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第19話 セーラお嬢様、週刊誌の裏を暴く

 ホーリエさんはミンチン叩きを異常事態と考えている。

 彼はコメントしていた。

 児童虐待は許せないものであるが、あまりにも激しすぎる。

 石を投げる者が多すぎる。

 ノーマンの呼びかけに応じて、デモという名の暴動に参加予定の人が多いこと。マリア・ミンチンへの憎悪と殺意は増していくばかり。

 自業自得だと思っていたけど、恐怖感も足下から這いあがってきた。


「週刊誌007のせいで、ミンチンさんに関するデマが広がっている」


 ペンギンちゃんねるの影響もあり、噂は酷くなるばかり。

 あの女は痴漢でっちあげの常習者であり、多くの家庭を壊していった。少女時代は虐めを行い、自殺者も出していた。幼い頃は動物虐待をしていた。

 嘘で固められたミンチン象。

 そいつには、何をしても許される。

 ダークペンギンと名乗る男は殺害予告まで行った。

 虐待親を狙う連続殺人集団は、マリア・ミンチンの命を狙っている。

 すでに、8人が拷問死をさせられた状態だ。

 彼の支持者も少なくはない。


「ミンチンさんの入院している病院へ忍びこんで、彼女へ暴力を働いた馬鹿者までいるのか。わざわざ、看護師に化けやがって」


 ニュースサイトをチェックしながら、ホーリエさんは愚痴っていた。

 セーラお嬢様の呼びかけも虚しく、病院前は抗議集会のようだ。

 ミンチン姉妹は警察による保護目的で、とある施設へ送られた。

 ざまぁみろ。お嬢様を苦しめた罰なんだ。お前なんか殺されてしまえ。そんな声も胸奥から湧きあがってくる。それがチクチクとした痛みを与えてきた。

 お嬢様も辛そうにスマホをチェックしている。


「ミンチンは警察官にも嫌われているようだな。病院前の警護もいい加減になっていた。野次馬が増えてお祭りじゃねぇか。なぐり隊も居座っているし」


「ピーターさん。ダークペンギンとは関係あると思いますか?」


「警察が取り調べをしている最中だからな。俺は断言できないよ」


「刃物を振りまわしたらしい。やばいよな」


 私達が乗っている自動車は、以前とは違ってブラックカラー。

 ラムダスさんが運転をしており、その隣にはピーター・ポールが座っている。ケープペンギンのスーリャを嬉しそうにあやしている。案外、動物好きかも。

 ホーリエさんのチャンネルに出演した翌日のこと。

 週刊誌007の取材を受けた青年と会うことに。

 ホームズファイルという探偵さんが協力してくれた。ピーターとコネがあるらしい。一晩で居場所を見つけてくれた。何というか、凄いです。

 セーラお嬢様は説明をしてくれた。

 スプリングフィールドの書いた記事について調べるという。

 ホーリエさんも007と敵対しているらしく、別方面で協力してくれる。


「まさか、セーラお嬢様に助っ人を頼まれるとはな」


「私は大反対ですけどね」


「ラムダスさんも、そう嫌わないでくれよ」


「自殺者を侮辱した愚か者ですからね。軽蔑していますよ」


「俺って評判悪すぎ。でも、勘違いをするなよ。ミンチンの顔へパイをぶつけさせたが、さすがにナイフで刺すのは引いちゃう」


「分かっていますよ」


 ピーターはケラケラと哂う。

 スマホを手にして、楽しそうに撮影をしている。

 後で編集して、U-チューブにアップするのであろう。

 ペンギンちゃんねるを開いてみる。

 セーラお嬢様とホーリエさんのコラボは大反響の様子。

 アンチの多い人だから、コラボを残念がっている視聴者も多いこと。アイちゃんのファンも悲しそうにしているようだ。ホーリエ豚と組むなと騒ぎまくり。

 ダークペンギンの支持者は思った以上にいる。

 どちらかといえば、少数派であるが。




「ラビニア。その顔は、どうしたの?」


「あははっ。いろいろあってね。私がしてきたことを考えれば、当然のことだけどね。デュファルジュ先生にも謝ってきたわ」


 セーラお嬢様はスマホで、ラビニアとテレビ電話をしている。

 ピーターも興味深そうに後部座席へと、身を乗りだしてきた。

 リンチによる傷は癒えていくも、顔の痣は増えていた。

 右頬が赤く腫れている。

 どうしたのだろう?


「あんな善い先生を落としいれたなんてね。お説教をされたわ。罪悪感で苦しいのならば、誰かの役に立つようなことをしなさいって。アーメンガードに相談したら、ボランティア部を紹介されたわ。初めて野良仕事をしたものよ。ジャージが汗まみれ」


「アーメンガードと一緒の学校に転入したんだね」


「ヘイッ、ラビニア!」


「ひゃっ。あなたは誰なの?」


「U-チューバーのピーター・ポールだよ。知っているだろう?」


 ラビニアは笑顔を曇らせる。

 セーラお嬢様へ合図を送り、ピーターはスマホを自分へと向けさせた。

 何を話すのだろう?


