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まほーつかいたち(てきとう)  作者: たんたかたーーん
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始まり

初投稿きんちょー

轟音。

何か巨大で固い物に、ダンプカーが全力で突っ込んだのではないか?と、思うような。


しかし実際に突っ込んだのだ。ダンプカーではなく人間が、『竜』に、全力で。

体長16メートル。赤い鱗に覆われ、鰐のような顔。巨大な口の中には鋭利な牙が並ぶ。

火竜と呼ばれる化け物の王である竜の一種。


俺は轟音で体を震わせながら、魔力を媒体となる剣に流し魔法を構築、発動。


俺の武器、魔仗剣『罪人の宴』から化学系四級魔法『爆刃片風』が発動し、竜の顔付近に着弾。爆風にのった、魔力によって生成された刃の欠片が火竜の顔を引き裂こうとする。しかし、竜の鱗は強靭で、加減した四級魔法では傷をつけることはできない。


火竜が此方をを向く。いや、向くな恐いから。


火竜の口から赤い燐光が漏れる。魔法を構築し始めていた。火竜の魔力は人間と比べて桁違いだ。発動速度、威共に俺を余裕で上回り、もし直撃しなくても余波だけで重症だろう。


しかし、火竜に一迅の風が迫る。


風は背中の中頃からから首までを、高密度の鱗、筋肉、骨をまとめて切断。

火竜の頭上に相棒である壊理の喜悦の浮かんだ顔を発見。その上半身は普段より一回り大きい。


俺は自然系四級『尖雷双槍』を全力で発動する。二本の雷の槍が胸と頭を貫き火竜を絶命させた。


倒れる火竜から壊理が飛び降り、着地地点にヒビをいれる。重すぎだろ。


「たいしたことなかったな」


壊理の発言でようやく緊張が解ける。つーか怒る。


「何がたいしたことないだ。十分強かっただろうが。お前も身体系の『限定強化』を使ってたじゃないか」


「だが強化したのは上半身だけだ。この程度の竜ならば全身強化するまでもない。」


心底呆れたような態度をとりながら歩いてくる。イラつく。一発殴ってやる。仕返しが恐いから頭の中で殴る。


「あの火竜はまだ、成体になったばかりだ。体もまだ小さかったし、お前とは鍛え方が違う」


「あたりまえだ前衛と後衛を一緒にするな。まぁ、小さい方が楽でいいじゃないか」


「化け物の王の一種が、お前の器や心のように小さくては困る」


「壊理の脳は小さいどころか無だな。その証拠にお前は馬鹿だ」


「ならば首から上が無くなったら、お前も脳がないことになるな」


壊理の魔仗剣『破壊の屍徒』が迫る。俺は身を屈めて回避。あ、ちょっと髪が切れた。チクショウ。


「ほらみろ。馬鹿だからすぐ手を出す。やーいばーか」


言いながら全力で刃を回避して全力で逃げる。


俺たちの日常だ。

壊理の後ろに竜の死体があるのも、普通だ。




空には、特になんとも思わない月が輝いている。


照らされているのは、亀裂の入ったアスファルト。潰れて修理するより、新しく買った方が安いであろう車。建物は、形を保っている方が少なく、ガラスは割れて飛び散っている。


そんな町に、いや、町だった所に晩冬の冷えた夜風が吹く。


俺と壊理は焚き火を挟んで座っていた。弱々しい炎からでる煙が夜空に昇ろうとし、風に吹かれ霧散する。

壊理を見る。特に意味はない。いや、いつ夕方の仕返しをされるか分からないので見る。


しかし何の反応もないな。それは平和でいいんだけどつまらない。まぁもし本気で壊理が俺を切ろうとしたら、一瞬で真っ二つになるし。首か胴体かはわからないけど。


やっばり此処――火竜を屠った場所――で野宿しないで、帰るべきだったか。いや、竜と殺し合いした後に何時間も、車の運転なんてしたくない。作戦名は命を大事にだ。今考えた。


とりあえず携帯を取り出し立体映像を起動。立体の地図が浮かび上がる。現在地は、アロシス后国の首都エンリス市から、南に192キロメートル。ド田舎のアルニンという町のようだ。


