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六転
なんとかその日のうちに、荷物だけは運び込むことができた。
おやじさんの『知り合いの元の連れ合いの従兄弟』とやらが所有しているアパートは築四十余年、流石に取り壊しが決まるだけのことはある、と思わず納得がいくボロさ加減だった。
六畳一間風呂トイレつき、という同じ間取りが三部屋づつの二階建て。
それだけの床面積があっても、3LDKと1LDKを占領していた什器、金庫、事務用品、檻、水槽、商品、餌、家財道具などを運び込むと、けっこう手狭に感じるものだ。
「ふぃい」
柊はかろうじて畳が見えている部分を見つけ、そこにゴロリと寝ころんだ。
寝そべったまま、煙草に火をつける。
「恨むぜ、社長」
これで給料がよくなければ、とっくに辞めているのだが。
あ。一服したら、商品たちに餌やんなけりゃ。
あれ?
灰皿どこにしまったっけか?
柊誠の長い一日は、今しばらく終わりそうにない。