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わけわからないツインテールに飛ばされてから十分。
俺はまだ低空飛行を続けていた。
何故か身体の自由が利かず、大人しく飛んでいるしか選択肢がないのだを
結構なスピードだったのだが、さすがに十分も経過するとその速度に目が慣れてきた。
猛スピードで飛ぶ俺を、慌てて避ける制服姿の生徒たちの表情を鑑賞する余裕すらある。
これ、どうすりゃ止まるんだろうか。
純夏を見つけたら止まるとか、そんな便利な設定になってねーかな。
それにしても、本当にここは魔法学校なんだな、と実感させられる。
俺を避ける生徒たちは、ある者は自らが上に飛んで回避し、ある者は強風を俺にぶつけて向きを変え、ある者は障壁を発生させて俺を跳ね返す。
っていうか、もう二回も障壁にぶつかっている。
泳ぐように床と水平に飛んでいるため、顔から障壁にぶつかることになってかなり痛い。
そんなことを考えていると、また障壁に跳ね飛ばされた。
これで三回目だ。
どういう具合なのか、今回はかなり高く吹っ飛ばされた。
上から見下ろす形となり、視界が開ける。
疎らに見える生徒の中に、一際存在感を放つ人物を見つけた。
俺を見上げ、黒目勝ちな大きな目をさらに見開いている。
「りっくん!?」
一日も離れていないのに、もう懐かしいような感じのする声。
やっぱり純夏だ!
純夏が俺の名前を呼んだ。
「純夏!!」
純夏を見ながら俺は落下して行った。
「ひゃああぁぁぁぁ!?」
固く冷たい床へ叩きつけられるのを覚悟して目をつぶった俺を待っていたのは、何か柔らかい感触だった。
……あんま痛くないな。
なんつーか、柔らかいしあったかい。
まてよ……なんか今、絹を裂くような悲鳴がしたよな?
恐る恐る目を開けると、白い布が見えた。
これは、パ、パンツ!?
どうやら俺が床に打ち付けられなかったのは、女生徒に激突したかららしかった。
今はその女生徒に覆いかぶさる体制になっていた。
しかも俺の手は、女生徒の足を掴み思い切り広げて純白のパンツを丸出しにさせてしまっている。
やばい。これは本気でやばい。
「りっくん、何してるの!?」
純夏が駆け寄ってきて、俺と女生徒とを引き離した。
「土御門さん、大丈夫?」
「う、うう……」
純夏に尋ねられた女生徒は呻きながら立ち上がると、俺を睨みつけた。
「悪い!
怪我ないか?」
女生徒に向けて慌てて頭を下げる。
正直、ちょっと謝ったくらいで許してもらえるとは思えなかった。