まぁ今回の竜、あと壊理のせいで使えなくなったけどな。俺は関係ない。無罪を主張する。悪いのは二人、いや、二匹だ。


などと、壊理をちょっと馬鹿にした自分の考えで、気分が晴れる。晴れても暇だ。


なんとなく、魔仗剣を鞘から抜いて見る。最上級魔仗剣『罪人の宴』が、月光を受け鈍く光る。1300センチほどの刃に、赤黒い30センチほどの柄。そこに3つ、宝石が填まっている。魔宝玉だ。魔力を通し、その魔宝玉が対応している系統である魔法の、構築を補助してくれる。今填まっている魔宝玉は、自然系統と化学系統、あとの1つは単純に、魔力の伝導率を上げるものだ。


適当に点検していると、壊理が口を開く。


「黎。俺が突っ込んだ後撃った魔法、あれでは俺の追撃が後1秒遅かったら死んでいたぞ」


始まった。


「お前の陰湿な魔法ならば、自然系三級魔法『縛鋼炎』のほうが良かっただろう」


こいつはこうやって、教師のように口を出してくる。しかも名前をちゃんと呼びやがった。不吉。でも正しいこともなくはない、が素直に聞くつもりは愚かな政治家の知能よりもない。


「お前を巻き込まないように配慮したんだ、感謝しろ。あんな近距離で『縛鋼炎』を使ったら、お前も燃やすぞ」


「だから普段から魔法を制御できるように、鍛えろと言っている」


む、壊理の方が階級が上だから言い返せない。


俺は魔法使階級が2級、壊理は1級で最高クラスの魔法使だ。


「次からはお前を巻き込むようにするさ。それで敵ごと死んでくれると当社比で、300パーセント嬉しい」


「ふん。俺が死んだら誰が軟弱な後衛魔法使を守るんだ」


あの馬鹿にしたような笑み、なまじ顔がいいからムカツク。不細工だったとしても壊理ならムカツク。


闇夜と同色の髪。碧眼に神秘的な白い肌。多少中性的な壊理は、黙っていればモテるだろう。黙っていなくても、エンリスには壊理の女がいっぱい居るらしいが、俺は信じない。信じたくない。


魔仗剣『罪人の宴』の刀身に映った自分の顔を見る。赤銅色の髪に薄い茶色の瞳。肌は白いが人間的な白さだ。壊理と比べても悪くない。と、思うことにする。 そうしないと壊理を殺そうとしてしまう。まぁ逆に殺られるけどね。


携帯を見るともう11時だ。そろそろ寝ないと明日に響く。


「そろそろ寝るわ」


「分かった。三時間交代でいいな?」


「ああ」


竜との戦いで精神を消耗していたのか、意識はすぐに闇に落ちていった。


朝の陽射しが廃墟となった町を照らす。見る光景は昨日と変わらない。


元アルニンの町に居る俺と壊理は、アロシス后国の首都エンリス市にある事務所に帰るところだ。


昨日のうちに剥ぎ取った火竜の目と牙、爪に脳を車に積む。目と脳は枉通宝に、牙と爪は剣の材料として売ることができる。


「さて、いくぞ」


俺は優しいから人間として終わっている壊理に声をかける。返事はないが助手席に乗り込んでくる。ここらへんが終わっている。返事しろや。声には出さないけど。


多少、いや、結構古い軽トラが、排気ガスを出しながら疾駆する。荷台に積んである荷物がうるさい。


二人でいるのにずっと沈黙というのもアレなので、隣で魔仗剣『破壊の屍徒』を抱いている壊理に話しかけよう。てか、なんで抱いてんだよ。あれか?常に刃物を持っていないと精神が案定しないのか?どこの殺人鬼だ。うちの事務所のか。


しかしこんな危ない奴にでも、聞かないといけないことがある。


「後ろから殺気が飛んでくるんだけど?」


「そうだな。この殺気の強さ、800歳級の竜だな。喜べ、昨日の火竜の4倍だ」


満面の笑みでなに言ってるんだこいつは?殺気よりこいつのことを理解する方がマジキツイ。理解する必要はない、と考えたらだいぶ楽になった気がする。


「とりあえず車から降りるぞ!」


隣を見るとすでにいない。バックミラーから走る壊理が見えた。そんなに闘いたいか。


俺もすぐに車を止めて降りる。壊理を追いかけるが無理だ。追いつかん。前衛の剣士である壊理に、追いつけるわけがない。

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