やっと魔王の城に行くそうです
「しかし、よくあっちの道を選んだものだわ。違う道を選べばあんな事にならなかったのに」
僕たちはあの砂漠のような暑いところからやっと抜けられた。そして今、ユウナの説教を受けている最中だ。
「それは……」
ローナが何かを言おうとしたが途中まででやめてしまった。言い出した本人が言い訳の言葉に詰まってしまったのだ。
「それは、早く愛莉を助けたいからよ!」
光莉は全く怯まない。
「そうかもしれないけど、もう少しで全滅だったんだよ?」
冷静に正確に的確に突いてくる。
「いやっ、でも……」
光莉も抑えられてしまった。恐るべし、防御専門のユウナ。
この中では一番頭がキレるらしい。今までの三大妖精とやらがあんなのばかりだったから、僕としてはとても助かる。常識人が一人いるだけでだいぶ変わる。
光莉も普段は良いが、妹LOVEスイッチが入るとダメだ。そのスイッチが入った光莉を止めるなんて……。
「まあ、やってしまったものはしょうがないよ」
「そーだよー」
安全派だった僕とカリナが二人のフォローに回った。
「それもそうね。でも、あまり無茶をしないように。特に妹さんを助けたいのならね」
ユウナは光莉の方を向き軽く肩を叩いて言った。
「……はい」
どうやら本当に妹LOVEスイッチが入った光莉を止めてしまったらしい。僕が見てきた中で今までこんな事は見た事がない。
「よし、反省は終わったところで、これからどうする?」
ようやく三大妖精が全員揃ったんだ。すぐにでも出発して愛莉を助けたい。
「何でも良いよー」
こいつはやる気があるのかないのか……。カリナは適当な返事をした。
「うちはすぐにでも魔王の城に行った方が良いと思うで」
ローナは僕たちの気持ちを汲んでくれたのかわからないが、早く愛莉を助けた方が良いと言ってくれた。
「私も魔王を倒して妹を取り戻したいわ」
光莉はスイッチが入っているのか?いつもなら『早く行きましょ!』って言うはずなのに……。
「僕は作戦を立てた方が良いと思うけど……」
単純に突っ込んで良いものではない気がする。どんなところか知らないのに作戦も立てずに行くなんて危険だろう。
「魔王の城までまだ結構距離あるし、歩きながらでも作戦は立てられるわね……。おし、魔王の城に向かいましょう」
ここのリーダーはユウナとはっきりわかるくらいだった。まとまりのなかった僕らを一瞬でまとめてくれた。こういう人がいると安心感が全く違う。
カリナは何かヤバイ感じを時折出すし、ローナはバカで泣き虫だし。今までは僕がリーダー的なことをやっていた。しかし荷が重かった。もともとあっちの世界では無縁なことだったので疲れた。
「わかったー」
カリナは返事をしてユウナのあとをタッタッタッと小走りで追いかけた。
「そうやな」
ローナもカリナに続いて歩き、残りは僕と光莉だけになった。
「行くか」
僕は光莉に声をかけ三人のあとを追った。
「うん」
光莉が最後尾となり僕たち五人は魔王の城に向けてやっと出発した。
これまでは魔王を倒すために三大妖精を探していたが、やっと本題に入っていけたのだ。
「魔王の城までどのくらいかかるんだ?」
場所を知らない僕は時間を聞いた。
「あと一週間くらいかな」
ユウナは軽く答えてくれた。
「そんなにかかるの⁈」
光莉も驚いたようだ。
一週間なんて全く考えていなかった。って言うか、こっちの妖魔世界に来てから時間感覚がおかしい。
太陽はずっと登ったままだし、沈んでいく様子もない。今まで大変なことが続き過ぎてそんなことも気づかなかった。
「だいたいそんなもんやろ」
ローナも普通じゃない的な感じで軽く言った。
「お、おい、それより、いろいろとおかしいことがわかったから質問して良いか?」
少し目を他の場所に動かせばいろんなことが変なことがさっきからわかるのだ。
「どうぞー」
カリナは興味があるのかないのかわからない声のトーンで言った。
「まず夜ってあるのか?」
太陽が沈まない白夜と言うのは知っているが、それなのか?
