愛の奴隷
純粋に、ただ純粋なまでに、僕は誰かを好きでいたかった。
誰かを愛することで自我を確立し、誰かを愛することで、自分がこの世界にいる必要性を感じていたかった。
そんな、くだらない理由で。
そして今日、僕は好きな人を無くしてしまった。
無論死んだ訳では無い。かと言って病魔に犯されていたわけでもない。この平穏な日常を、きっと過不足なく、彼女は生きている。
……有り体にいえば、僕は嫌われたのだった。
当然といえば当然かもしれない。愛する対象が誰でもいいのだから、それは自分でなくてもいい。
知ってしまえば、彼女の思考がそうやって進んでいくことを、僕は薄ぼんやりと理解していた。
でも、理解していても、僕は愛することをやめられない。
誰でもいいから愛させてくれ。それだけが僕の存在証明だ。……だから、だから。
僕を生かすために、誰か僕の愛の奴隷になってくれ。
そして僕は、今日も自分の妄執を為すために、誰かを愛し続けるのだ。