表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

第18話 セーラお嬢様、ホーリエ氏に会う

「こんにちわ。ホーリエです」


「こんにちわ。テラポンです。今回のホーリエチャンネルは、ヴァーチャル・U-チューバーのアイちゃんをゲストに迎える予定でしたが……」


「予想外の展開になったのよ」


「セーラ・クルーさんと、ベッキーさんも来ちゃいましたぁっ!」


「セーラです。よろしくお願いします!」


「べ、ベッキーです。よろしく」


 U-チューブでのライブ中継。

 セーラお嬢様は元気良く、自己紹介を飛ばす。

 ベッキーは恥ずかしそうに、おずおずと呟くしかできない。

 ホーリエさんが中央に座っており、その隣でサポートをしているのはテラポン。視聴者からの質問を読みあげたりしている女優さんだ。

 とあるオフィスで撮影が行われている。

 大きな液晶ディスプレイが設置されている。そこに映っているのは、ヴァーチャル・U-チューバーで有名なアイちゃんだ。


「こんにちわ。アイでぇす。私も驚きましたよ。セーラお嬢様に会うことができるなんて。ベッキーちゃんまでいるし。感謝、感激の雨嵐ですよぅ」


 CGで描かれた美少女ちゃんは、嬉しそうに跳ねている。

 相変わらずのハイテンション。

 汎用型の人工知能であるらしいけど、どこか人間ぽい。

 この放送には多くの視聴者がおり、リアルタイムで感想を書きこんでいる。セーラ出演という前情報により、その数はいつもの数倍ほど。




 動画の右方向に、チャット欄が設置されている。

 いくつかの書きこみを載せておく。


【ならず者ペンギン隊:セーラちゃん、マジキターッ!】


【聖帝チワワ:ホーリエと並んで、違和感が仕事しすぎておるわ】


【破壊神スフィンクスキャット:ホーリエは嫌いだけど今回は見る】


【贅肉マンゼブラ:美少女令嬢と地味っ子メイドのコンビ最高!】


【DRトナカイ:セーラちゃん。アイちゃんもこんな豚と組まないで】


【猫の人形遣い:セーラちゃんって思った以上に明るいね】




「セーラちゃんが元気そうで何より」


「そうですよぅ。色々あったから心配していたのです」


「ありがとうございます。ホーリエさん、アイさん。もぅ終わったことですから、悩んでも仕方ないです。ごたごたを終わらせたら、やりたいことでいっぱいです」


「ほへっ。やりたいことですか?」


「それ、詳しく聞かせてくれない?」


「もう一度、インドへ行きたいと思います。お父様との思い出もありますが、コンピューター技術が発達して面白い国なんです。友達がプログラミングにはまっているようで、私も興味を持ってきました。そっち関係のサイトで、お勉強を始めています」