僕たちがこっちに来てから十時間くらいは経っているのではないか?それなのに全く太陽が移動していないのだ。
「「夜?」」
反応したのはローナとユウナだった。しかも疑問系の反応だった。
「知らないの⁈」
光莉はビックリしたらしい。声がひっくり返って凄いことになった。
声がひっくり返ったことが恥ずかしかったのか、口を手で抑えている。
それほどビックリしたのだろう。
「夜ってなにー?」
のんびりトーンでカリナが僕に聞いて来る。
「簡単に言うと真っ暗になるんだよ」
実際地球は自転していて、太陽が見えないとくらい。つまり夜になるのだ。
「真っ暗な日なんてないわよ」
何を言っているのというようにユウナが言った。
「そや、暗くなるなんてあり得んで。洞窟に行くんやったら暗くなるけどな」
どうやら本当に知らないらしい。『異常気象』も知らなかったし、こっちの世界では変わっていることが多くありそうだ。
「ずっと明るいの?」
光莉も夜がないことに興味があるらしい。
「そーだよー。そんなことがあったなんて全く知らなかったー」
三大妖精が全員知らないってことは夜なんてものは存在しないのか。
「じゃあ、あれって太陽か?」
天で光っているものを僕は指した。
「そうよ」
「そんなん当たり前やん」
何だ、それは同じなのか……。ちょっとガッカリではある。もしかしたら全てが違うのかと思ったのだが……。
まあ、そこは僕の楽しみが一つが消えただけだ、問題は特にない。
「太陽は知ってるのに、夜は知らないのか……」
ここは宇宙の何処かの惑星なのはわかったけど……。わかったところでどうにかなるわけじゃないか。
「じゃあ、宇宙は知ってる?」
今度は光莉が質問した。
「うちゅー?なにー、それー?」
『うちゅー』のがわからんわ!とツッコミをしてしまった。もちろん口からこぼれてはいないが。
「宇宙は知ってるわ」
ん?カリナは知らないようなのに、ユウナは知っているようだ。
「うちは知らんなぁ」
ローナは知らない……。どうなっているんだ?
「どうしてユウナは知ってるんだ?」
いや、僕と光莉にとったら知らない方がおかしいが、二人の妖精が知らないと言っているのだから、一人知っている方がおかしいってことになるのだ。
「私はちょっと違う世界に関して興味があってね。それで少し調べてるのよ」
へー、そんな奴がいるんだな。あっちの世界にもいるけど、いろいろと大変だろうな。
「ユウナは知りたガーリーだからねー」
なるほど……、って知りたガーリーって何⁈
「知りたガーリー?」
わけがわからない。何を示しているかが……。
「知りたいってあるやろ?」
「うん」
ローナが解説してくれるらしい。
「それとガーリックってのもあるやろ?」
あるけど、それがどう繋がってああなるんだ?
「あるけど……」
「その二つをくっつけて『知りたガーリー』になったんや!」
ババンッ!とローナの後ろに出ているような感じで言ってくれたが……。
「全く関係ないわね……」
そう、全く関係ねぇーって僕は心の中で思っていた。実際に言ったのは光莉だが……。
「それ以外にもー、『やりたガーリー』とか『面倒くさガーリー』とかあるよー」
もう何とかがりだったら、ガーリーになってんじゃん!
「あ……、そう……」
これにどう反応すれば良いのやら……。
「もう適当ね」
光莉も呆れてしまっている。
「で、本題に戻るけど、マジで一週間もかかるの?」
いくらなんでもそれはかかり過ぎるだろうと僕はずっと思っていた。
「うちは十日くらいかかると思っとるけどな」
え⁈何か日数伸びたぞ?
「僕は二週間かかると思うなー」
は⁈さらに伸びた。どうなってるんだ?
「え?え?何で伸びるの?」
一週間でも長いと思うのにどんどん長くなってくのは困る。
「歩くとだいぶ遠回りになるからねー」
『歩くと』に妙に反応してしまった……。
「歩くと?」
実際に口に出しちゃったよ……。
「飛べばすぐや」
…………。
「お兄ちゃん、飛べないもんね」
あっ、…………。言いやがった。僕がせっかく忘れようとしていたのに、光莉が言いやがったよ……。
「え⁈飛べないの⁈」
…………。はい、そうです。すみません……。
「私、飛べると思ってた……。世の中いろいろな人がいるんだね……」
いやいやいや、ちょっと待て。確かにいろいろな人はいる。
しかし、飛ぶことの出来る人間なんていないぞ!僕の妹を除いて。
「…………」
僕はこっちに来て最も弱いところを突かれた。反論する言葉が見つからない……。
「飛ぶとすぐに着くの?」
ん?何やら嫌な予感が……。
「まあ、それでも数時間はかかるわよ」
何でさっきは一週間って言ったのに、飛ぶと数時間で着くんだよ!そこちょっとおかしいだろ!
