三転
関東の北のはずれ。
とはいうものの、現代では高速を飛ばせば移動時間はいくらもかからない。
「そいつは災難だったなあ」
脱サラして食用ガエルの養殖業をはじめたというおやじさんは、少しも同情していない口調でそういうと、からからと笑った。
「ま、長い人生、いろいろあらあな」
「それでですね、おやじさん。
おやじさんのところの飼育小屋、この前、ひとつ余っているとかいってたでしょ?
あれ、使わせてもらえないかな?
いや本当、会社の移転先が決まるまでの、本当に少しの間だけでいいんだ。
本当に、お願いします」
「駄目駄目。
第一、社長だって今どこにいるのかわからないんでしょ?
それに、ヘビのにおいが染みつくと、ガエルの育ちが悪くなるんだよね」
後者は明らかにいいわけである。
「あああ。
あの、先立つものはさ、とりあえずこんだけ用意したから。
これで、なんとか相談に乗ってくんないかなあ」
「……おれんところは駄目だけどね。
ま、お互い長いつきあいだし。
そうさなあ。
おれの知り合いの元の連れ合いの従兄弟が、近く取り壊す予定のアパートがあるとかいっていたなあ。
そこなら、今は人が入っていないしなんとかなるかも知れん。
なんなら、口利いてやろうか?」
否も応もない。
「お願いします!」