決意と始まり(後編)
誤字脱字がある可能性があります。勢いで、楽しむことをお勧めします。
何も持っていない者はそれなりに、それ相応の人生を送ることが何よりの幸せだ。 いつからだろうか…そう自分に言い聞かせるようになったのは…
「これからは、お前のことは、父さんが、守ってやるからな…」
4才の頃、母の葬儀の時に父が、言ってくれた言葉は今でも、ハッキリと覚えている、そして僕もいつかあんなふうになりたいと思っていた。だけどそれは、叶わかった…なにも無い僕には、多くのものを持つ父の背中は、少し遠すぎた。周りの人間も、父を尊敬する反面、僕には、軽蔑や同情の念を持っていた。僕には、なにも出来ないんだ。なにも持たない奴は、なにをしたって、持っている者には、敵わない…
もうろうとする意識の中、僕はその場に這いつくばっていた。
「どぉ、驚いた? [憤怒の炎]の特性は、「武装」、だから、形成される武装によってリーチがあるって思ってたでしょ。 残念だったわね、私の[焔月参式]は、炎自体が実体を持った物質なの。 つまり、条件さへ揃えば攻撃範囲は無限なのよ!!」
先輩が何かを俺に言い放っているが、今の僕には、それを聞いている余裕なんてなかった。しばらくすると、先輩は刀を構えこちらに向かって真っすぐに突撃してくる。体をゆっくりと起こすと僕は…
あぐらをかき座り込んだ…
「!?」
先輩は、僕の行動が理解できなかったのか、僕の目の前で足を止めた。
「「おい!! 何してんだ!!」」
「「そうよ!! ちゃんと戦いなさいよ!!」」
「「まさか、怖じ気ずいてんのか!!」」
観客席からも、絶え間なくヤジが飛んでくる。それでも僕は、びくともせず地面に目を伏せた。
『うるさい!! 外野は、黙ってなさい!!』
先輩の放った一言によってその場は、静まり返った。
「どうゆうつもり…?」
刀を突きつけ、先輩が、僕に問う。
「どうゆうも何も、みんなが言う通りですよ…」
僕は、俯きながら続ける。
「もう痛みで体を動かすのも辛いし、体力も消耗しきっています。 こんな状態じゃもう真面には、戦えません。 ならせめて、堂々と負けてやろうと思っただけです…」
「そう…」
先輩は、そう呟いた後、突きつけていた刀を解き、炎に戻し、その炎を消した―――そして、僕の胸倉を掴んだ。
『フザケンジャ、ナイワヨ!!!!』
叫びながら、先輩は、思いっきり僕の頬に拳を叩き付けた。
「ブエッ!!」
僕は、数回回転した後、体を地面に強く打った。
「アンタのそれは、堂々なんてもんじゃ無い!! ただ逃げただけよ!!」
…うるさい
「アイツと同じで逃げることを受け入れてしまった。最低なヤツの言葉よ!!」
…うるさい
「あんたはそれが、本当にかっいいことだと思ってんの!!」
『うるせええええ!!』
そう、僕だって、わかってるんだ!!こんな生き方が、全然かっこ良くないこと。僕だって…僕だって……
・・・・俺だって・・・・
『俺だってッ!! 俺だってかっこよくなりたいよ!!』
俺だって成りたかった!!映画の主人公みたいに、父さんみたいに、みんなから頼られて、誰かを守れるような、[持っている者]にッ!!
「だけど、無理なんだよ!! 俺には…無いんだ、何も無いんだよ!!」
俺は、泣いていた。生まれて初めて、悔しくて泣いていた。
「諦めてどうするの!!」
「ヘェッ!?」
彼女の言葉の意味が僕には、分からなかった。
「何も持たずに生まれてくる人なんていない。 アンタは、まだそれを、自分の中から、見つけきれてないだけ。 なのに、それを諦めてどうすんの!! 見つけなさい!! ソレは他の誰でもない、アンタだけにしか見つけられない本当のアンタなんだから!!」
本当の俺!?そんなもの見つける気も、見つかる気もしない………だけど!!
「俺は…」
そう!! 俺は…!!
『強くなりてえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
俺は会場から覗くどこまでもどこまでも高く、そして広い空に向かって、肺を潰す勢いで叫んだ!!
「ゼェ…ゼェ…」
空を仰ぎながら、目を閉じ呼吸を整える。息苦し、だけど、今まで抑え込んでいた何かが、スッと抜けた。そんな感覚が、苦しさを少し和らげた。
「アンタにもあるじゃない。 ちゃんとした強い[炎]が。」
俺は、目の前から、暖かさを感じた。目を開いて、見るとそこには、まるで、オーロラのように七色に輝く火の玉ほどの炎が、ゆっくりと静かに燃えていた。
「あったんだ…こんな俺にも、しっかりとした[炎]が…あったんだ!!」
また俺は、泣いた。でも、悔しかったり、怖かったりしたとかじゃない。嬉しくて…只々嬉しくて泣いた。
「ほら!! いつまでメソメソしてるのまだ勝負は、続いてるのよ!!」
先輩は、再び炎を出現させた。しかし、それはかなり少量で、武器を形成するには、不十分だった。
「時間もないし、一発で決めましょう!!」
そう、炎を拳に纏わせ、先輩は言う。全くどこまでも、真っすぐな人だ…
「先輩ッ!!」
「ん!?」
「本当にありが…」
「待ったッ!!」
「え!?」
「伝えたいことは、[拳]を通してにしましょう!!」
「…はいッ!!」
本当にかっこいい先輩だ。俺も自分の炎を、つかみ取り拳に纏わせた。
「いくわよ!! ハアアァァァァ!!」
「はいッ!! ウオォォォォォォ!!」
俺と先輩は、お互いに相手に向かって、全速全身で突撃し、拳を叩き込んだ。まだ、何が出来るのかは、分からない[炎]だけど、この炎はきっと、俺のこれからを照らしてくれる!!――――――
―――気が付くと僕は、真っ白い天井を眺めていた…
「あ、気が付いたみたいね」
声のした方を見ると、先輩が、読書をしていた。本はカバーがしてあり何の本かは、分からなかった。
「俺負けたんですね…」
「ええ。 悔しい?」
「いや…何か逆に清々しいです」
そう俺は、確かに負けた。でも、全然悔しくない。何故か俺は、この敗北に誇りが持てた、負けるコトではなく、負けたコトに誇りがもてた。
「先輩…俺、今年の栄炎杯に出場しようと思って、それで先輩にご指導頂きたいのですが…」
先輩はそうね~という感じで考えた後、口を開いた
「勝者は、敗者に手を差し伸べろ、敗者は、その手を払い勝者の背中にしがみ付け、いい言葉てしょ!!」
「はい。 …誰の言葉ですか?」
「私!!」
エッヘンと胸を張る先輩は、やっぱり少し幼げで可愛いらしかった。
「いいわよ! でも私のトレーニングは、中々ハードよ。 しっかりしがみ付き続けなさいよ!!」
「はい!!」
こうして、俺の青い春は、幕を切って落とされた。