「あの……、すみません」
僕は恐る恐る会話に入る。
「何や、飛ぶことも出来ん奴が用でもあるんか?」
くっ、何だよローナの奴。人の弱みを見つけたら即漬け込んで来やがって。それにあの言い方、腹立つわ。
「歩くと時間かかり過ぎだなと思って……」
率直に思ったのがこれだったので僕は口が滑ってしまった。言うつもりは毛頭なかったのに……。
「うーんとねー、魔王の城までには海を通らないといけないんだよー」
え?海?
「何で通らないといけないんだよ?」
僕は飛べないと言われないようにすぐ言った。考えれば簡単なことなのに……。
「お兄ちゃん、頭おかしい?」
ああー!妹に言われた!兄の威厳が今なくなってしまった……。
「うちにバカって言っておいてお前がそれかい。うちよりもバカなんじゃないの?」
くっそー、腹立つ!ローナはいちいちウザい言い方をしてくる。
「優莉くんー、ドンマイー」
ぐはっ。ドンマイとは……。励ましてるけど……、僕の気持ち的に一番落ち込むやつだ……。
「意外と頭悪かったんだ……」
え?何その顔?ダッサみたいな顔は何なの?ユウナさんよ、一番酷いぞ。
「…………。やっちまった……」
何てこった。いつかやらかすと思ったがこのタイミングとは……。
「もういい!行くぞ!」
僕は恥ずかしさを堪えるため、忘れるために身体を動かした。
「「「「カッコ悪い」」」」
ガハッ。トドメを刺された。もう僕はミスをしないとこの時誓った。
少し考えれば魔王の城が海の真ん中にあるとか出て来るのに、何で口走っちゃったんだよ……。
あー、思い出すだけで恥ずかしい。あのやっちゃった感が脳裏をよぎる。
しかも僕が飛べないから時間がかなりかかるなんて、とても申し訳ない。
「光莉は良いよな……」
僕はボソッと言った。本当なら光莉も空を飛べないはずだから、僕一人がこんな惨めな思いをすることはなかったのに……。
「何か言った?」
ボソッと言ったので光莉には聞こえていなかったらしい。
「いや、何でもない」
僕たちは現在魔王の城に向かって歩いている……らしい。僕にはわからないので三大妖精の三人に任せっきりだ。
「あー、飛べればなー」
のんびりトーンで口を開いたのはカリナ。
そのトーンで言われると明らかに皮肉を言っているようにしか聞こえない。
「すまん……」
飛べる方がおかしい!って普通は言えるが、何たってうちの妹が飛べてしますからな……。
「お前は気にしなくてええわ。出来る感じ全くなかったから」
…………。僕は一回ジャングルから抜けるために飛ぶことを試していた。しかしふわりと浮くことすら出来ず、結局ローナと光莉に腕を持ってもらってジャングルを抜けたのだ。
「くそっ、言い返せない……」
言い返したいが言葉がない。完全に負けている。
「まあまあ、それまでに作戦とか考えれるから良いじゃない」
僕をかばってくれたのはこの中で唯一の常識人と言っていいユウナだった。
「でも、お兄ちゃんのせいで愛莉を助けることが遅れてるのよね」
うっ、心に刺さる言葉だ……。愛莉を助けたいと言っているが、僕のせいでどんどん遅れている。口で助けたいと言っているだけだ、情けない……。
「僕が飛べないから。そのせいで愛莉が魔王になったらどうしよう」
愛莉は今どうしているのか?実際どこにいて何をしているのか?僕には全くわからない。
「魔王になってるやろ」
え?何て言った?
「何よそれ!愛莉が魔王になってるってどういうこと!」
光莉の妹LOVEスイッチオン。いきなり激しくローナに当たった。
「そのままの意味だよー」
今度はカリナまで……。どう言うことだ?
「は?わけわからない。何言ってるの?」
僕も同感だ。愛莉がもうすでに魔王になってるって。こっちに来てからとても時間が過ぎたわけないだろう?