「君を襲ったのは、いじめっ子の特権を許さない会のやつらだ。加害児童は人権団体に保護されている特権者だから叩くって人の集まりさ。なぐり隊とも仲が悪い。悪ガキは反省しようが徹底的に叩くからな。廃人になるまで追いこむ」


「ラビニアちゃんも暴行を受けたのだろう?」


 セーラお嬢様が息を呑みこむ。

 すぐに、グルグルで検索してみる。ダークペンギンによる連続殺人事件で隠れてしまっているけど、ニュースにもなっているじゃない。

 U-チューブを開く。

 サイラスという眼鏡の太ったオジサンが、拡声器で叫ぶ。


『学校での犯罪行為は、虐めという一言で片付けられる。加害者は子供という理由だけで守られる。こんなのはおかしい。ゴキブリ未満の屑は殺せぇーっ!』


『虐めをするクソガキは反省などできない。糞虫を殺せぇーっ!』


 賛同者も多いけど、次第に過激化していった。

 ラビニアもボランティア活動中に、抗議隊より絡まれた。

 酷い言葉を投げつけられた。

 サイラス会長は、彼女を庇う老人や教師達と言いあいをしていた。アーメンガードまで、もぅ責めないように頼みこんでいた。

 警察が呼ばれて、いじめっ子の特権を許さない会は解散。

 その後、ラビニアは独りでいるところを中年男に殴られたらしい。


「まぁ、私は何をされても仕方ないわ。パパが心から心配してくれたのは嬉しい。なんだかんだ言って、優しい人なんだなって」


「ラビニア。そういう言い方はないわ。卑屈にならないで!」


「サイラスは関連を否定しているらしいけど、怪しいな。ペンギンちゃんねるにも変なことを書きこんでいるが気にするな。悪い噂も時間が流してくれる」


「あ、ありがとう。ピータ―さんって危ない人って印象があったけど、素敵な人じゃない。そうよね。怖がったところで、何も解決しないわ」


「俺はデンジャラスガイだぜ」


「ラビニア。気をつけてね。ダークペンギンの件もあるから」


「セーラもありがとう。パパが護衛をつけてくれたから大丈夫よ」


 ラビニアの顔から不安色が抜けていく。

 サイラス会長に罵詈雑言を浴びせられて、辛かったのだろう。

 汚い言葉を大人数から投げつけられたんだ。

 ペンギンちゃんねるでも、誹謗中傷の書きこみは絶えない。

 セーラお嬢様はカーマイケル弁護士にも、これらの動きを法的に止められないかと相談をしていた。名誉棄損で訴えていく方針だという。




 セディの家に着いた。

 昔ながらの空気が残った町だ。

 アポは、すでに取ってある。

 絶世の美少年は、中性的な美青年へと成長していた。

 ミンチンが家庭教師をしていた頃の教え子。

 スプリングフィールドの記事によれば、彼は少年時代に彼女から性的虐待を受けたというが。007は噂を世界中へ流してしまった。

 セーラお嬢様は確認をするつもりだ。


「はじめまして。セーラ・クルーです」


「セドリック・エロルです。遠いところから訪ねてくださって、ありがとうございます。ドリンクも用意しています。家の中でお話をしましょう」


 観葉植物が多い、落ち着いた感じの豪邸だ。

 ハーブティーとクッキーを用意してくれた。

 ピーターについて知っているみたいだけど、笑顔で接している。穏やかそうな雰囲気を漂わせている。成人男性と信じられないほどの愛らしさ。

 セーラお嬢様はティーの香りを味わう。


「私は信じられませんでした。ミンチン先生が、あのような行為をするとは。家庭教師をしてくださった頃からは想像もできません」


「あんたは、確認したんだろう? ベッキーちゃんの撮った動画を?」


「ピーターさんの仰った通りです。あの人は間違いなく、私の恩師であるマリア・ミンチンでしたよ。貧しい生活から抜けだして、学校を建てたのは知っていましたが」


「お金に目がくらんで、性根が腐ったんだよ」


「残念です。それでも、彼女が性的虐待をしたなど、ありえません。スプリングフィールドさんは、勘違いした母の意見を誇張しているにすぎません」


「勘違いだと?」


「私は幼い頃、虐めに遭って登校拒否をしていました。そんな私を一生懸命に励ましてくれたのが、家庭教師時代のマリア・ミンチン先生です」


 金髪の美青年は、顔を複雑そうに歪めた。

 アメリアさんの話では、ミンチンは貧しい少女時代を過ごしてきたという。家庭教師をしながら、妹の世話をしてきたという。

 セディさんは語ってくれた。

 私の知らない、優しい女性であったマリア・ミンチンについて。

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