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シーカーズ ~大器晩成魔法使いの異世界冒険譚~  作者: 霧島幸治
第二章 キュレム王国編 後編
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第11話 改善への道

「うーん…………」

 ページをめくりながら思わず唸ってしまう。朝からずっと魔法関係の書物を漁っているのだが、俺のように身体強化(ブースト)を使って一瞬で魔力を使い果たす例は未だに見つかっていない。


 まだまだ残ってはいるが……この分だと残りも同じだろうなぁ。今まで見てきたのだって内容似たりよったりだったし。

 そもそも身体強化(ブースト)は扱える人間が少ないので、そこまで記録が多いわけじゃないのだ。仮にここに世界全ての情報が集まってればもっと多くなるんだろうが、大国とはいえ所詮は一つの国、世界の細部まで追っていけるわけがない。



「あぁ……腹減った。そろそろ戻るか」

 時刻は既に夜の八時を過ぎている。道理で空腹感を覚えるわけだ。

 とは言っても、例のボディチェックがあるので時計を持ってくる事は出来ない。なので、書庫に閉じこもる時は魔力を空にしてその回復量で時間を測るというやり方をしている。鑑定眼はこういうとこでも役に立つよな。


 尚、昨日の夜以来身体強化(ブースト)は一度も使っていない。あんな風になってしまう理由が分からない以上、下手に発動して行動不能に陥る事は避けなければならないからだ。まあ他の無属性魔法を練習することだって重要だから別に良いが。



 そんなわけで、情報の取捨選択が出来た以外に特に成果は無く、結局この日は何も出来ず終わった。やることはやったからまだ良いけど、それでも望んだものが得られる気配がしないというのは中々に落ち込むものがある。




 翌日も、そのまた翌日も書庫にこもり書物を漁り続ける。いつもの作業をしつつ無属性魔法の事を重点的に調べ、昼飯も抜いてページをめくり目を通すことに熱中する。国の歴史も調べ、俺と同じ症例を探していく。

 ……だが、見つからない。どこを見てもそんな事は書いていない。そして、遂に無属性関連の情報を調べ尽くしてしまい、本をパタンと閉じた。


「嘘だろ……どうすんだこれ」

 頭を抱えながら焦り出す。重要な情報が最も集まる王城の書庫にすら解決策は無いーーその事実は俺に深く突き刺さっていた。

 使い方自体は分かっているのだ、だから後は魔力を一気に使ってしまう理由が分かれば良い。しかし、そこがどうしても分からない。ヒントを得られる具体例すら無い。


 昨日の夜、試しに寝る前に一度だけ使ってはみたものの、やはりすぐに魔力を使い果たしベッドに倒れ込むこととなった。全くもって改善していないことは明らかだ。



 どうする……俺はどうすれば良い?

 身体強化(ブースト)はこれからの生活に絶対に必要になる魔法だし、身に付けないという選択肢は俺の中には存在しない。だが、解決の糸口すら見つからないのではどうしようも無い。


(今は……諦めるしか無いか)

 早々に思考を切り替えいつもの作業に戻る。考えても結論が出ないのなら、そんな無駄な事に時間を割く気は無い。

 俺にそんな多くの時間なんて残されていないからな。なら、少しでも多く出来ることをやるだけだ。


 そう考え次の書物に手を伸ばす。こうしてまた、時間は虚しく過ぎていった。




 この日一番成果があったのが何かと言えば、それは情報収集ではなく能力生成(スキルメーカー)による新たな能力だろう。虚脱感の中ステータスを表示し、生成が成功した事に対し強い喜びを感じた。



 名を状態異常耐性。名の通り、状態異常に対し適切な対処を瞬時に行い無効化する優れものである。風邪なら白血球によるウィルスや細菌の即時撲滅、毒物なら抗体生成による排除、興奮や激昂といった精神異常ならホルモン生成により鎮静、といった感じに。


 医療が発達していないこの世界において、重い病気にでもかかったらその時点でゲームオーバーとなる可能性が高い。魔物に襲われ体に毒を入れられたり、負った傷から細菌が入り込んで悪化したりしても同じくゲームオーバー。なので、どうしてもこの能力は欲しかったのだ。




