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シーカーズ ~大器晩成魔法使いの異世界冒険譚~  作者: 霧島幸治
第二章 キュレム王国編 後編
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第20話 昇格

「……道理で冒険者達が全滅するはずだ」

「一部はロックワームに潰されて、残った奴らは散り散りになった後に魔物達に殺されていった、っていう感じなんだろうな。じゃないと防具が残ってゴブリン達に回収されるはずがない」

「そういうことだな。全く、いつの間にあの森も随分と危険な場所になったもんだ」


 ギルドに戻った俺は、前回と同じく調査の報告を行っていた。時刻はまだ夜の六時頃だったので、多忙なはずのクルツの手が空いてるかどうか微妙だったのだが、俺が帰ってくるのを今か今かと待ち構えていたらしく案外スムーズに事を運ぶ事が出来た。


 こんなに早く帰ってきたのは勿論能力生成(スキルメーカー)のためである。今日は定期報告の期限日なので街に戻ってこなければならず、かといっていつも通りの時間かつロスを無くすようにすると、夜の街のど真ん中で発動し隙を晒す事になる。


 いくらなんでもそれは危険すぎるので、仕方無く早く帰ってきた次第である。おかげで洞窟を早朝に出る羽目になり、更には父狼に森の出口付近まで送ってもらうという、とんだ迷惑をかけることになってしまった。

 それを言ったら「気にするな」みたいな感じでポンと肩を叩かれたが、そういうわけにはいかないのである。直に何かしらの形でお礼をさせてもらわねば。



「というか、無属性である君が良く勝てたな。どうやってやったんだ?」

()()別に特別な事はやってないぞ? 大剣振りまくって甲殻破壊して、滅龍刃で止め刺しただけ」

「それだけでいけるはずないんだが……」

「あー……まあ、色々と運が良かったんだ」


 嘘は付いてない。実際俺がやったことなんてそれだけで、ヘイトの分散とか大幅な削りとかはヘルハウンドがやってくれたわけだし。そもそも運良くあいつと出会えていなければ、俺は確実に負けていただろう。



 尚、ヘルハウンドに関しては今は伏せる事にした。会って一週間、しかも人間ではなく野生動物と意思疎通して共闘したなんて言っても信じちゃくれないだろうし、もし言ったとしたらそれはそれで「じゃあどうやってこっちの言葉を理解してることが分かったんだ」っていう話にもなってしまう。いくらクルツと言えど、鑑定眼や能力生成(スキルメーカー)の事を話すわけにはいかないからな。


 更に、最悪の場合ヘルハウンド一家の討伐依頼が下ってしまう可能性がある。俺はあいつらが人に無闇に危害を加えることはほぼ無いと分かってるが、無論他の人間はそうは考えない。俺の言葉は一人の冒険者の戯言として切り捨てられ、Aランクの魔獣という危険因子として処理する道を選ぶだろう。



 そんな展開、俺は望んではいない。敵対する奴や害しか生まない魔物なんかが死んでも何とも思わないし、むしろこっちから殺しに行くところだが、殺意も向けて来ず危害も加えてこないのに一方的に決めつけて殺しにかかるとか胸くそ悪すぎる。


 それに、一応だが俺はあの家族を救ったことにもなっている。そんな奴らが、間接的とは言えよりにもよって俺のせいで死ぬとか、どんな笑えない話だってことにもなってしまうからな。さっき言った礼の事もあるし、下手に漏らしたりはしないっていうのは予め父狼にも言ってある。



「ふーむ……納得は出来ないが、まあそういうことにしておくか。確かに君のあの技なら仕留める事も普通に出来るだろうからな。勿論、当たればの話だが」

「そこも()が良かったな。終盤へばってくれて助かったってとこだ。……ところでちょいと聞きたいんだが、何でロックワームがAランクなんだ? あんな魔法も満足に通らんかってぇ奴が、例えパーティ組んだとしてもそこらの冒険者に倒せるとは思えないんだが」

