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シーカーズ ~大器晩成魔法使いの異世界冒険譚~  作者: 霧島幸治
第一章 キュレム王国編 前編
31/80

第29話 修哉のステータス

「……ふぅ。とりあえず、ここまでにしておくか」

「あれ? もう良いのですか?」

「ああ。これ以上やるとヤバそうだし」


 練兵場から帰ってきた後はずっと魔法の自主訓練に勤しんでいた。そして現在、魔力切れの一歩手前になったので発動を止め、ベッドに仰向けに寝転がる。



 魔力切れ自体は魔力が最大値の一割を下回った時になるようだが、一旦症状に陥ってしまうと自然回復で一割以上になったとしても、その時点から一~二時間程立たないと気分は良くならない。あまりの吐き気に集中して詠唱を唱えることも困難になるので、一回一回魔力を使い切るまでやるよりも、こうやって一割の一歩手前で止めておいた方が色々と良いのだ。


 図書館の書物には、「基礎魔力量を成長以外で増やしたいのなら、ひたすら魔法を使い続けるしかない。魔力切れになっても構わず限界ギリギリまで魔法を使い続け、回復したらまたギリギリまで使う。これを繰り返すべし」と書かれてあったが、冗談じゃない。何でわざわざあんな最悪な感覚を何度も味わわなければならんのか。


 塵も積もれば山となる、とは確かに言うが……こと魔力量に置いては、その積もり積もった結果が塵なのである。正直とても無理してまでやる気にはならない。


 そもそも、ひたすら使えば良いだけなら魔力切れにならずとも魔力切れにならない程度に使っては回復使っては回復を繰り返せば良いのである。あれか? 書物の著者はソシャゲのスタミナ漏れならぬ魔力漏れの心配をしてるのか?



 まあ、俺は無駄になるのを心配する必要なんて無いがな。何せ、俺には鑑定眼がある。

 現段階の魔力量が確認出来るから、全回復に気付かないなんてことは無い。魔力切れになるタイミングも分かるから、その一歩手前で魔法の使用を止めることで、無駄無く修練をすることが出来る。


 戦闘力を計るためのものだと思ってたが、こういう使い方も出来るとはな。鑑定眼様々といったところだ。



 さて……改めてステータスで俺の戦闘力でも確認しておくか。自分に何が出来るのか、何が出来ないのかを知っておくのは大切だからな。



============================================



 〈名前〉:沢渡修哉 〈年齢〉:17


 〈種族〉:人族 〈性別〉:男 〈属性〉:無(系統外)


 HP:□□□□□□□□■■4200/5400

 MP:□■■■■■■■■■300/2400

 LP:□□□□□□□□□□5600/5600


 〈基本技能〉:短剣術(超)、剣術(超)、短槍術(大)、棒術(中)、鋼糸術(超)、暗器術(大)、投擲術(大)、体術(超)、柔術(超)、合気柔術(大)、拳闘術(大)、蹴脚術(大)、護身術(大)、隠密(極)、暗殺術(超)、威圧(極)、気配察知(極)、殺気感知(極)、視線感知(極)、心眼(大)、並列思考(超)、罠術(小)、開錠術(大)、軽業(大)、歩行術(超)、予備動作短縮(大)、模倣術(超)、交渉術(大)、看破(大)、読心術(大)、読唇術(大)、解体(中)、料理(大)、裁縫(小)、清掃(大)、異界言語理解


 〈異能〉:能力生成(スキルメーカー)(残り12/14日)、鑑定眼


 〈魔法〉:無属性魔法(小)



============================================



 一昨日初めて見た時は「何じゃこりゃ!?」と基本技能の多さに驚いたが、内容を見てからはそんなことも無くなった。というか、むしろ最強の男達に十年もしごかれてきたのにこの程度か、とすら思ってしまった。


 そこら辺は、多分俺自身に才能があまり無いからだと判断している。もし仮に戦闘関連でどこか秀でたものがあったのなら、今頃その系統の技能は全て(超)か(極)で埋め尽くされているだろう。何か爺ちゃん達に申し訳ない。


 罠術と裁縫に関しては……まあこれは(小)でも仕方無いか。罠なんて猪捕まえるためにくくり罠とか落とし穴掘った位だし、裁縫に至っては婆ちゃんがやってるのを見て技を盗んだだけで、正式に習ったわけじゃない。一応服の解れた部分を直す程度はやっていたが……料理と違って趣味レベルではなかったしな。