 そして翌朝ーー目を覚ました俺は、これからどうするかを考え続けていた。勿論今日は夜になるまで城から出ることは出来ないので、それまで魔法を練習したり書庫にこもったりすることは変わらないが……今考えているのはそっちではなく身体強化(ブースト)の事である。


 一旦本格的に諦めて、冒険者としての生活の中で奇跡的にヒントが見つかる事に懸けるか、それとも積極的に情報を集めて少しでも早く使いこなせるようになるのを目指すかの二択。感情としては後者を選びたい、だがいつまでも同じ所に止まることは出来ない以上前者を選ぶべき……その二つの意見が俺の中でぶつかっている。



「あーもう、結論が出ねぇ……。まあ当然っちゃ当然なんだけどさ」

 仕方無い、一旦思考の方向性を変えてみるか。どっちを選ぶにしたって、目的を達成するためのやり方ってものがあるからな。まずはそれを考えてみよう。


 前者を選ぶなら、同じ無属性魔法である魔力撃(インパクト)光源生成(ライト)を使いまくってみる……とか? 少しでも魔法に慣れれば、もしかしたら糸口も見えてくるかもしれない。


 後者を選ぶとしたら……どう情報を集めようか。クルツに頼んで情報を集めて貰うのも良いが、あんまり迷惑をかけるわけにもいかないか。なら一番良いのは、また図書館に行ってみてーー



「……図書館?」

 何か引っ掛かる感じがして復唱してみる。すると、ますます何かを忘れている感じが強くなった。

 目を閉じ記憶を辿っていく。何があった、何が起こった、何か変なことは……。


「ーーーー!」

 求めていた記憶に辿り着きハッとする。そして、部屋の隅にずっと放置したままだった紙達を掴み取り、自分が書いた文を良く見直してみる。



「そうか……あの時感じた違和感はこれか」

 滅龍刃を放った後にクルツがこぼしていたセリフ。それに対し抱いた強烈な違和感。その源泉はここだったのだ。

 ーー身体強化(ブースト)は、魔力の流れる量が多ければ多いほどパワーやスピードは増していく。書庫で見た書物には一切書かれていなかった情報が、そこには書かれていた。


 この世界の書物は貴重な物、誰かがふざけて落書きをするとは思えない。もしそんなことをしていたら、館内の警備員によって一発で取り押さえられているだろう。特に筆跡が違っていた覚えも無いし、ほぼ間違いなく筆者本人が書いたものだ。


 そして書かれているということは、つまりは誰かが実践したことがあるということだ。まさにこれこそが具体例、俺の探し求めていたもの。

 まさか、一番重視してたところとは別の場所にあったとはな。この世界に来てから色々見落としすぎじゃないか俺……。



 しかし……そこで疑問が浮上する。何で図書館にあるような情報が、王城の書庫なんていう重要な場所には一切無いのか。


 これが逆なら分かる。国が特定の情報を秘密にして外には一切漏らさないというのは良くあることだ。というかここの書庫は実際にそういう場所なわけだし。

 だが、このパターンは何だ? 重要であるはずなのに、誰でも見られる場所にはあって、一部の者しか見れない場所には一切無い……そんなことをする意味がーー


「あ…………」

 もしかして……そうなのか? 一切無いんじゃなく、意図的に切り捨てたのか? まるで()()()のように。



 コンコン。

「シュウヤ様ー。起きていらっしゃいますかー」

 ドアをノックされ、続いてサーシャの声が聞こえてくる。俺は考えに(ふけ)りながら、無言でドアを開けた。


「あ、いらっしゃったのですね。おはようございます。声が聞こえなかったので、もしかしたら城の外に行ってしまったのかと思いました」

「……ああ、おはよう」

「朝食の準備が出来ました。今からご案内……シュウヤ様?」

 唐突に顔を覗き込まれる。その様子に少し驚き、思わずたじろいでしまった。


「ど、どうかしたか?」

「いえ、その……何かに悩んでいるように見えまして。私で良ければお聞きいたしましょうか?」

「大丈夫だ。これはあくまで俺の問題だし、それには及ばなーー」

 そこまで言いかけて言葉を止めた。それで本当に良いのか?自分一人じゃ出来なかったからこそ、今まで停滞してたんじゃないか? その想いから、どうしてもその続きを言う気にはなれなかった。