「ああ、そのことか。そこら辺は何とも難しくてな……」


 クルツ曰く、ロックワームは通常レベルの魔法では大した影響は与えられないが、強力無比な精霊魔法だとそこまで難しい相手では無いらしい。クルツも昔戦ったことがあり、近距離では無理だと諦めて遠くから魔法でボコボコにしたのだとか。



 現在世界でSランク冒険者は六人いるが、その全員が実は精霊使い。つまりSランク全員がロックワームを軽く打ち負かせるということであり、それ故討伐難度をSランクに設定するのはちょっと……ということらしい。

 まあ主な攻撃方法も突進だったり凪ぎ払いだったりと物理的なものだから、岩石飛ばしを防げさえすれば遠距離から一方的にハメられるわけだしな。その気持ちは分からんでもない。


 ただ、Aランクでは討伐することが難しいのも事実。というわけで、ロックワームは書物の中ではAランク、冒険者間ではAランクプラスのような扱いになっている、とのこと。そういうのはもっと早く知っておきたかった。



「成る程。素材の詳細をアンタから聞かれて答えた時、受付嬢じゃなく自分に直接渡すように言ってたのはそのためか」

「そうだ。あそこで出したら確実に騒ぎになるし、君はFランクである以上遠くの依頼を受けるはずもない。そうなると、スラーンドの立ち入り制限と結びつけてあれこれ吹聴する輩も出てきそうだったからな」

「それは駄目だな。一応この調査は秘密のものっていう扱いなわけだし、本格的に終わるまで実情を知られるのはマズい」

「ある程度勘づいているものもいそうだが……まあそれは仕方無い。ともかく、良くやり遂げてくれた。これは報酬だ」


 そう言って、クルツは脇に置いてあった金の入った麻袋と、懐からあるものを取り出し俺に手渡してくる。それは綺麗な青色をした一枚のカードであり、俺の名前とEという文字が刻まれていた。


「……Eランクのギルドカード?」

「うむ。どうせ達成するだろうと思って、前もって作らせていたのだよ。君ほどの実力者が低ランクに留まっているのもおかしな話だからな。……本当は一気にBランク辺りにでも上げてしまいたいところなのだがなぁ」

「ランクアップは一度につき一つのみ、なんだっけか? 規則で決まってるなら仕方無い」



 クルツの家に泊まっていた時にギルドランクについて色々聞いたのだが、その時にこの昇格の規則を知ったのだ。例えどんな実力を持っていて、またどんな功績を上げようとも飛び級はさせず、必ず昇格は一つずつ、と世界中の冒険者ギルド内で決まっている。


 ケチくさいなぁと文句を垂れたいところだが、柔軟さに欠けている一方で一応理には叶っている。飛び級という事は本来通るはずだったランクをすっ飛ばすことであり、つまりはその課程で得るはずだった経験を無しにしてしまうということでもある。


 常に不測の事態が発生し得るのが実戦というもの。だが、どれほど実力を持っていようと経験が無ければそういった事には対応出来ないことも多く、最悪の場合命を落としてしまう。


 ギルド側はそれを防ぐため、ひいてはひたすら経験を積ませるために飛び級を禁じているわけだ。俺が登録した際のFランクスタートの制度もこれの影響を受けて作成されている。でなければ、クルツを倒した俺ならばもっと上のランクから始まっていてもおかしくはないしな。



「だな。だから、早いとこ次の功績を立ててどんどんランクを上げてくれ。その方が私としてもスッキリする」

「言わずもがなだ。……あ、そういやもう一つ聞きたいんだが」

「おお、何だ?」

「あの森の扱いはどうなるんだ? まず初心者の狩り場ではなくなるとして、BランクやCランクがゴロゴロいるんじゃ普通に依頼を出すことも難しくなるはずだ。そんなん無駄に死人を増やすようなもんだしな」

「今は何とも言えん。立ち入り制限は続行するとして、他国のギルドとも情報交換を行って検討していかねばならんからな。私が何か考えたところで、それがそのまま実行されるわけでもないわけだし。まあでもーー」


 ここまでは予想通りの答え。だが、続くクルツの言葉に俺は驚きを隠せなかった。



「国の騎士団と魔法師団に要請して、ローラー式に蹂躙していく形になるんじゃないか? ギルド側でも希望者を募って、()()()()()動物も魔物も殲滅していくことになるかと」

