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シーカーズ ~大器晩成魔法使いの異世界冒険譚~  作者: 霧島幸治
第一章 キュレム王国編 前編
13/80

第11話 原因判明

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能力生成(スキルメーカー)

 自らのイメージした通りの異能又は魔法を作り出す能力。生成した能力がどちらに該当するかは、この能力自身によって自動で振り分けられる。また、一度の生成につき正否に関わらずHP及びMPの最大値の九割を消費し、不足分は生命力を消費して補う。


 尚、生成の際には以下の五つの条件に従うものとし、使用においてどれか一つでも反した場合代償を負うこととなる。


 一:生成する際、その能力の内容や使用においての具体例を正確にイメージしなければならない。


 二:自身が過去から現在まで存在した世界、その全てにおいて原理的に再現不可能な現象を直接生み出す能力は生成不可。


 三:生死に関係する一切の能力に関しては生成不可。


 四:生成の際は系統外故の制限を負うものとする。


 五:生成の正否に関わらず、使用後は再使用まで十四日間の休止期間(インターバル)を必要とする。



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「嫌な予感しかしないんだが……HPとMPってこれか?」

 能力生成(スキルメーカー)の内容確認後、〈属性〉と〈基本技能〉の間に表示されていた三つの表示を改めて見る。



 HP:□■■■■■■■■■ 500/5400

 MP:□□□□□□□□□□ 2400/2400

 LP:□□□□□□□□□□ 5600/5600



 そこに書かれていたのは、HP・MP・LPと書かれた三つの文字と、すぐ横に表示されたそれぞれの量を表すバーと数字。


「さっきも見たけど、何かHPだけ減りまくってんだよなぁ。HPって俗に言う体力のことだよな……体が重いのは、この数値が低いから?」

 とりあえず左端の三つの文字に意識を集中させ、詳細を調べてみる。


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『HP』

 体力量。減少に伴い肉体の動きは鈍くなり、零になると強制的に意識を失う。時間経過により回復。


『MP』

 魔力量。魔法を使う度に減少し、極端に減少すると様々な弊害を引き起こす。時間経過により回復。


『LP』

 生命力量。この値が大きければ大きい程、肉体の自然治癒力は増す。通常時に最大値より減少することは無いが、HP・MPが零になった上で、更に消費されるような事態があった場合、これがその不足分を強制的に補うことになる。この値が零になった場合、その存在は死を迎える。時間経過により回復はするものの、HP及びMPと比べると同時間内での回復量は数分の一程度。尚、減少時の自然回復はHP・MPよりこちらが優先される。



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「……やっぱし、そういうことか」

 これで、昨日の現象が十中八九この能力生成(スキルメーカー)によるものだと判明した。鑑定眼なぞ今まで発動したことはないというのもあるが、もう一つ根拠がある。


 俺の体が持つ自然治癒力はかなり高い。別に生まれ持ったものではなく、幼い頃からトレーニングを積んできた上数えきれない程の怪我もし、致命傷でもない限りその全てを自然治癒のみで済ませてきた故。これに関しては全て育て親の教育方針であり、要はその賜物である。


 例え肉体を酷使し意識を失う程疲労しようとも、一晩眠れば翌日には疲れも残さずほぼ全快。怪我に関しても、普通の人間に比べ圧倒的に早く治る。それが今の俺の体。



 だかしかし、このHP表示はどうか。これが正しいのなら、多くとも俺は一割程しか回復していないのである。どう考えてもおかしい。


 そこで気になるのがLP。この文の内容を少し端折れば、「場合により体力・魔力の減少分を肩代わりするが、他二つに比べて同じ量を回復するのに何倍も時間がかかる」ってことだ。



 実は一昨日の夜、アパートの方で色々トラブルがあり、疲れきってたくせに昨日は殆ど寝ていなかったのだ。学校でこっそり昼寝はしていたが、固い机の上で寝るのと柔らかい布団の上で寝るのとは大違い。


 その上、昨日は説明を細かく理解したがために精神的に疲れていた。とてもじゃないが全快とは言えない、残り体力は高く見積もっても七割と言ったところだった。そして、そんな状態の最中に能力生成(スキルメーカー)を使ってしまったのだろう。


 HP及びMPの九割を消費するーー残り七割しか体力が無いのに、九割消費は出来ない。そこでその不足分を補ったのがLP、というわけだ。


 一旦体力ーーHPの数値は零になり、残った二割分をLPが負担している間に意識は消失。その後、自然回復に数倍時間がかかるLPが優先され、全回復したのちにHPが一割程回復。そして起床……多分こういう流れ。魔法なんて使ったこと無いし、昨日の水晶に魔力を通した分位なら倒れた時点で既に回復してるだろうから、LPがMPの不足分を補ったなんてことは無いだろうし。



 LPの説明文を見る限り、この数値は命に直結する。それが何割か削られるということは、若干だが俺は死に向かっていたということだ。

 だからこそ、昨日のような酷い状態になったのだろう。成る程、文字通り死にかけていたのなら、今までになったことの無い状態になっても何らおかしくないってわけだ。


 いやー、納得したわ。原因が分かって一安心……




「ーーいや、出来るわけねぇだろ!!」


 何だよこの能力!? 場合によっては俺昨日の段階で死んでるかもしれなかったってことじゃん! 何でこんな危険なもん無意識に発動しちゃったんだよ!?


