1話目 友達がいません
魔界のとある辺境の村。
そこで、私リリィは育った。十六年前のある日、村長の家の前に捨てられていた私を拾ったのは、村で魔女と呼ばれていた老婆であった。
彼女が私を拾ったのは単なる気まぐれであった。たまたま機嫌のよかった時に、捨て子である私を見て弟子にしようと思いついたらしい。その話を聞いたときは、この魔女がそんなことを思うとは...と驚いたものである。
魔女に拾われ、すくすくと育ったものの、私には全くと言っていいほど友人と呼べるものはいなかった。たまに魔女のお使いで店に行くことはあるが、それだけである。誰も彼も事務的な会話だけをしてさっさと終わらせようとするのだ。
そのことが、子供心にどれだけ傷を付けたか...。今でも思い出すと辛い。
まあ、でもそれは仕方がないのかもしれない。
ただでさえ魔女は気難しく他人とあまり関わろうとしない。その上、おかしな薬を研究していると村ではまことしやかにささやかれているのだ。
そんな危険な人物に、いくら魔界にすむものだといっても近づきたくはないだろう。
正直私もそう思う。
それでも長年一緒にいれば情もわく。今では家族も同然だ。
まあ、そんなことがあったものだから、必然的に私も人見知りになるというものだ。もうこればっかりはどうしようもないと思う。それだけならまだいいのだが、子供の頃の私はシャイな内面を隠すために無表情の仮面をかぶろうと決意したのだ。何故そんなことを思ったのか、今考えれば謎である。
無表情で生まれつき目つきも悪い、さらに魔女の弟子。
ここまでそろっていて率先して関わろうとする奇特な人物はなかなかいないだろう。少なくともこの村にはいない。
結局なにがいいたいかというと、十六年たった今も友達がいません。
......だからこそ、誰かが私を訪ねてくることなど満に一つもないのである。