「ッ! ……そうか」

「ああ。ゴブリン程度ならまだしも、国に近い場所に強力な魔物を蔓延らせるわけにはいかないからな」


 一匹残らずーーそこには当然あそこに住むヘルハウンド一家も含まれるだろう。てことは、このままではあいつらも殺されてしまう。


 いくらあいつらでも返り討ちにしきれるわけがないし、逃げ出したとしても退路を塞がれてグレイス平原に追いやられる可能性が高い。そうなれば、今度こそ命は無いかもしれない。子供を庇いながら日々魔物と戦わなきゃいけないわけだし。

 マズい、どう考えてもマズい。



 ……いや、焦るな。検討中なんだから、まだもうしばらくは期間がある。それまでにこの事を伝えて、何としてもあの森を去ってもらわなければならない。


 従魔にでもなってもらえれば一番手っ取り早いのだが、俺はあいつとは上下なんて関係を結びたくはない。一方的に自由を縛ることもしたくないし、早目に移住してもらうしかないな。追い出すみたいで心苦しいが、こればっかりは仕方無し。



「……ふむ。それなら、全部なくなる前にこもるとしようかな。せっかく色々経験が積める場所なわけだし」

「確かに、君から見ればあそこは絶好の狩り場だな。それなら是非とも行くと良い。まだランクが低い以上、殲滅作業が終わってしまえば遠出する以外に強い相手とは戦えないだろうしな。……良し、調査任務改め殲滅任務を君に課すことにしようか。ちゃんと報酬も出そう」

「え、良いのか?」

「勿論だ。魔物を倒せるなら、それに越したことは無いわけだしな。ただし、期間は本格的な作業が始まるまでというのと、生きて帰ってくること。この二つを約束してくれ」

「了解した。明後日にまた来るから、本格的な内容はそこでまた決めようか」

「うむ、引き続きよろしく頼む」


 おし、これで森へ立ち入る口実は出来た。後はもう一回一家を探して話をつけるだけだな。


 ……まあ、何日かかるのかは知らんけど。森の中なんて大抵どこも同じ景色だし、時間的にほんの少し前に通ったばっかならまだしも、一日以上経ったのならルートを正確に見分ける事は出来まい。背に乗って帰ってきた時も、しがみつくのと気配を感じ取るのに集中してて周りはほぼ見てなかったし。



 ちなみにだが、戦闘中に感じていた痛みはもうすっかり消えている。元より岩壁に叩き付けられたのを無理して動いてああなっただけだし、常人ならともかくある程度休めばほぼ全回復してくれる。こういう時復活が早い体は便利だよな。



 翌日の午後、俺は書庫で作業を行っていた。と言っても、今までやっていた仕分け作業とは少し違う。今俺の目の前には、既に仕分けが終わった本が山のように積まれている。


 その内の一つを手に取り、他の本と内容が被っていないページを開き、一旦目を閉じ意識を集中させる。そして異能を発動し、書かれた内容を覚えるーーのではなく、目に映った光景そのものを脳内に刻み込んだ。



 映像記憶。発動中視界に映った情報をそっくりそのまま保存する能力であり、通常の記憶とは違い以後永久に忘れる事は無いという極めて優れた記憶系能力である。


 モデルは勿論、現実に存在する映像記憶能力保持者や完全記憶能力保持者達。彼らは過去の僅かな時間に目にした情報を正確に思い出す事が出来たとされ、これはそれを再現した形になる。



 膨大な数の本がある書庫の情報を短期間で全て入手するには、この能力は必要不可欠。そのため、作れた事自体は嬉しいのだが……それを手放しに喜ぶ事は出来ない。何故なら、この能力は長所がイコール短所にもなっているから。


 どういうことかというと、忘れる事は無いというのはつまり、無駄な情報を消して整理するという作業が取れない事を指している。全てを一つの情報ではなくあくまで映像として記憶する以上、情報を得たいならまたその中から頑張って探していかなければならない。


 簡単に言えばこの能力は、消去不可能なPDFファイルを大量にダウンロードして溜め込むような感じなのである。そして知りたい時には、それを一個一個開いて詳しく見ていく事になる。



