3
家へ帰り、飯野や後藤に純夏についてメールで訊くが、返信は
「水瀬のかわいい姿が見れなくなって辛いのはわかるけど、少し落ち着け」
「寂しくて頭変になったのかよwwww」
なんていうもので、真剣に取り合ってくれやしない。
どういうことだ?
ドッキリ?
いや、純夏はこんな無用な心配をかけるような奴じゃないし。
俺がおかしいのか!?
そう考えそうになって、ハッと気づいてメール履歴を見る。
いや、違う。俺はおかしくない。
履歴には、昨日の純夏とのやり取りが残っている。
純夏は絶対に留学なんてしていない。
しかし、このまま周囲に訊いていても埒があかない気がする。
俺は純夏に電話をかけた。
二回コールしたあと、純夏の鈴を転がしたような声が答えた。
「りっくん? 急にどうしたの?」
昨日うちに差し入れをしてくれたときのような、いつも通りのトーンだった。
少し面食らうが、本題を切り出す。
「純夏、お前、今どこにいるんだ?」
純夏の笑い声が耳をくすぐった。
「もー、りっくん何言ってるの?
イギリスにいるに決まってるじゃない」
俺はキッチンへ向かった。
「イギリスのどこだよ?
住所は? 留学先の校名は?」
純子が言葉に詰まった。
「それは……」
昨日食べたハンバーグの入っていたタッパーが、食器洗浄機の中にまだ入っているのを確認する。
タッパーの蓋に、水瀬と書かれている。
やっぱり純夏は、昨日俺の家に来たんだ。
「純夏、昨日ハンバーグ持ってうちに来たろ」
畳み掛けるように言うと、純夏は動揺を隠さずに、逆に俺に質問を投げかけた。
「りっくん、どうしておぼえてるの」
どうして? なんだよ、その質問。
「どうしても何も、お前は留学なんてしてないし、イギリスにもいない。
昨日、ハンバーグおいしかった? って、メールで訊いてきたろ?
留学してる奴はそんなメールするわけない」
なんだか、純夏を責めるような口調になってしまったが、今は優しく話す余裕なんてなかった。
「何があったんだよ!?
言えないようなことなのか!?」