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召喚者

感想もなにもないと思いますがいただければ幸いです。

様々な装飾が施された豪華絢爛な壁面。

柱には細やかな彫刻が刻まれており、腕のいい職人が彫ったと一目でわかるほど。

大理石の床には長い赤い絨毯が敷かれ、両端には鎧に身を包んだ騎士たちが直立不動でいた。

玉座には王と妃、そしてあどけなさを残した王女が間の中心に存在する魔法陣を見つめている。


「王よ、これより召喚術式を起動します。よろしいですか?」


「許可する、始めよ」


陣の横に立つローブを纏った背の低い魔術師は言質をとったうえで術式の起動を始めた。

陣は魔力によって徐々に緋色の輝きを帯び、満たされていく。


「魔術師フェンドラの名において始動せよ。異界より来たれ、英雄よ。正義、名声、能力、全てにおいて優れている者、または成長する者…… 満たせ、焦がせ、示せ、我が願いを。さあ! 来たれ! 現れよ! 国を救いし英雄よ!!」


輝きは最高潮に達し、目も眩むほど発光する。凄まじい音、揺れを経て輝きは少しずつ消えてゆく。

王たちは瞑っていた目を開き、陣を視界に入れた。

すると声が聞こえてくる。


「ん、ここは、どこだ?」


「光輝ぃ? ってあれ?」


「どうしたんですか、皆…… って、うぇ!?」


「おいおい何だこれは」


現れたのは四人組。男二人と女二人であった。


「貴殿らが救国の英雄となる者かね?」


王は四人に近づき、測るような目で話しかける。


「あなたは、何者ですか?」


光輝と呼ばれていた青年は王に向かって問う。が、周囲の騎士が不躾な問いに対して憤慨した。


「貴様、王に向かって無礼であるぞ!」


手練であろうその騎士は抜刀し、急所を外しつつも切りかかった。

瞬間、振り下ろされるはずだった剣は無音で明後日の方向へと飛んでいった。


「いきなり斬りかかるのは穏やかじゃあねえな」


光輝の前に立つ男は騎士を蹴り飛ばし、そう吐き捨てた。


「ほう、騎士のなかでも手練の者を容易くいなすか。貴殿の名は?」


四人と同時に召喚されていた男は気配を完全に殺してていたため、今、この時まで認知されていなかったのだ。

四人は呆けた顔で男を見ている。


「俺は…… ん? ここどこだ?」


先とは突然雰囲気が変わり、殺気はおろか敵意すら感じさせないただの一般人のような返答をする。


「お父様、名など後に聞いてもいいでしょう。それよりこの者たちに説明をするのが先では?」


王女が王を諌める。


「そうだな。レイラよ。コウキ殿も我が騎士が無礼を働いた、すまない」


「いえ、大丈夫ですよ」


一拍おいて説明を始める王。


「貴殿らを召喚したのは王である我の意向だ。早速理由についてだが、端的に言うと貴殿らにはこの国を魔物及び魔族から救って欲しいのだ。召喚には英雄格となる者のみを選別している故、魔力量、称号、能力においては申し分ないであろう。貴殿らが死ぬ可能性は限りなく低いと言ってもいい、それについては王の名において保証しよう」


「僕達が救国の英雄…… ええ是非ともやらせていただきましょう」


「ちょ、光輝、本気なの?」


吊り目勝ちの紺碧碧眼、金髪の少女が光輝に驚きの表情で聞いた。


「もちろん、困っている人がいるなら助ける。それが当たり前だろう?」


「光輝が行くなら私も付いていきましょう」


もう一人の黒髪黒目の少女が賛同する。


「ったく、光輝の人助けは今に始まったことじゃねえ。それによ、前の異世界召喚の時も大丈夫だったしな」


「しょ、しょうがないわね。なら私も行くわ」


結局四人は王の要請を快諾した。だが、一人、未だ返答していない者がいた。


(こいつら、異常だ)


男、田中 謳歌は思う。この四人はどうしようもないほどに英雄というものを甘く見ていると。

さっきは突然別人格のようなものが表れ、体が勝手に動いたが、恐らくあれは謎の声の主が言っていた残り十一の記録のうちの一つなのだろう。その証拠に戦闘技術のみが脳内に保管されている。