 普段の落ち着いてる時ならまだ良い。しかし、戦闘中に情報を引き出さねばならなくなった時、意識がそっちに割かれるというのは大きな隙にもなりかねない。似通った情報がいくつもあったらもう発狂もんである。


 ここに来る度に一冊一冊流し読みして情報を整理していたのはそのため。後から消すことが出来ないのなら、始めから覚えるべき量を減らそうということだ。調査が入ったせいでまだ全然進んでいないが、まあ頑張れば二ヶ月弱で終わってくれるだろう。



 異能のオンオフを繰り返しながら、休憩を挟まず作業を続けていく。次に手に取ったのは魔法陣魔法の本。今まで覚えられなかった上級や特級の魔法陣も、映像記憶のおかげでどんどん頭に入ってくる。


 細かい紋様の陣はとてもではないが何度も何度も書かなければ覚えられず、見ただけで実戦に用いる事は出来ない。しかし、ここは筆記用具持ち込み禁止なのでその希望は叶わない。なので、昨晩映像記憶を作るまで、ずっと歯痒い想いをすることになった。



 勿論、それがあるからこそ自由な立ち入りを許可されているというのはあるんだろう。もし仮に俺が情報を漏らしたとしても、人間が書きもせずに覚えられる量なんて限界があるから、そこまで多量の情報が外に出る事は無いからな。


 しかし、おかげで良さそうな魔法に限って使う事が出来なかった。もしそれが出来ていれば、先のロックワーム戦だってもう少し有利に運べていたかもしれない。



 ……じゃあもっと早く映像記憶作れよって?勿論そうしたいのは山々だったし、本来こいつは二週間前に作るつもりだったのだが、調査(あんなこと)があったから予定を変更せざるを得なくなったのだ。Aランクがいる可能性が高いと分かっていた以上、まず戦闘用の異能を一つ作って生存率を高めるのが先だと考え、結果映像記憶は後回しとなった。


 だがまあ、実際そうしていて正解だった。もし映像記憶を先に作っていれば、魔法とかいう以前に岩壁に叩き付けられた時に潰されて死んでた可能性が高い。我ながらナイス判断だと言わざるを得ないな。

 ……というか、そう考えると結構ギリギリだったってことか。今更ながらに寒気がしてくるわ。




 その後は飯を挟みつつ作業を続け、魔法や異能の練習をした後明け方に城を出発した。ーーのだが。


(…………?)

 城門を潜る際、二人の衛兵から妙な視線を向けられた気がした。侮蔑や嘲りが含まれてるのはいつものことだが、これは……監視、か?


 今更何を監視するのだろうかと不思議に思ったが、聞いても俺なんかの質問には答えないだろうし、考えたところで答えは分からないだろうと判断して打ち切った。どうせいつも通りの下らない理由だろうし。


 そんな事よりも、さっさと森に行って一家に例のことを伝えよう。その後はまあ、ゆっくりと魔物狩りでもしようかーーそんな風な事を考えつつ、俺は足を早めギルドへと向かった。




 ……しかし、事態はそう簡単な事ではなかった。今回の一件が、俺の運命をも変える重大な出来事になるということを、のちに俺は身を持って知ることになる。


 だがまあ、勿論そんなことをこの時の俺が知る由も無い。クルツとの話し合いを終えた後、いつもの如く俺は街の中を疾走するのだった。




 --???--



「……そうですか。分かりました」

 衛兵達の報告を聞き、私は思わずため息を付いた。内容は勿論無属性である彼の事で、長期の不在を何度も繰り返しているのだという。全く、余計な事をしてくれるものだ。


「本当に大丈夫なんですか? このままじゃいつまで経っても……」

「そうですよ。それに、睡眠時ですら全く隙が無いって言うじゃないですか。とても順調とは思えないのですが」

「まあまあ、落ち着いて下さい。多少狂いは生じていますが、特に問題はありませんよ。計画は依然進行中、生物である以上いずれ隙は生じるでしょうし、後はそれを待つだけです。……それに、わざわざ我々が手を下すまでも無くなるかもしれませんし」

