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股間の上で何かがもぞもぞと動いた。
ビクリとして目を開ける。
布団がもぞもぞ動いている。
バッと布団をめくり上げると、同室になったらしいツインテールと目が合った。
「おはよ」特にに慌てるでもなく、俺に朝の挨拶をしてくる。
「お、おはよう?」
場所が場所だけに、ツチノコ的な生物が牙を向いているシーンを想像していた俺は、相手が人間で安堵した。
……いや、安心してる場合じゃねえ!
「何やってんだよ!?」
今まさに俺の下着を下ろそうと手をかけている少女の手を、引き剥がした。
「すっきりした目覚めを提供しようかと思って」
真顔でそう言い切った少女の手には、俺のケータイが握られていた。
画面には、バナー広告のエロさに釣られてダウンロードした漫画が表示されている。
ちょうど今のこの状況と似通ったシーン。
「返せ!」少女の手からケータイをひったくり、ホーム画面に戻す。「勝手に見るなよ!」
「あーゆーこと、してほしいんじゃないの?」
少女が首を傾げる。
もちろん、してほしくないわけではないが
「おかしいだろ、いきなりこんな!」
少女によって脱がされたであろうズボンを履く。
ふと、視界に窓が映る。
窓の外は明るく、太陽の光が部屋にも注ぎ込んでいた。
ケータイの画面で時刻を確認すると、午前五時四十九分と表示されている。
あー、あのあと寝ちまったのか。
夕飯すっぽかしたこと、純夏に謝らねえと……。
でもまだ起きてねえよなあ。
あ、そういえば俺、こいつ起きたら質問しようと思ってたんだ。
「なあ、お前、名前は?」
「リア。リア・アルカヘスト。
律斗、よろしく」
何故だか俺の名前を知っているらしい。
相変わらず無表情で、握手を求めてくる。
無視するのも気が引けるので、リアと握手をする。
ひんやりとした手だった。
肌はきめ細かく、すべすべとしている。
「リア、お前は何者なんだ?」
「調べていいよ」リアはセーラーカラーに通っているリボンスカーフを、するりと外した。
魅力的な誘いだが、今はそれよりもリアがなんなのか本気で気になる。
そのまま服を脱ごうとするリアの白く小さな手を制止する。
「リア、真面目に……」
真面目に答えてくれ、そう言おうとした矢先、ノックの音が部屋に飛び込んだ。