 技能の名称の右側にそれぞれくっついてる、(小)とか(大)とかのやつ。これは各技能の熟練度合いを示しており、まあ……分かりやすく言うならランクである。これは五段階制になっていて、下から小・中・大・超・極となる。振り分けとしてはこんな感じらしい。


 小:脱見習い

 中:素人とも玄人とも呼べない微妙な感じ

 大:常人なら十年~数十年修練を積んだ結果身に付く力。武術で言うなら師範代を勤められる位

 超:いわゆる達人と呼ばれる者達

 極:常人では辿り着けない領域


(大)の範囲広すぎんかとも思ったが、納得出来ないわけでもない。素人から玄人になるのは、余程才能が無い限りは基本を覚えコツを掴み、修練を積み重ねれば誰だって出来ること。それぞれの壁を乗り越えた際の成長幅が大きいため、簡単と言うわけではないが難しいわけでも無い。


 それに対し、玄人から達人になるためには毎日毎日地道に修練を積み重ね、ほんの少しずつ上達させていくということをする必要がある。感覚としては、果てしなく長く、それでいてとても緩やかな坂道をゆっくり上がっていくのに近いだろう。


 生まれつき天性の才能があったり、俺のように地獄のような修練を経験し続け後天的に並外れた感覚を身に付けるならまだしも、そうでない限りは何十年とかけなければ決して次の段階になど進めはしない。


 例えばこの城の執事やメイド。ガランとレミールは奉仕に関して達人クラスの実力を持つ(超)だったが、それに比例するかのように中々歳がいってる。対して、歳が四十五とかそこらだったアダムスは、奉仕術は(大)止まりだった。


 奉仕術とは技術と心の有り様が合わさって発揮されるものだから、武術と違って地獄の特訓したからって急に上達するわけでもない。というか、場合によっては下手になりそう。年数と熟練度合いが正比例する良い例と言えよう。



 ちなみに、基本技能の名称表記は基本的には内容通りなのだが、複数の内容が詰め込まれてる場合はいくつかに分かれるらしい。例えば柔術、本来柔術とは現代に伝わる柔道技術のみならず、武器術も含めた昔の戦場で生き抜くために必要だった技術の総称なのだが、ステータスに置いては剣術、短槍術、棒術、暗器術、体術、柔術……といった感じで色々に分かれている。


 暗殺術に関しても、気配を消す段階では隠密、そこからどれだけ上手く殺れるかといったのが暗殺術となっているらしい。その道を歩むものにとっては非常に分かりづらいが、大抵の人間にとってはこんな感じで分かれている方が良いのかもしれない。尚、俺の持つ技能の詳細については以下の通りである。