「ああ、それは確かに。満足に魔法も使えませんし、そろそろどこかの魔物に食われてもおかしくないでしょうね。最近低ランクの依頼の場所に、高ランクの魔物が出現する事が増えてるっていう噂があるみたいですから」

「ええ。ですから、我々はひたすら機を伺うだけです。案外すぐかもしれませんよ?」


 そう言って、三人揃って口角を吊り上げる。そう、むしろそうなってくれなければ困るのだ。我々の計画は、必ず達成されなければならないのだから。


 汚らわしい無属性は排除しなければならない。今までは本人の戦闘力が邪魔をしていましたが、そろそろそれも効かなくなってくるでしょう。



「フフフ……その時の顔が目に浮かびますねぇ。おや、そう考えると魔物には殺されない方が良いのですか」

「別に直に見なくても良いじゃないですか。想像するだけでも十分ですよ」

「二人とも、それを考えるのは終わってからにしましょう。そちらに気を取られて、機を逃すような事があってはいけませんからね」

「そうですね。では、早いとこ準備にかかりましょうか。いつチャンスが巡ってきても良いように……」


 話が一段落し、三人揃って席を立つ。おっと、顔をいつも通りに戻さないといけませんね。こんな嗤い顔は部下の執事達には見せられませんから。



 それから部屋を出て、各々仕事に戻ろうと廊下を進んでいく。すると、曲り角からとある人物が現れた。


「……あなた達」

「おや、レミールさん。これはどうも」

 恭しくお辞儀をする。しかし、彼女はいつもと同じくーーいや、いつも以上に鋭い視線を我々に向けてきていた。


「こちらこそ。……それにしても、珍しいですね。執事長に魔法騎士団長様に騎士団副団長様が一緒におられるなんて」

「ほんの偶然ですよ。特に気にする事はありません」

「……そうですか」

 厳しい眼光を向けながらも、彼女は頭を下げ去っていく。その後ろ姿を見て、ブロディ副団長がふと呟いた。



「そういえば、彼女の孫娘はあの忌々しい無属性勇者の専属メイドでしたっけか。良いんですか、ガランさん? それにあの娘は確かーー」

「仕方無いでしょう。流石にあの娘にはそうそう手を出せませんよ。あくまでこの計画は極秘のもの、その点あの娘が絡むと事が大きくなってしまいますから」

「ああ、確かにそうですね。申し訳ありません、変な事を言いました」


 その会話を最後に、私たちは今度こそ別れ仕事場へ戻っていった。これ以上一緒にいるところを他の人間にも見られたら、何か怪しまれてもおかしくないからだ。



「……さて、ではどうしましょうか」

 計画というのは念には念を入れなければならない。特にこの場合、決して万が一があってはならないのだ。


 さしづめ、もうしばらくしたら他の勇者にも協力してもらいましょうか。いずれ彼らの力も必要になってくる。聞くところによると、元の世界でもシュウヤ・サワタリは疎まれていたようですし、そこまで苦労はしないでしょう。



 ただ、だからといって彼らに計画に中枢を任せたりはしない。例え勇者であろうとまだ十七の若造、そんな者達を使い続ければどこかに綻びが生じてしまう。


 それに、彼らもそう馬鹿ではない。簡単にこちらの誘いには乗らないでしょう。ならば、しばらくは地盤を固める事に専念しましょうか。



「ーー気付いた時にはもう遅い。無属性如きがどれだけ足掻こうが、この世界に生きる道は無いのですよ」

 ククク、と嗤い声を溢しながら廊下を進んでいく。そこに、いつも浮かべているような笑顔は欠片も存在していない。



 全ては国王様のために。シュウヤ・サワタリ、あなたには死んでもらいます。

てことで、もうしばらく森林帯関連の話が続きます。何やら雲行きが怪しくなってきましたが、彼らの計画が修哉に直接関わってくるのはまだ少し先なので、それまでどうか気長にお待ちください。




執筆の励みになりますので、良ければ評価やブクマ等してもらえると嬉しいです。

また、誤字報告や表現がおかしいところへの意見などもお待ちしております。

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