「……いや、そうだな。サーシャ、聞いてほしい話がある。食後ちょっと付き合ってくれないか?」

「はい、是非とも!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「うーむ、成る程……」

 俺から渡された紙を見て、サーシャは見事に困惑していた。まあ気持ちは分からんでも無い。



 訓練最終日何があったのか。話したところで異常の一言で片付けられるのが目に見えていたので、今まで誰かに言うことは避けていたのだが……思いきって言ってみた。この話の根幹に関わる部分だから仕方無い。


 それを話した時、「ああ、またか」とでも言いたげな表情を向けられたのは少しイラっとしたが、そこはまあさておき。図書館に行った日の夜の話し合いの時に書いた紙、それを見せてからと言うもの唸り始めてしまい、そして現在に至るわけである。



「魔力を流せば流すだけ性能が上がる……そんな話聞いたこともありません。使用においての消費魔力は常に一定、それが身体強化(ブースト)という魔法ーーいえ、全ての魔法における原則のはずです」


 ……やはりそうか。クルツの言ってたのと全く同じだ。

 今サーシャが語った事こそがこの世界の原則であり常識。使用における魔力を増やすことなど普通は出来はしない。


 誰も出来ない事、とても信じがたい事象ーーだからこそ切り捨てられた。再現など出来なかったから、例え上層部にまで話が行っても握り潰された。そう、クルツが語った神獣の話のように。

 ……そしてその末に、書庫ではなく図書館にのみその知識が置かれることとなった。多分そういうことなんだろう。



「そのはずなんだが、現にそうじゃない事例が起きちまったからなぁ……。いくら俺と言えど、流石に何の攻撃魔法も使わず訓練場の一部を破壊するなんて出来んし」

「それなんですよね……。もしここに書いてある事が本当だとしたら、そうなったことも納得出来ます。異世界人であるシュウヤ様が己の全ての魔力を注いだら、それはもう凄い効果になるでしょうし」


 魔力を流せば流すだけ力が強くなる。それが身体強化(ブースト)という魔法の本来あるべき姿だと言うのなら、あの時は全魔力を注いだからこそあんな結果になったんだろうな。


 まああの感じを見るに、使ったのが初めてで上手くいかなかったっていうのを考慮しても、流す量が二倍になれば力も二倍っていうわけじゃなさそうだけど。もしそうだったら、あんなもんじゃなく訓練場全部吹っ飛んでただろうし。中々効率悪い魔法なんだな。



「でも……何からしくないですね」

「どういうことだ?」

「魔力切れになるのが嫌だから、今はまだ身体強化(ブースト)を練習しないって言ってたじゃないですか。その点がシュウヤ様らしくないって思ったんです。カストロ団長にも勝って、ギルド長にも勝って、更に強くなって。そうやって、何にでも挑戦して打ち破っていくのがシュウヤ様だ、っていうのが私の中のイメージだったのですが」

「……そう言うなら一回あの感覚を味わってみろ。本当に何もする気が無くなって、作業に大きな支障が出るからな。まあやりたくても出来ないだろうけど」


 新しく知った事なのだが、魔力切れの症状というのは大元の魔力量によって程度が変わってくる、という研究結果が出ているらしい。多ければ多いほど切れた時の症状は重く、逆に少なければ軽くなる。


 サーシャの場合は俺の二分の一程度しか無い上、一気に魔力を失うことなどそうそう無い。なので、感じるとしてもある程度の吐き気や倦怠感程度だろうと予想が付く。というか本人からもそう聞いたし。



「まあ、そうなんですけどね。だけど、それでもあえて言わせていただきます」

 持っていた紙をベッドに置き、俺の右手を両手でそっと包み込んでくる。誰かに手を握られたのなんて何年ぶりだろうか、ふと懐かしさを覚えてホッとしたのが自分でも分かった。