 おまけに他の条件もエグすぎるし! 不可とか制限とかばっかじゃねーか! 特に代償とか怖すぎるんですけど……。


「何つー扱いにくい能力だ……てか何でこんなん持ってんだ? 特に説明はされなかったから、勇者特有のものってわけじゃないだろうし」

 だったら生まれつきのものか? とも思ったが、それはそれで別の疑問が浮かんでくる。発動のキー自体は多分、昨日「こんなんだったら」って考えたせいだろうが……あれくらいなら元の世界にいた時にも考えたことはある。だが、昨日のようなことになったことはない。



 うーむ……魔力を消費するわけだし、魔力が存在するってはっきりと認識してなくちゃ発動しないとか? 元の世界にいた時は魔法自体御伽噺の中のもんだって思ってたから、魔力も同様に実在しないって風に認識してたわけだし……。


 ……まあ良いか。調べたり考えたりしたところで一生分からなそうだし。それよりも、今はステータスについての情報を集めなければ。


「んー……この条件四つ目の系統外ってのが気になるんだよなぁ。普通に考えたら無属性って表示すればそれで済むはず……。属性のとこにも系統外って文字があるけど、これが関係してんのかな?」


 そう、属性の欄には「無」ではなく「無(系統外)」と書かれていた。何か違和感がしその部分を見つめ、詳細を表示させてみる。すると、これまた非常に残念な事実が発覚した。


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『無(系統外)』

 基本六属性に加え無属性、その七つの属性のいずれにも属さない特殊なもの。通常無属性は僅かながらも基本属性の力も扱うことは出来るが、系統外は無属性ですらないため、基本属性のみならず六属性の魔法の一切が使用不可。また、そもそもその力を扱うことが出来ないため、能力生成(スキルメーカー)により六属性の能力を作り出すことも不可。ただし無属性魔法を扱うことは出来るため、形式上は無属性に分類されている。



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「……………………………」

 思わず絶句。要するに、六属性に関しては無属性以上にダメダメだっつーことか……。なんてこった。


「何かもう、踏んだり蹴ったりだなこれ……無属性魔法が使えるのが唯一の救いか。いくら能力生成(スキルメーカー)で魔法も作れるとはいえ、「やっぱり無属性魔法もダメでした」とかなったらキレそうな気がする」


 魔法陣魔法はどうなんだろうか……。まあ、後々調べたり試してみなきゃ分からんか。そこら辺は後回しにしておこう。



 その後は、他に気になる部分の詳細を次々と調べていった。


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『名前』

 対象の名称。基本的に本名で表示されるが、対象と親しく、あだ名など別の名前で読んでいる場合はそちらが優先される。


『基本技能』

 対象の生物が先天的に持つ才能、及びそれまで辿ってきた生の中で後天的に身につけた技術の総称。


『異能』

 魔法に含まれない能力の総称。例え魔力を用いていようとも、魔法と異なるプロセスで発動する能力はこちらに含まれる。使用時は基本的に体力を消費、場合によって魔力も同時に消費する。


『鑑定眼』

 使用した対象の情報を読み取る。生物なら名前・年齢・種族・性別・属性・状態・HP・MP・LP・基本技能・異能・魔法の内該当するものがステータスとして表示され、非生物は名前・概要のみが表示される。ステータスの場合、大まかに表示された第一画面のみ、詳しく調べたい部分に意識を集中させることで詳細が表示可能。



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「これで大体は調べ終わったか。後は……そうだな。試しにやってみるか」

 一度鑑定眼を閉じ、今度は腕時計に対して鑑定眼を発動する……ようなイメージをしてみる。すると、先程とはまた違った画面が表示された。


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 名前:デジタル腕時計


 概要:腕に取り付けるためのベルトがついた、小型のデジタル時計。一秒毎に時を刻む機能の他、年月日の確認機能・ストップウォッチ機能が搭載されている。株式会社C-shock製。


========================================


「おー……成る程。こんな風になるのか」

 てっきり「腕時計。時を刻む」位にしか出ないかと思ってたので、意外と文が多くて驚いた。中々便利だな。

 昨日の水晶とかに使っても同じように出てきてくれるんだろうか。これからの生活に役立ちそうだ。


 同時に鑑定眼の使い方も何となく分かった。今は深くイメージしないと発動しないみたいだから、しばらくは練習あるのみだろうけど。



 ……と、ここまで考えたところで、鑑定眼を完全に切る。さっき俺自身のステータスを表示されていたとき、ちょくちょくHP表示を見ていたのだが、時間経過で回復とか書いてあったのに全く数値が増えなかった。恐らく鑑定眼による体力消費と自然回復量が釣り合ってしまっているのだろう。


 今日は王都の散策日。流石にこんな体で歩き回りたくないので、少しでも体力を回復させておきたい。



 部屋の外からはまだ人が動いてる気配はしない。窓の外を見ると、太陽がさっきより少し上にあった。体感にして六時過ぎ、ステータスを色々調べるのに結構時間がかかってしまったらしい。


「まあ、とりあえず誰か呼びに来るまで横になってるか……。ああー、疲れた」

 そうぼやきつつベッドに戻り、再び横になる。眼を閉じるとすぐに眠気がやってきて、そのまま意識は落ちていった。ただし、今度は昨日のような辛いものではなく、とても心地よいもの。


 そして約一時間後、廊下に気配が増え始めるのを感じるまで、俺はぐっすりと眠っていたのだった。

軽く補足。

鑑定結果の詳細を表示する際、見出しに『』、ステータスそのものに====を使って区別しています。


あと修哉のステータスについてですが、HPとLPが異常なだけで、MPに関しては勇者の中で見ると割りと普通です。というかむしろ少ない。


HP・MP・LPの数値に関しては雰囲気で決めてるので、後で変更する可能性が高いです。御了承を。





では、今回は以上となります。

誤字報告や表現がおかしいところなど、もしありましたら指摘して下さると有難いです。

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