形も大きさも地球とは全く違っていた。

 地球では太平洋を半円状に囲むように四つの大陸が存在していたり、同じ大陸という名が付いてはいても大きさは見事にバラバラだったりした。何より、地球は陸と海の割合が三対七であるため、地図上でも陸より海の方に目が行きやすい。


 だが、この世界はそれほど大きさに差の無い六つの大陸が、運河のようなものを挟んで隣接し密集しており、少し離れて北極に当たる位置に一つ大陸が存在していた。

 そして海に関しては、大陸間の接している場所以外に出来た大きな隙間を埋める分と、六大陸と北の大陸との間に挟まれたように存在している分、それと六大陸の南側に存在する分のみであり、陸と海の割合は五対五といったところだ。


 こんなんで水の循環とか大丈夫なのかと思うところだが、各大陸には河川が多く、また生活用水には水の魔法を使うことも多いらしく、それで上手く補われているのだろう。



 そう、魔法。やはりというか何というか、この世界は俺達の世界と違い魔法が存在する。


 大気中に存在する魔力を吸収及び使用し、詠唱を用いて現象を起こす魔法に、魔法陣を描きその内容を発動させる魔法。ファンタジー世界お馴染みのものであり、人々は普段魔法を使い快適に過ごしているのだという。

 また、大抵の国は修練を積んだ腕の立つ魔法使いを集め、魔法師団なる国直属の部隊を作っており、ここキュレム王国も勿論その例に漏れない。




 そんな国が何故俺達を召喚したのか。実はこの国、南北西の三方は国で囲まれているものの、東にはグレイス平原という名の広大な大地が広がっている。そして、そこから襲い来る魔物や魔族の被害に悩まされていた。


 魔物というのはこの世界特有の生物であり、既存の生物のように実に多種多様な姿をしている。総じて狂暴かつ好戦的であり、人間や家畜を頻繁に襲う。町から町へと移動する際に魔物と遭遇し、そのまま命を落とす事は日常茶飯時だとか。


 そして魔族というのは魔王の配下であり、魔物と共に時折人間を襲っている。強力な魔法を操り、身体能力も高い。短時間なら背中に携えた翼で飛行も可能とのことで、単体ならまだしも集団が相手だとかなり厄介な存在となる。

 加えて並の魔物なら操り配下に置く能力をも持っており、国を襲撃する際は必ずと言って良いほど魔物の軍勢を伴うので、決して少なくない被害が出るらしい。



 そう、魔王ーーそれこそが、俺達がこの世界に呼ばれる原因となった存在。魔族の頂点に君臨し、魔族や魔物を自在に作り出す能力を持つ存在。大昔に一度封印されたものの三百年程前に復活し、世代を変えながら魔物を生み出し続けている。


 ……と、文献には書かれているらしい。調査結果とかの記録みたいにはっきりしたやつじゃなく、王家に伝わってる系の本当かどうか分からないやつ。どうやらいくつかの証拠によりいること自体は分かっているのだが、誰も姿を目撃したことは無いのだという。


 それもそのはず。そもそもの話魔王は人間達が住まう六大陸側にはおらず、北極にあたる場所に位置する大陸、その奥地に住まうとか。

 大陸の名はガズ大陸。魔大陸と一般的に呼ばれ、大陸内部は魔王が作り出した魔物達が数多く存在し、高位の魔法使いですら入ったら最後命は無いとまで言われている。実際各国の調査隊が幾度となく壊滅させられており、加えて環境も厳しいため魔王討伐とかそれ以前に調査が進まないのである。そりゃ見つかるわけ無いわ。



 ただ、今言った通り存在を裏付ける証拠はある。


 一つ目は魔族の証言。戦いの際に捕らえた魔族は揃ってすぐに自決してしまうのだが、最後の言葉として必ず魔王を称えるセリフや魔王に対しての謝罪を口にしてから死んでいくという。また、戦闘中に魔族本人が魔王の命で人間を滅ぼしに来たと口にしたこともあり、それがかなりの決定打となっているそうだ。


 二つ目は魔族の増加傾向。魔王は三百年前に復活したわけだが、魔族が六大陸で人々を襲い始めたのも同じく三百年前なのである。このことより、復活ののち魔族を次々に生み出し、ガズ大陸から海を越え六大陸に送り込んでいるのだと考えられている。


 三つ目は魔物の増加傾向。魔物の中には海を楽々と越える程巨大で強大な個体がおり、魔族や並の魔物はそれに乗って海を越え、そののちに侵略や繁殖を行っていると見られている。そして、この海を越える個体の数が三百年より以前と以後で大分違っているのだという。


 実はこの強力な魔物、過去の記録によるとそれよりも更に数百年も前から時折海を越え六大陸の国々を襲っているのだが、その力は並の魔物とは到底比べ物にならない。数体で一国の武力と同程度、ものによってはたった一体出現するだけで国が壊滅状態に陥る。

 実際、ガズ大陸側の沿岸の国や街はとうの昔に滅んでおり、とても人が住めるような場所ではなくなっているという。この事より海を越える力を持つ個体は出現すれば大抵国が終わるとされ、災厄を降らせし者(エンズ)という通称で呼ばれている。



 ここキュレム王国はそんな国すら滅ぼす者も混じった大量の魔物とそれを率いる魔族の襲撃を度々受け、その度に撃退するというのを繰り返して平和を保ってきた。しかし相手の戦力が増大している故年々被害は増しており、この国は財政自体は未だに豊かであるものの、軍事関係においては既に限界レベルであったとか。


