第1話 ミンチン女学院で何が起きたか
ミンチン女学園の闇が暴かれた。
いや、私が晒してやったという方が正解だろうか。
告発動画をU-チューブに投稿して、大型掲示板を使って拡散した。
マリア・ミンチンは熱心な教育家として有名であったが、裏では児童虐待を行っていた。私の親友が、心を抉られるように虐められていた。
絶えられなかった。
セーラお嬢様は心は強くとも、まだ幼い子供だ。
気丈に振舞いながらも、屋根裏部屋では声を殺して泣いていた。
事情を知らない方のために、大雑把に説明しておこう。
ミンチン女学院はお嬢様専用の寄宿学校だ。
親が裕福層に限定されるため生徒数は限られ、年齢も大きくばらついている。
マナーと教養を叩きこまれて、どこに出しても恥ずかしくない令嬢に育っていくそうな。私が観察してきたかぎりでは、品の欠片も見られない子もいたが。
セーラお嬢様は世界的な大富豪ラルフ・クルーの一人娘である。
マリア・ミンチンは彼女の素晴らしさに嫉妬しながらも、おもねるように優遇をしていた。ゴマをすっていたと言えようか。
父親が亡くなり破産をすることで、セーラお嬢様は身寄りのない一文無しとなった。受け継ぐはずの財産は、バロー弁護士に全て奪われた。
ミンチンは彼女を預かるも、屋根裏部屋に押しこんで、酷い虐待を加え続けた。あの女はセーラお嬢様を傷つける言葉を吐き、時には暴力も振るっていた。
許せない。
私はマイクロカメラで記録をして、ネット世界へ晒してやった。
「ミンチン学園で何が起きたか」
そう題した動画は世界中へ広がり、大きな波紋を起こした。
マリア・ミンチンはテレビにも出演をして、人徳者を演じていた。その正体はヒステリックな児童虐待者だったのだ。
あの女は地獄へ落とされた。
マスコミから追及を受けて、ネット掲示板では叩かれる。U-チューバ―から馬鹿にされて、オタクどもからは間抜けな雑コラまで作られる始末。
ざまあみろ。
この文章を書きながら、腹を抱えて笑っている。
指が震えて、スマホを上手く打てない。
セーラお嬢様の苦しみは、もっと深いんだ。
彼女はトム・クリスフォードさんに保護されて幸せに暮らしているが、この程度で終わると思うなよ。マリア・ミンチンへの裁きは終わっていないから。
【ベッキーの日記より(ネットには非公開)】