============================================



 短剣術:短剣やナイフ等、刃渡りの短い刃物を扱う技術


 剣術:刀剣類を扱う技術


 短槍術:柄の短い槍を扱う技術


 棒術:棒を扱う技術


 鋼糸術:アラミド繊維を中心とした、強度のある糸状の物質を扱う技術


 暗器術:体に隠し持った武器を扱う技術


 投擲術:物体を相手に向かって投げる技術


 体術:相手の攻撃の流れを読み捌く技術


 柔術:相手を能動的に投げたり転ばせたりする技術。


 合気柔術:相手の力を利用し受動的に投げたり転ばせたりする技術


 拳闘術:拳や掌底など、打突を相手に対し行う技術


 蹴脚術:脚撃を相手に対し行う技術


 護身術:相手の攻撃を避け捌き、安全に逃げる技術


 隠密:気配を消す


 暗殺術:気配を消した状態で相手を上手く攻撃する技術


 威圧:殺気を放出し、相手の戦意を削ぐ


 気配察知:自身の周囲の存在の気配を察知する


 殺気感知:他者が放つ殺気を感知し、その量を把握する


 視線感知:視線を感知し、そこに秘められる感情を読み取る


 心眼:気流・音・匂いなど、視覚以外の五感により得られる情報を元にして、目で見ずとも周囲の状況を把握する


 並列思考:主人格の他にただ情報を整理するだけの存在を端末として作り出し、同時稼動させることで処理能力を向上させる技術


 罠術:罠を作り出し、また罠を感知する技術


 開錠術:ピッキングにより閉じられた鍵を開ける技術


 軽業:アクロバットを中心とした、身軽な動きを行う技術。パルクール技術も含まれる


 歩行術:足音を消したり、重心の移動や力の抜きを使って高速移動を行ったり、低姿勢のまま疲れないように歩いたりする技術


 予備動作短縮:行動の際に必要となる予備動作を減らす技術


 模倣術:他者の技術を真似る技術


 交渉術:自分にとってより有利な条件を対話によって引き出させる技術


 看破:表情や言動から相手の嘘を見抜く技術


 読心術:表情や言動から相手の考えていることを見抜く技術


 読唇術:唇の動きを読み、何を喋っているのか読み取る技術


 解体:仕留めた獲物を解体し、部位ごとに分離する技術


 料理:調理をする技術


 裁縫:裁縫をする技術


 清掃:清掃をする技術


 異界言語理解:異世界の言語を自動翻訳し意味を理解する技能。尚、あくまで意味を読み取っているのであって、相手がその言葉をそのまま話しているわけではない



============================================



 ……そういや、並列思考(マルチタスク)とか久しく使ってないな。爺ちゃん達と戦う時は必須の技だったが、逆にそれ以外が相手だと使うまでもなかったから、ここ数年は意識すらしてなかった。


 さっきの練兵場の一件だってそうだ。黒宮流も心眼も、本来並列思考(マルチタスク)無しじゃあんまり上手く扱えないはずなんだが、結果はボロ勝ちだった。あれは相手が冷静じゃなかったからなのか、それともあいつらと俺がそれぞれ潜ってきた修羅場にそれだけ差があるってことなのか……。


 まあ良いか。これから人間だけじゃなく魔物だって山程相手にすることになるだろうし、すぐに使う時は来るだろ。



(にしても、本当に不思議な能力だよな。体力や魔力の量なら分からなくもないけど、技能まで分かるって便利すぎるだろ。これだけでも十分チートだな)


 相手の得意な技能が分かってしまえば、それを元に相手の行動を予測でき、常に優位に立ち回れる。仮に人間限定だったら使ってくる道具次第でいくらでも裏をかかれてしまうわけだが、実際は時計や魔剣を調べられたところからも分かる通り、それすらも見れるわけだからその心配も少なくなる。


 まあ、(小)にすらならん素人レベルの技術を奇策として使ってくるって言うなら話は別だが……流石にそんなものは見てからでも十分対処出来る。人間ってのは慣れない技術を使おうとすると、どうしても予備動作が大きくなるもんだからな。



 他者だけじゃなく、自分に対しても使えるっていうのも実に良いな。今まではあとどれくらい動けるかなんて感覚で判断するしか無かったが、鑑定眼を得た以上そこら辺が正確に分かるようになった。そして、体力の消費具合を細かく知れるようになったということは、その配分をより正確に行えるようになったということ。


 全快ならともかく体力がある程度減っている状態なら、行動をコマンド化し選択していくことで戦闘を効率化していくことが出来る。また、複数人又は複数体を相手にする場合でも、一人あたりに使う量を予め決めておくことで、終盤にジリ貧になることも少なくなる。



 魔力に関しても同様。昨日今日の練習で、魔力撃(インパクト)は一発につき百消費、光源生成(ライト)は一秒あたり五消費というのが分かっている。まだ手がかりすら掴めん身体強化(ブースト)がどれくらいなのかは正確には分からんが……カストロの様子からすると、光源生成(ライト)とほぼ同じと考えて良いだろう。ちなみに魔力は一回復するのに七秒、つまり俺の場合魔力切れになると全回復までに四時間くらいかかる。


 この事実と鑑定の結果を元に、あとどれくらい魔法を使えるのか知っていれば、魔力切れにより相手に隙を晒すことも無くなる。これはかなりでかい利点だと思う。


 ……数値だけじゃなくバーも付いてるってのは流石に驚いたけども。まぁ良く良く考えてみれば、本気で斬り合ってる最中にあと何割残ってるかのんびり計算なんてしちゃいられないし、数字もバーも両方あった方がありがたいのだが。



 このように、自分及び相手の技能や現在の状態を把握出来るか出来ないかというのは、そのまま戦闘の勝敗に繋がってくる。


 敵を知り、己を知れば百戦危うからずという言葉があるが、鑑定眼を使ってみるとその意味が良く分かる。この能力は、俺がこれから生きていくにあたって重要な役割を果たしてくれることだろう。



(……でも、万能じゃないってところには注意しておかなきゃな)


