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どうやら妹は魔王に取り付かれたようです

「邪魔だよー」

カリナはどんどん進み、それを阻む敵を次々に倒して行く。このカリナを見るのも久しぶりだ。

「どきなさい」

光莉も続く。

「少し飛ばし過ぎじゃないか?」

僕はカリナに言った。ここまで来るのに実に数分だ。

「魔王を早くー、倒さないとー、僕の気が収まらないからねー」

声のトーンは緩いが、一瞬見えた顔はかなり怒っているように思えた。

「場所はわかるのか?」

スピードがあっても、場所がわからないのなら意味がない。

「わかるよー」

何だと⁈わかるのか。

「マジで⁈」

僕は驚きで声が少しひっくり返ってしまった。

「だってー、僕ここで兵士やってたことあるしー」

「は⁈どう言うことだ?」

いやいや、おかしいだろ。カリナがここの兵士だったなんて。三大妖精って言われるくらい何だぞ?何で敵のところで兵士なんて……。

「まあ、潜入調査ってやつー」

何だ、びっくりした。本当は僕たちを騙しているのではないかと一瞬思ってしまったじゃないか。

「何でそんなことしたんだ?」

潜入調査をするほどやはり魔王は危険だったと言うことなのだろうか?

「僕の趣味ー」

はい?趣味って言った?

「趣味ってあの趣味だよな?」

潜入調査が趣味ってどうなんだよ……。

「そうだよー。敵のこといろいろわかるから面白いよー」

全く面白さを感じないのは僕が変なのか?それともカリナが変なのか?

「じゃあ、すぐに魔王のところには行けるってこと?」

光莉が入ってきた。

「そうだよー」

カリナは軽く答えた。相当この城について知っているらしい。

「だからカリナは迷いなく進めるんだな」

納得納得と僕は心の中で頷いていた。

「あー、敵いっぱいー」

カリナが指差す方には敵がうじゃうじゃといた。

「どうするんだ、あんな数?」

僕たちが見た中で明らかに一番多い。

「肩慣らし程度にやろうよー。じゃあ、僕が半分もらうから後はあげる」

なっ、一人で半分も倒すのか?

「半分も良いのか?」

僕は聞き返してしまった。

「そうだよー、じゃあ、お先ー」

カリナはそう言って敵に突っ込む。

「はー、とー、おりゃー」

この緩い声での戦闘、何もかもが久しぶりだ。

「なら、私は遠慮なく行くわ」

光莉はカリナとは反対の敵に向かって跳んだ。

本当に良いんだなカリナ。僕もそう思って、光莉の後に続く。

「剣技、乱舞!」

「旋風大回転!」

僕と光莉のコンビネーションが鮮やかに決まる。

「おおー、いつの間にー?」

カリナは素手で相手の心臓を突きながら聞いて来た。

「全て思いつきだけどな」

僕は笑って答えた。

「お兄ちゃん、よそ見しない!はっ!」

僕の後ろには敵が迫って斬りつけようとしていた。しかし、光莉が素早く気づき、倒してくれた。

「あ、悪い」

僕はいつもそうだ。戦闘中に気を抜くところが確実にある。それで今までミスをして来たのに全く成長していない。

「剣技、花吹雪!」

光莉は容赦無く敵を襲う。

「凄いなー、そんな技もあるのかー」

カリナは相変わらずこっちを見て闘っている。

「カリナさんも集中しないとやられますよ」

光莉からの注意が飛ぶ。

「ごめんー。全ての空よ、我に力を!フェアリーブレス!」

⁈な、何だ?カリナがいきなり呪文を唱えたら一気に敵の数が減った。

「どうー?僕の魔法ー」

これがカリナの魔法。攻撃専門、フェアリーアタックと呼ばれる人の力。凄い、一瞬で敵の数が。

「凄い、凄いよカリナ」

正直にそう思った。魔法を全然使わないから下手なのかと思ったが、三大妖精の中ではかなりの力なのではないかと思うくらいだ。

「どんどん倒すよー」

カリナは敵を容赦無く倒していく。僕も負けてられないな。

「旋風台風嵐!」

攻撃の範囲と威力を大幅にあげ、敵を蹴散らす。

「剣技、乱舞花吹雪!」

光莉も組み合わせ技で敵を倒す。

「まだこんなに残ってるのかよ!」

僕たちは確実に数を減らしていたはずだ。それなのにまだ大部残っている。

「全ての空よ、我に力を。真空空間!」

カリナがまた何かの呪文を唱えた。今度はどんな呪文なんだ?