 魔法使いの育成もそこまで急ピッチで進められるわけではなく、他国から戦力を買うことも出来ない。何故なら、魔族や魔物の被害というのは世界中で起きていることだから。


 魔族達は北の地から海を越えやってきているので、確かに北に位置する国が一番被害が酷い。だが襲撃が始まってから三百年も経っているのだ、今や魔族の被害は世界中に広まっており、どこもかしこも戦力不足なのは変わらない。


 ということで、自国で全て何とかするのは不可能、他国に多大な援助を期待することも不可能。金を積んでも解決出来ない状況に、八方塞がりになりかけていた。そこで、俺達が異世界から呼ばれたってわけだ。



 召喚魔法ーー世界各国の王家に伝わる秘術で、古代魔法という現代の魔法とは根本から仕組みが異なる謎の魔法。膨大な魔力により次元の扉をこじ開け、異世界のとある範囲と空間を繋ぎ、その範囲内に存在する人間を強制的に呼び寄せるもの。


 使用中異世界側では範囲内と外との境界線に人間が存在しないタイミングで発動し、発動後までの間、その範囲はそこの世界から一旦空間を分け隔絶されるらしい。教室のドアに触ることが出来なかったのはそのためか。



 過去にいくつかの国が勇者を召喚し、その誰もが強大な力を誇り、魔族達の討伐や国の防衛に貢献したという。その事実を元に、文献に記された情報を使ってキュレム王国も()()()()()()召喚魔法を使用し、結果俺達が召喚された。



 召喚魔法にはリスクが存在する。国王曰く、使用中は常に魔力を注ぎ込まねばならず、魔力が切れるまでに成功しなければ停止と同時に溜まった魔力が周囲に襲いかかり、魔法の使用者及び補助動員、つまり行使に携わった人物全員に被害が行く。


 特に使用者には到底耐えきれぬ程の負荷がかかり、良くて無期限の昏睡状態、悪ければーーというか、大抵は即死する。そして、昏睡状態になった者もいずれ衰弱し死んでいく。


 実際過去に他国でも死者は出ており、この国でも一年前第二王女だったキャシーという人物が召喚を行い失敗した。結果昏睡状態となり、魔法も交えた治療を試みたものの目を覚ますことは無く、二週間後死亡したとのこと。



 ……この世界の魔法がどんなもんか知らんが、魔法使ってでも治らん無期限の昏睡って、それ眠ってるんじゃなくて脳死か植物状態になってないか?


 そんなもんに王女参加させんなと再度思ってしまうが、どうやら召喚魔法は文献通り何故か王家に名を連ねるものしか使用することが出来ず、それ以外の人物がやっても反応すらしないらしい。補助として魔力を供給する人員は王家の者以外でも良いらしいが。


 要するに召喚魔法とは、成功すれば国を救ってくれる希望の光、失敗すれば家族である者を無駄死にさせると同時に王家の血筋が途絶える可能性を引き上げる悪魔の業と化す、というわけだ。



 それ故大半の国々の王家は召喚魔法のデメリットの方に目を向け非人道的として禁術に指定し、文献に関しても封印するか処分している。そうしないのは決まって魔物の被害が大きく最早形振り構う気を無くした国であり、ここキュレム王国もその中の一つ。


 だからこそ、召喚が今度こそ成功したことに、国民達も喜んでいるだろうとのこと。既に使いが出され、これから各所に召喚成功の旨が伝えられる。



 加えて、記録によると過去の召喚において一度に呼ばれたのは多くとも十人らしいが、今回の俺達はクラス一つ分の三十二人。こんな多くの人間が呼ばれたことは無く、召喚の場所に居合わせた者達も、最初は驚きもしたものの魔王を倒せる可能性が増えたことで喜びが増した故、皆思わず歓喜の声を上げたらしい。


 そう、魔王を倒すーーそれこそが俺達がここに呼ばれた一番の理由。長々と説明されたが、要は対処しきれなくなったから代わりに命懸けて戦ってくれってことだ。平和を維持してくれるだけでも万々歳なものだが、戦力は多いわけだし是非とも魔王を倒して世界を救ってくれると助かる、という風な事を語っていた。



 尚、元の世界に帰る方法だが……少なくともそれに関する魔法は六大陸には伝わっていない。ただ、召喚魔法のことが詳しく記された文献に帰還のことについても記されているらしく、文献曰く復活した魔王が帰還に関する秘密を握っている、とか何とか。魔王を倒すことが出来れば、無事元の世界に戻ることが出来るだろうとのこと。


 その言葉に対し、表情が少し明るくなる者や、尚不満そうな顔を見せる者達がいる中、佐々木だけがため息を付いていたのを俺はまたも見逃しはしなかった。



 ーーー以上のことが、国王との対話で知り得たこの国や世界の現状だった。

召喚魔法失敗時の時の昏睡は、物語の中で語られることはありませんが完全に植物状態です。魔力が逆流して脳の大部分がやられる感じ。


後々分かりますが、この世界には点滴など存在しないので、魔法と介護で何とか栄養補給を行う感じです。それでも意識が無い以上食物も殆ど取り込んでくれないため、栄養が足りず衰弱死するというわけ。




では、今回は以上となります。

誤字報告や表現がおかしいところなど、もしありましたら指摘して下さると有難いです。

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