「えーと貴方は」


光輝が謳歌の方を向いて話しかけてきた。顔が美形なだけにちょっとした行動でも様になっているように見える。


「…… 謳歌だ」


ぶっきらぼうに答え、目線をずらす。元々謳歌はそこまで気さくな人格の持ち主でもないため、返答も味気のないものになる。


「で、謳歌さん、貴方ももちろん協力してくれますよね?」


断りづらい言い方をしてくる光輝に対し、謳歌は平然とそれに拒否を示した。


「断る、俺には関係のない話だからな。王様、拒否権はあるのか?」


王は謳歌を真正面から見つめ、笑みを浮かべた。


「謳歌殿は亡くなった戦友によく似ておる。よかろう、レイスロよ、金貨を謳歌殿に」


「はっ」


王の一番近くに控えていた騎士は謳歌に近づき、金属音が時節鳴っている皮袋を差し出してきた。


「これは、もらっていいのか?」


「はっはっ! もちろんだとも、単身、どこへでもゆくがよい。…… が、早々に死ぬでないぞ」


王は真剣な面持ちで言い、一人騎士を謳歌に付け、城門まで案内させた。


謳歌が去ったのを見て、王女は王に問うた。


「お父様、よろしいのですか? みすみす取り逃がしてしまって」


四人に聞こえないように聞く。



「ああいう目をした者をよく知っておる。レイラよ、アレは我々が何をしようとこの城から出ていったであろうよ」


王女は大きく目を開き、王を見た後、諦めたような溜息を着いて従った。


「光輝殿、度々すまないがあの者は単独行動のほうが向いておろう。一応信頼のおける者を一人付けている、心配はいらぬ」


王は優しく光輝に声をかけ、残りの三人にも同様、優しく話した。

そこへ高めの声で王に進みでる人間がいた。


「王よ、早々に解析をしたほうが良いかと」


頭部まで覆うフードの付いたローブを纏う魔術師が白紙を取り出し、王へ言った。


「そうだな。貴殿らにはまず宮廷魔術師であるフェンドラに能力解析をしてもらう、結果によって指導法が変わるのでな、必ずやってもらいたい」


四人は同時に頷き、フェンドラの下へ一人づつ立ち、解析をしてもらう。

一人目は光輝から。


名:天宮 光輝

性別:男

魔力量:SSS

筋力:B

対魔力:C

特殊能力:天の加護A 英雄格A 天性の成長A


「おお! なんという能力! 素晴らしい、素晴らしいぞ!」


王は白紙に刻まれた文字を注視し、歓喜の声を上げ、周囲の騎士も度肝を抜かれていた。


次は金髪の少女。


名:高坂 アリス

性別:女

魔力量:S

筋力:D

対魔力:S

特殊能力:詠唱破棄EX 英雄格C


次は黒目黒髪の少女。


名:零宮(ぜろみや) 真理

性別:女

魔力量:A

筋力:D

対魔力:EX

特殊能力:魔術結界(フォートレス)EX 守護神の加護EX 英雄格B


次は茶髪のチャラそうな青年だ。


名:一条 (ごう)

性別:男

魔力量:E

筋力:EX

対魔力:S

特殊能力:戦神の血SSS 無窮の血筋A 覇道B 英雄格EX


三人の解析結果も光輝と全く引けを取らない凄まじいものであった。四人は凄いのかどうか分からないため、フェンドラに質問をした。


「あの、僕達の能力はそれほどのものなのですか?」


フェンドラは光輝たちに一枚の解析結果の記された紙を渡す。


「それが兵士の一般的な能力だ」


名:モドリー

性別:男

魔力量:E

筋力:C

対魔力:E

特殊能力:剣技C 根性C


見せられた解析結果は明らかに光輝たちよりも低いものであった。四人はこの事実を再確認し、やはり自分達が異常なこと知る。

それもそのはずだ、一条はさっき異世界に一度渡ったことあるような口振りをしていた。その世界でも似たようなことがあり、結果、有り得ないほどの能力をすでに会得しているのだということ。


「貴殿らは以前に戦いを経験したことがあるのか?」


「ええ、前の異世界では勇者召喚というもので呼び出され、魔王を討ち滅ぼしたことがありますね」


王は強さの秘密がそこにあることを確信し、一筋縄ではいかなそうであると悟った。


「ふむ、こちらとしても有り難い、だがこの世界にもルールがある。指導はしなければなるまい」


「そうですね。私達もこの世界のことはよく知りませんし、ね、光輝」


「う、うん、そうだね」


にこやかに光輝のほうを向く真理、それにすかさずアリスが反応を示す。


「もう、光輝ってば、デレデレして〜」


「そ、そんなこと無いよ!?」


今までの余裕のあった表情から一転、二人の少女の間で動揺している。一条はいつも光景だ、とボヤいて早々に去っていった男のことを考えた。


(謳歌、か。白髪に黄金の瞳。明らかに日本人離れした容姿だが、雰囲気は俺らと変わらなかった。いったい何者なんだろうな)


見た目に反して冷静沈着な性格だ。元々、武の神童と言われたほどの実力があり、時には日本政府から世間には言えないような裏の任務も任されていた。結果的に死やグロテスクなものは見慣れてしまって、こういう事態にも冷静に物事を考えることができた。


解析が終わった後は四人の召喚者を招いて王たちとの食事会が行われ、日が過ぎていった。


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