人生の記録者
ブクマがついていて驚きました。一日または二日おきには更新しますので今後ともよろしくお願いします。
『おい坊主、起きてるか』
ん、誰だ?
『寝ぼけてんじゃねえ、さっさと意識ハッキリさせやがれ』
あ、ああ。分かったよ、ったく面倒な夢だなあ。
『夢なんかと一緒にすんな。私がわざわざ坊主の深層意識に語りかけてっやてんだ。しゃんとしろ』
深層意識? まさか夢じゃなくて現実なのか、それとも世界の管理とやらをしてるあいつか?
『違う違う。私は坊主の魂に残留してる記録だ。まあ意識ごと記録されてるから話ができるわけだが、今回は坊主にちとアドバイスだ。っと、その前に』
よいしょ、という掛け声が聞こえるのと同時に真っ暗であった視界が突然開ける。一瞬眩しさに目を瞑ってしまったが、そもそも意識でしかないのだから肉体の影響は受けないので瞑る必要などなかった。
開けた視界により目に写ったのは座敷。
両端にはそれぞれ五枚ずつ座布団が敷かれ、真ん中奥にも同様に敷かれていた。
ふと、足裏に柔らかな感触を感じ取り、見やると同じく座布団があった。今立っているのは真ん中一番手前。ひとまず周りには誰もいないので座ることにする。
すると、座敷に一人入ってきた。この場には似つかわしくない洋風の動きやすそうな軽装をした赤髪赤目の釣り目がちな女性であった。
「どうだ? 坊主には馴染みのある場だろう」
「この声は、もしかしてさっきのはあなたが?」
「そうだ。私が深層意識から坊主を一時的ここへ置いている。理由は言ったとおりアドバイスをするためだ」
男らしくあぐらをかいて右側の座布団の一つに座り、紅蓮の双眸で射抜くようにこちらをみてくる。
「アドバイスって。いったい何の……」と、言いかけた時、
ーーーー 衝撃が全身に走る。
気づいたら俺は仰向けに寝転がっていた。
「何が起こったのか分からないって顔してるな。でも覚えはあるんじゃないか?」
覚えなんて、いや、まさか。
「騎士が光輝とか言う奴に切りかかった時、起こったはあれはあなたがやったのか」
「ご名答。そうさ、ついでに召喚された際には警戒して気配を完全に殺してもやったぞ」
にひひ、と八重歯を見せながら無邪気に笑う女性。
「じゃあその時流れ込んできた戦闘技術はあなたの、なるほど、そういうことか」
流れ込んできたのは数々の隠密の戦闘技術。いかに敵に認知されず、気配を殺したまま仕留められるかに特化したもの。これは。
「あなたは生前暗殺者だった」
思った時には自然と口から出てきていた言葉。対し、女性はこれといった反応示さず、平然と答える。
「またまたご名答。私の名はイレン、生前は雇われの暗殺者をやっていた。正義の為にな」
「正義?」
「いや、余計なことを言った。それより早速アドバイスをしよう。まず坊主は戦闘技術を知っただけで実用はほとんどできないはずだ。もとより頭で理解するものではないからな。だからこそたった一言、言わせてもらおう。
ーーーー なんでもいいから殺せ、それだけだ」
「なぜそんなアドバイスを…… 「じゃあな」え、ちょ」
別れの言葉を告げてさっさと消えてしまうイレン。そんな彼女に不服な感情を抱きつつも、謎の力の奔流に意識は飲まれていった。