「えっとね、こっちの世界から逃げた魔王が確か妹さんに取り付いたんだっけ?」
ユウナは僕たち兄妹に聞いた。そして僕は頷いて答えた。
「その時点でもう新しい魔王の誕生なのよ。いや、身体は変わったけど魂は同じか」
ってことは、愛莉は取り付かれた時点で魔王ってこと?あっちの世界でもうすでに魔王になっていたと?
「え、嘘……。何で……?」
光莉は酷く動揺していた。今までそうなって欲しくない、絶対大丈夫、助かると思っていたのだろう。
「仕方のないことよ。でも、魔王を倒せば妹さんは帰ってくるわ」
そうだよな。仕方ないことなんだ。僕は自分に言い聞かせるように何回も心の中で言った。
「魔王を倒す?どうやって?愛莉を傷つけるの?」
光莉は思考がしっかりしていないらしい。それも愛莉が魔王になってしまったということがネックになっているらしい。
「魔王を倒すんや。妹は倒さん」
ローナは言った。しかし、僕には意味がよくわからない。魔王を倒すまでは良いが、愛莉は倒さない?傷つけないではなくて?
「そーだよー、愛莉ちゃんを助けたかったら魔王と闘わないといけないんだよー」
魔王=愛莉。僕の頭の中ではこうなっているのだが合っているのだろうか?
「それは愛莉と闘えって言ってるのとは違うのか?」
何がどう違うのか。
「魔王の魂と闘うのよ。実際には妹さんと闘っているのと同じだけど、ダメージは全て魔王に行くようにするわ」
どういうことだろう。愛莉と闘って、ダメージは魔王に行く。
「どうやってだ?」
普通に切ったらダメージは全て切られた本人に来る。
しかし魔王にダメージを食らわせることなんて……。
「僕の魔法でやるよー」
そうか!今まであまり意識していなかったが、こいつらは全員妖精で魔法が使えるんだ!
「なるほど、それで闘うのか」
これなら納得だ。安心して魔王と闘える。とか言って僕は全然役には立たないと思うけど……。
何たってこっちには三大妖精が全員いるのだから。
「その魔法で、本当に愛莉は傷つかないんでしょうね?」
光莉はカリナにぐっと近づいて、顔の目の前に顔をやった。
半端ない圧力だ。少しでもダメだったらお前を殺すとオーラで言っている。
「大丈夫だよー。これでも三大妖精だからー」
んー、カリナが言うと何だか説得力に欠ける……。それはのびのびとした喋り方が原因だろう。
しかし、カリナが魔法を使うところをまだ僕は一回も見ていない。闘いも剣を使うのではなく、素手で闘っているし……。それが怖いのだが……。
「こいつも三大妖精の一人なんや。信じてやり」
ローナはカリナの頭に手を載せて言った。
「そうだな」
ここで僕が疑っても何の解決にもならない。それなら信じ切った方が全然良いだろう。
「…………、わかったわ」
光莉も渋々了解したと言うところか。もともと光莉は良い奴だから僕としては気にしていない。問題は妹LOVEスイッチがオンになったときにどうなるかくらいだ。
「そろそろ魔王の城に到着なや」
僕たちはあれから数日船の上で過ごしていた。そしてついに、魔王の城まで辿り着いた。
「それにしても、海では敵に遭遇しなかったな」
城の周りが水ならどこから来るかはわかりやすいだろう。それに、僕らが妹を助けるためにこっちの世界に来たことは知っているはずだ。でなければ敵が襲っては来ないだろう。
「何か嫌な予感がするわね……」
ユウナも海で敵に遭遇しなかったことが気にかかっているらしい。
「そうー?」
逆にカリナは全然気にならないようだ。
「まあ、どっちにしろ全部倒さないといけないんやから変わらんやろ」
確かにローナの言うことは正しい。逃げながら魔王の城に行ってもどうせ闘うことになるのだから。闘うのが早いか遅いかだけの違いだろう。
「どうでも良いわ。私はすぐに愛莉を助けたいから」
どうやら妹LOVEスイッチがオンになっているらしい。やっとの思いでここに着いたんだ。僕にも気合が入る。
「おし、行こう」
僕は先陣を切って進もうとした。
「いや、ちょい待てや」
しかし、ローナに引きとめられてしまった。
「どうした?」
作戦は船の中でしっかりと立てたし、確認も何度もした。他に何か問題でもあるのだろうか?