「もう一度やってみましょう? 失敗を恐れて立ち止まってるなんて、やっぱりシュウヤ様らしくありませんよ。失敗したらしたで、またその時に考えましょう。大丈夫、何度倒れてもその度に私が介抱してあげますから!」

「そういう問題じゃないんだがな……」

 何と無責任な。いや、介抱するって言ってんだから無責任とは少し違うか。


「……まあ良いや。試しにやってみるよ」

「はい、その意気です!」

 深呼吸をして意識を集中させ、あの夜の感覚を思い出す。頼む、上手くいってくれ……!



身体強化(ブースト)!! ーーあ」

 発動直後、とてつもなく嫌な予感がしてすぐに解除した。ステータスを見ると、今の僅かな時間の間に魔力が最大量の四分の一以上も消し飛んでいる。

 もう一度同じようにやってみるが、やはり嫌な予感がしてすぐ解除。今度は既に最大量の半分を切っていた。


「駄目なのですか……?」

「みたいだな。あと少し解除が遅かったら危なかった。やっぱり使いもんにならん」


 クッソ……何でだ、何でこうなる。物事には因果関係ってものが存在する。だから、俺のこの症状に関しても必ず理由があるはずなんだ。

 偶然ヒントが見つかる可能性に懸けようかと思いはしたが、やっぱり止めだ。こうなったら意地でも理由を探し出してやる。でないと俺はーー



「あの……シュウヤ様」

 そう考え始めたところで、サーシャから声をかけられた。


「何だ?」

「気になっていたことがありまして。先程ギルド長との訓練についての話を聞かせていただきましたが、シュウヤ様はその最中に身体強化(ブースト)を使えるようになったんですよね? でも、話の中に出てきたのは使った結果だけであって、どうやって身に付けたのかなどは聞かされておりません。何の修練も無しに身に付けられる魔法ではありませんし、一体どんなことをしたのかな、と……」

「あー……それか」


 どうしよう、これ言って良いのかな。何かまた異常者扱いされる気しかしないんだけど。


「サーシャ。先に言っておくが、この話は他言無用だ。さっき話したクルツのと合わせて、例えレミールだろうが国王だろうが誰にも言わないと約束してくれ」

「え? えっと、はい。それは勿論。……そんなに重大な話なのですか?」

「そういうわけじゃないが、何というか。俺魔力が見えるみたいなんだわ」

「……はい?」

 まさしく何言ってんだこいつみたいな顔を向けられた。その気持ちは凄く分かる。俺だってサーシャの立場だったら同じ反応するもの。


「いや、冗談とかそういうのじゃなくてさ。正直俺にも良く分からないんだが、魔力の流れとか大きさとかが見えたり感じたり出来るようになったんだ」



 ここに来て十日目の時に朧気に見えた変なやつ。あれが今ではハッキリと見えるようになり、様々な検証の結果魔力だという結論に達した。人間からも感じ取る事ができ、その規模の強弱がステータス上のMPの値と一致しているのが良い証拠だろう。


 何でこんな事になっているのかは分からない。図書館にも書庫にもそういった事例は一切載ってなかったし、クルツにも少しぼかしながらそれとなく聞いたが、返答は予想通りのものだった。


 まあ、見えてるとは言っても常に視界が歪んでいるわけではないのだが。軽く意識を集中させると見えるようになるって感じ。


「そんなわけで、クルツが身体強化(ブースト)を使ってるのを間近で何度も見て、魔力の流れの感覚を掴んだんだ。そんで何となくやってみた結果がさっき話した通り」

「普通に考えれば到底信じられない話なんですけど……何かシュウヤ様なら有り得るんじゃないかって気がしてきました」

「おい、何だその諦めたような顔は。言葉と表情が合ってないぞ」

「いやー、だって……シュウヤ様ですものねぇ」

「俺の名前を形容詞化するんじゃあない」


 全く、こうなるのが目に見えてたから言いたくなかったのに。まあこいつなら他の奴になんて言ったりしないだろうから別に良いけど。これ広まったらまた変な扱い受けることになるしな。