 そう、確かに鑑定眼は強力な能力だ。だが、同時にいくつか制約がある。


 まず一つ目。相手に鑑定眼を使ったとしても、読み取れない情報はあるということ。勿論記憶とかそういうことじゃなく、ちゃんと戦闘に関わってくることである。


 例えば魔法。俺のステータスの魔法欄には無属性(小)が載っているが、この詳細を見ようとした際表示される文は、


============================================



『無属性魔法』:詠唱魔法とは異なり、魔力そのものを流したり固めたりする魔法。適正属性関係無しに誰でも使えるものであり、魔法の入門用として使われることが多い。



============================================


 といった感じである。これの何がおかしいのか? と思うかもしれないが、良く考えてほしい。


 俺は昨日の夜から無属性魔法を練習して、一応ではあるが魔力撃(インパクト)光源生成(ライト)を使えるようにはなった。だが、ステータスにはそれが表示されていないのである。


 基本技能にしたって同様。俺は爺ちゃん達から色々な技を教えてもらっているが、その技の名称はどこにも記されておらず、更には流派そのものが剣術・拳闘術・蹴脚術といった風にまとめられてしまっている。


 つまり、大まかな動きは分かったとしても、どんな技を使ってくるかまでは分からない。まずこれが一つ。



 もう一つ読み取れないのは身体能力。体力・魔力・生命力に関しては分かるものの、どれくらいのパワーやスピードを誇っているかまでは分からない。


 気配の大きさや足運び、筋肉の付き方などで大体は分かるものの、爺ちゃん達の体験談によると貧相な体つきをしている者が実は怪力だったり、またその逆の場合もあったりと見た目から全てを判断することは出来ないのである。



 次に二つ目。使いまくって分かったことだが、鑑定眼には「視界内のものに対してしか使えない」というのと、「対象にしたものがどういうものなのかを認識していなければならない」という使用条件がある。


 分かりやすく言えば、まず前者は顔を背けている場合は勿論、対象との間に障害物があり姿が隠されている場合は反応してくれない。そして後者は、「あれは何だ?」という風に、遠くの良く見えないものの正体を知ろうとしたところで反応はしてくれない。同じように、暗闇の中で目の前のものが何であるかを知ることは出来ない。そのものの本質が何であれ、どんな色や形をしているかというのが分かっていなければ鑑定は出来ないのだ。



 追い討ちで三つ目。まあこれは初めて使った時に既に分かってはいたが、鑑定眼使用中に消費する体力量と体力自体の自然回復量が釣り合ってしまっているため、少しでも休みたい時にはあまり使うことが出来ない。緊急時程役に立たない能力、ということだ。


 こんな感じで、一見便利そうに見えてもいくつか欠点はあり、まず万能とは言えない。有利に立ち回れるとは言っても、決して油断してはならないのだ。



 ……便利だけど欠点があるといえば、どうしたって能力生成(スキルメーカー)のことを思い出すな。あれなんかその最たる例だろう。

 一見チートに見えて肝心なところでダメダメ、一体あれは何なのだろうか。いつか正体が分かるのかとか、他にも持ってる人間はいるのかとか、色々謎が多い能力だが……とはいえ、怪しんで使わないわけにもいくまい。


 属性を持てなかったせいで、のっけからいきなり限り無くアウェーな状況に陥ってるのだ。いくら身体能力や魔法を鍛えようが、いつか必ず限界が来るだろう。恐らく、それだけではまだ足りないはず。


 俺がこの先生き残っていくには、能力生成(スキルメーカー)をも使いこなし、持ちうる技能全てを極めるしか方法は無いのだ。だから……どんな手段だろうと、どんなに変な能力だろうと、役立つと言うなら構わず使わせてもらおう。


 ……ま、そうは言ってもあと十二日経たないと使えないんですけどね。既にどんな能力を作っていくかの計画は立ててあるから、今これ以上能力生成(スキルメーカー)について何か考える必要はあるまい。



 そんじゃ、何をしようか。昨日の情報の読み込みはもう終わったし、魔力も切れてるから魔法の練習は出来ないし……やることと言えば、筋トレ位? ……って、俺は何を忘れてやがんだ。城内の奴らのステータスを見て回らなきゃいけないんだろうが。


「……おし、行くか」

「何処かに御用が? 私もお供します」

「いや、大丈夫だ。ちょいとジョギングがてら城内を回ってくるだけ。お前はそのまま掃除するなりくつろぐなりしててくれ」

「分かりました」

 サーシャとの会話を終えドアを開け、俺は一人廊下を駆け出した。朝と違って鍛練も出来るってのがこの時間帯の良いとこだよな。いやまあ、通行人とぶつからないように配慮はするけども。

執筆の励みになりますので、良ければ評価やブクマ等してもらえると嬉しいです。

また、誤字報告や表現がおかしいところへの意見などもお待ちしております。

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