「最初から装備しとき」
そう言ってローナは一番始めと同じように呪文を唱えた。
「よし、これでええ」
ジャングルで身にまとった装備をもう一回与えられ、僕と光莉の変身は終わった。
「じゃあ、行きましょ。愛莉を助けに」
今度は光莉が先陣を切って進んだ。
それに続いて僕ら四人も進む。
「ここからどれくらいかかるんだ?」
今はまだ魔王のある島に着いたところで城は見えているが結構距離はありそうだ。
「面倒だから飛ぶわ」
ユウナは言った。
「え?でも僕飛べないんだけど……」
一人だけ飛べないのは情けないが、仕方ないだろう。
「私とローナで運ぶわ」
ユウナはローナの方を見た。
それを受けてローナは頷き、僕の腕を持った。
こんなに真剣な顔のローナを見るのは初めてだった。それほどここは危険な場所なのだろうか?いや、敵の本拠地なんだから当然だな。僕が気を抜き過ぎてるだけだ。
「おーし、しゅっぱーつ!」
カリナの掛け声で僕以外の四人が飛び、僕はユウナとローナに引き上げられる形で空に浮いた。
「もうすぐそこだな」
僕たちは何事もなく城に近づいて行った。城に手を伸ばせば届きそうなところまで近くに来ていた。
バンバンバンバンバンバンバン
っ⁈何だ⁈
「気をつけて!撃って来たわ!」
ユウナが城の方を向いて言った。
その声と同時に僕らは今までの軌道からそれぞれズレて飛んだ。
「どうするの?」
光莉がユウナに聞く。
「まず優莉を城に降ろしたい。だからあなたとカリナでその場所を作って。空中戦は危険だわ」
その言葉と同時に二人は敵の方へ一直線に飛んで行った。
しかし、こっちに撃ってくる弾の数は減るどころか増えている。
「おい、どうする?僕を持っていたら避け切れないぞ?」
何だか自分がとても役立たずと言っているようで変な気分だった。
「ユウナは誰や?三大妖精の防御専門、フェアリープロテクトやぞ?」
ローナに少し強めに言われた。
そうか!もう避ける必要はないんだ。
「全ての光よ、我が盾に。今ここに集え!フェアリーガード!」
ユウナが呪文を唱えると僕たちの前には丸い盾が出来ていて、それが城から飛んでくる弾から守ってくれていた。
「さすが!」
これで僕らは安全だ。あとは……。
「カリナさん、敵を殲滅します」
「うんー、僕も殺るよー」
光莉は飛びながら弾を避け、持っている剣で敵を次々に斬っていく。
カリナはまたも黒いオーラをまとい城に降り、素手で闘っている。
「はっ!せいっ!はぁー!」
光莉は掛け声と共にどんどん敵の数を減らしていく。
「ふふっ、殺り放題だー!」
カリナは……、戦闘になると本当に性格変わるよな……。確実に心臓を一突き。
「だいぶ減って来たわね。これなら大丈夫そうね」
そう言ってユウナは少しずつ降下し始めた。それに合わせるようにローナも降下し、僕の足が地に着いた。
「もう大丈夫。ありがとう」
依然戦闘は続いている。敵の数は始めに比べて半分くらいに減ったが、まだ十五人はいるだろうか。
「私はローナを守る。優莉は敵を倒して来て」
ローナは戦闘が出来ないから防御専門のユウナが守るわけか。
「わかった」
そう言って僕は光莉とカリナの加勢をしに行った。
「お前らなんか相手にしてる暇はないわ!邪魔よ!」
光莉は城に降りて闘いながら、愛莉のことを口にしていた。しっかりと相手の急所を捉えながら倒していく。
「あはははー、楽しいよねー、楽しいよー!」
こっちは、何か……。でも確実に数を減らしている。
「はぁぁぁ!せいっ、はっ、うおりゃぁぁ!」
僕も敵を動けないようにしてから確実に仕留めていった。
「これでラストー!」
最後に敵を倒したのは光莉だった。
「終わったみたいね。しかし……」
ユウナは途中まで言ってやめてしまった。
「どうしたんだ?」
僕はそれが気になって聞いてみた。
「敵が弱いって言いたいんやろ?」
ローナがユウナに言う。そしてそれにユウナはコクっと頷いた。
「確かにねー」
カリナも闘いながら感じていたのか、その意見に賛成っぼい。
「そんなのどうでも良いわ。城の内部に進みましょう」
光莉一人で進み出した。それをおいかけるように僕らは小走りしたが、『敵が弱い』か……。その言葉が僕の心の中で引っかかっていた……。