「というか、それが原因って可能性は無いんですか? 魔法関係でシュウヤ様が他の方々と特別違うところって言ったらそれくらいしか無いような気がするのですが」

「俺もそう考えはしたんだが、どうにも違う気がするんだよな。見えたのを真似してるだけなのに違う結果になるってことは、何が別の理由があるはずなんだ」


 魔力が見える今のこの状態、実のところ「だから何だ」というものでもある。確かに身体強化(ブースト)を身に付ける補助にはなっただろうが、それ以外には特に何のメリットも無い。魔力を感じ取れるようになれば回復量が上がるとかいう話もあるが、特にそういう気配も無いしな。



「うーん。ギルド長を訪ねてみる……のはあんまり意味が無いですよね。元々人から教わるような魔法ではありませんし。ちなみに、ギルド長が使ってた時はどんな感じだったんですか?」

「クルツが? そうだな……こう、何かモヤッと」

「それじゃ分かりませんって。どうか具体的な説明をお願いします」

「そう言われてもな……俺だって説明しにくいんだよ」


 苦笑するサーシャに対し、クルツの様子を身ぶり手振りで伝えていく。俺とは違う、控え目な感じで魔力が体内を駆け巡っていくイメージを何とか表現する。

 俺自身半ば忘れていたので時間はかかったが、説明しながら思い出していくことで、脳内で完全に形にすることが出来た。そうだ、確かこんな感じだったなと。



「……ふふっ」

「あ? どうかしたか?」

「いえ、そんなわたわたした姿を見るのは初めてだったのでつい。基本的に落ち着いてる姿しか見た事ありませんし」

「誰がさせてると思ってんだ……。まあ良い、ともかくクルツの身体強化(ブースト)はそんな風だった。んで、俺のは単にそれが膨大な量に膨れ上がってるっていう感じだな」

「成る程。何でなんでしょうね?」

「だから、それを今知りたいんだっての」

「ですよね……。とりあえず、少しでも答えに近付くよう回数をこなすしか無い気がします。ということで、もう一回やってみます?」

「……分かった、あと一回だけな。多分それで限界が来る」


 今話してる間に、魔力はちょうど半分まで回復していた。発動してすぐに切れば魔力切れにはならずに済むはずだ。

 それに、限界寸前までやってみないとサーシャとしても満足はしないだろうからな。話に付き合ってくれた礼って意味でも、とりあえず限界まで頑張ってみますか。



 再び意識を集中させ、身体強化(ブースト)を発動させる。そして即解除ーー

(……あれ?)


 妙だな。あの嫌な感じがしてこない。

 不思議に思いながら目を開けステータスを表示する。すると、魔力の減りは先程に比べ遥かに緩やかになっていた。勿論それでも一秒につき五消費という結構なペースではあるのだが、それはクルツやカストロの身体強化(ブースト)での消費量と全く同じ数字。つまり、


「成功……してる?」

「本当ですか!?」

「ああ、間違いない。今度こそちゃんと出来てる。だが……」

 何で急に出来たんだ?だってさっきまでは、あんな風に……。



「うぐぅっ!?」

 そう思った瞬間消費魔力が跳ね上がり、あっという間に魔力切れへと陥る。不快感に耐えきれず前のめりとなり、そのまま地面へと倒れ込んだ。


「シュウヤ様……? ちょっ、シュウヤ様ー!?」

 サーシャの慌てた声が響き、続いて体を揺り動かす感覚が伝わってくるが、残念ながらそれに応えてやることは出来ない。指一本動かせない状況の中、MPが零となっている自身のステータスを見たのを最後に俺の意識は途切れたのだった。

筆者が言うのも何だけど、倒れてばっかだなこいつ(´・ω・)仕方の無いことではあるんですけど。




執筆の励みになりますので、良ければ評価やブクマ等してもらえると嬉しいです。

また、誤字報告や表現がおかしいところへの意見などもお待ちしております。

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