「セーラちゃん、12歳なのに凄いねぇ」


「昔と違って、独学もしやすくなった。子供の方が学びやすいもんさ」


「中国の方も、スマホの開発が盛んなのですね。行ってみたいなぁ」


「そのまま、マレーシアとかにも足を伸ばすといいよ。世界中を回って、視野を広げるんだ。それが人生最高の投資になるんだから」


「PENGUIN-TAROUさんの写真で、ペンギンさんに興味を持ちました。梅小路水族館も訪れたいです。どうぶつ王国も楽しそう」


「京都かぁ。あそこも面白い」


「はいっ。でも、学校の方はどうしましょう?」


「そういえば、セーラお嬢様は休みっぱなしですね」


「そんなの行かなくても、問題ねぇよ。セーラちゃんほど頭が良ければ、ネットの独学で大丈夫だからさ。好きなことに猿のようにはまるんだ」


「ねぇねぇ。ベッキーちゃんも、やりたいことあるの?」


「アイさん。いきなり訊かれても分かりませんよ。やりたいことなんて、特には思いつきません。もう、ごたごたで頭いっぱいですっ」


「とにかく何でも挑戦してみるんだ。些細なことでもいい。本を読むとか、SNSをやってみるとか。時間を忘れるほど熱中できることに出会うんだ」


「私、飽きっぽいですし、どれも長続きしません」


「それでいいんだ。飽きれば、はまれることを他に探す。そいつに没頭して、色んな分野で経験を積んでいく。そうしていけば、君の価値は高まっていく」


「ベッキーさんって、インスターをしていたね?」


「セーラお嬢様と一緒に撮っていました」


「楽しかったね。また、やりたいなぁ。ベッキーと世界中を旅しながら、一緒に写真を残していく。想像するだけで、胸が躍ってきたわ」


「そ、それは素敵ですけど、私は世界旅行をする余裕なんて」


「セーラちゃんの専属メイドになれば、どこでもついてけるんじゃね? 君らの知名度があれば、投げ銭だけでも、そうとう稼げると思うよ」


「グッドアイデア!」


「そんな滅茶苦茶なっ!」




【ワオキツネザル3号:テラポンは空気になっとる】


【亀、参上!:ベッキーちゃんのインスターってフォロワーが凄まじいことになっているよ。コメントやライクボタンも鰻登りだし、企業と組めば稼げそうだね】


【イカエンジェル:セーラちゃんがホーリエに洗脳されていく】


【月光兎:括目せよ。ベッキーちゃんの恋する目つきを】


【ゴリラブラックRX:キマシタワー!】


【鮫将軍:こんな子を虐めるなんて、ミンチンは馬鹿だよな】


【ホーク×タイガー×ホッパー:ニュース速報が入ってきた。ダークペンギンが他の虐待親を殺していたと。相手の携帯を奪って、そこから拷問シーンをアップしたらしい】




 ホーリエさんやアイちゃんとの対談は進んでいく。

 VRゲームやコミックも話題に取りあげられて、セーラお嬢様は興味津々に目を輝かせている。こういった文化とは縁無き生活を送ってきたせいもあるだろう。

 「魔法少女さくら」というコミックを真剣に眺めだす。

 アイちゃんは嬉しそうに話しかける。


「ペンギンさんがヒロインの魔法少女ものだよ」


「楽しそうですね。こんな世界があるなんて。コミックは良くないものって教えられてきたのですが。アニメーションの方も面白そうですね」


「頭の古臭い輩は漫画を否定する。効率良く情報収集をするには、最高の表現方法なんだよ。セーラちゃんもいろいろ読んでみな。世界が広がるぜ」


「人狼ゲームにサバゲー。どれも楽しそう」


「俺のサロンでもイベントが開かれている。2人とも参加してみないか?」


「はいっ。インドから帰ったら、すぐにも加わりますよ。アーメンガードやラビニアも誘ってみます。ロッティちゃんは小さいから、ちょっと早いかなぁ?」


「ほへっ。ラビニア? あれだけ、虐められたのに?」


「心から謝ってくれましたよ。今度はお友達になれそう」


「それじゃあ、問題ねぇな。セーラちゃん、どんどん遊んで人生を楽しむんだ。AIの発達で仕事は大きく変わる。これからは、遊びの達人が世界を動かす」


 セーラお嬢様はミネラルウォーターを口に含んだ。

 笑顔を天真爛漫に輝かせている。

 その様子を離れた場所から、ラムダスさんが安堵したかのように見守っている。ケープペンギンのスーリャを抱きかかえながら。絶世の美青年だ。

 ホーリエさんは、そっちへチラチラと視線を送っている。


「あいつも会話に参加すればいいのに」


「ラムダスさぁーん。こんなイケメンさんが来ているのに遠くから見守っているだけなんて、アイは気になって仕方ありません」


「ラムダスさんも生放送に出演しましょうよ」


「セーラお嬢様まで。私は、あくまで執事なので」




【不死王モモンガ:セーラちゃんが洗脳されて心配であるぞ】


【お兄様ペンギン:私はラムダスさんの貞操が心配です】


【コブラマン:テラポンが大人しいかと思えば、ラムダスさんに見惚れているじゃねぇか。あんなハンサムボーイは、そうそういないけど】


【狐の居酒屋:ノーマンさんもラビニアへの攻撃を止めるように声をあげている。いじめっ子の特権を許さない会の方は、過激なことを書いているようだが】


【幼女狸:セーラのイメージが変わった。サバゲーに参加するだと!】


【蜘蛛ですが?:そういえば、ミンチンのことは話題にあがりませんね。てっきり、そっちの話ばかりするかと思いましたが】


【猫耳スライム:ミンチン叩きは激しくなっているのにね】




 1時間にもわたる生放送は終わった。

 ラムダスさんも強制的に参加させられて、女性視聴者の心を掴んだ。

 写真も残して、インスターへ投稿。

 セーラお嬢様は礼儀正しく挨拶をした。

 新しい世界を知ったことで、キラキラと両目を煌めかせている。

 ホーリエさんとアイちゃんも挨拶を返す。


「今日は楽しかったです。また、お話をしたいです」


「私も楽しかったよぅ。ベッキーちゃんとも会えてよかったっ!」


「いえっ。とんでもありません」


「SNSを使えば、いつでも可能さ。面白い奴に会って、どんどん話すんだ。そうすれば、人生は楽しくなる。イベントの参加を待っているよ」


「はい。情報の方もありがとうございます」


「あまり、無茶はするなよ。007は下衆な週刊誌だ。この機を見計らって、ミンチンさんに関するデマを流していやがる。スプリングフィールドは最低の男だ!」


「しかし、セーラちゃんがミンチンを助けるために動くとはねぇ」


 ピンクのリボンを揺らしながら、アイちゃんが言葉を零した。

 セーラお嬢様はスマホを取り出すと、ピーター・ポールへ連絡をはじめる。次なる行動のため、彼の力を頼ろうとしているのだ。

 正確にいえば、彼の協力者である探偵さんの力を。




【Gバター:やべーぞ。ダークペンギンのやつ、殺しまくっている。複数犯だな】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