と思っていたら敵がバタバタと倒れていく。

「おい、カリナ。何をしたんだ?」

僕は慌ててカリナに聞いた。カリナの敵だけではなく、僕や光莉が闘っていた敵も倒れてしまったのだ。

「ああー、敵がいる空間だけー、真空にしたんだよー」

嘘……、だろ?カリナにこんな魔法があって、ここまで強いなんて……。僕は圧倒的強さを見せつけたカリナに唖然とする以外なかった。

「お前、強すぎないか?」

僕はそれ以外の言葉が頭の中になかった。

「そうー?」

カリナは不思議そうに聞き返す。あいつにとってはこれが普通とでも言うのだろうか?

「何で今まで素手で闘っていたんですか?」

光莉がカリナの方まで歩いて聞いた。

「えー、だってー、この手で殺した感が魔法使うとなくなるしー。それに魔法が奪われたらー、何も出来なくなっちゃしー」

な、何だよこいつ。やはり異常な人物ってことは絶対に揺るがないってことらしい。

「そ、そうですか……」

さすがの光莉も少し引いていた。

「お、おい、てめぇら!お、おお、俺がいる限り、こ、ここ、ここは、通さないぞ」

足がガクガクと震えている敵が一人で立って言っていた。

「あー、一人残ってたかー。しょうかないなー」

カリナはそいつのところまで跳び、素手で首を跳ねる。

「心臓も良いけど、首を跳ねるのも良いよねー」

こいつには罪悪感がないのだろうか?明らかにおかしい。戦闘になるとカリナはS級犯罪者並みになる。

「ここは全員倒したかー。おし、魔王のところまで急ごー」

カリナは休憩の暇も与えずに魔王のところまで突っ走ようだ。

「「了解」」

僕と光莉はカリナ追いかけた。


「おらおらおらー!」

僕は敵をどんどん斬っていく。といっても、カリナや光莉が倒し損ねたおこぼれだが。

「どいてー、魔王のところまで急いでるからー」

カリナは躊躇なくどんどん進む。

「邪魔!」

光莉は障害になる敵以外に手は出さない。だから今こうして僕はおこぼれをもらっているのだが……。

「もうすぐだよー」

やっと、やっと着く。魔王のところへと。

「ここだよー」

カリナが止まった。その前には城の中のある門と言ったような扉があった。僕らの何倍、下手したら数十倍だ。

「ここね?」

光莉もそこで止まる。

「やばいヤバイヤバい!」

ゴロゴロゴロゴロゴロドンッ

僕は止まることが出来ず、足を躓き、転がる。そして、扉にぶつかってやっと止まった。

「痛てて……」

「何やってるの、お兄ちゃん?」

顔を上げると、カリナのぬぼーっとした顔と、光莉の呆れた顔がそこにはあった。

「あ、いや、ちょっとな……」

恥ずかしい。こんなに恥ずかしいのはいつ以来だったか……。

「大丈夫ー?」

カリナは心配してくれたが、それならいっそ笑ってくれた方が良い。心配されると余計恥ずかしいじゃないか。

「肉体的には大丈夫だ」

しかし、精神的に大ダメージだ。これはかなりHPが減ったぞ……。

「じゃあ、行けるねー。開けるよー」

ドンッ

カリナはこの大きな扉を一人で開けようとする。しかし、ピクリとも動かない。

「これは困ったなー」

カリナはうーんうーんと唸りながら少し考える。すると、

ギギギギギギー

何だ?扉が勝手に開くではないか。

「おおー、ラッキー」

いやいや、こういう場合ってだいたい罠でしょう……。

「はっはっはっ、よくきたな!わたしがまおうだー!」

扉が開いて奥の部屋に立っていたのは愛莉だった。

「愛莉!」

光莉は愛莉を見た瞬間、直ぐに走り出す。

「おい、待て!」

僕は止めようとしたが少し遅かった……。

「あっ、ガバッ、くっ……」

光莉は魔王からの先制攻撃を食らったのだ。

「フッ、ザコガ」

光莉はその場に倒れこむ。

「うっ、うっ、くっ、あっ」

一発で相当なダメージを受けたらしい。光莉は倒れてからずっと腹を抑えている。一瞬のことで目では追えなかったが、僕の直感が言っている。あいつは愛莉ではない、魔王だ。そして、僕たち三人よりもはるかに強いと。

「サァ、ツギハドイツダ?」

カリナが一歩も動くとこが出来ない。

「やばいねー、これ僕ヒビってるよー」

歯ぎしりをするようにカリナは言った。よく見ると、足はガクガク震えており、身体もビクビクとなっていた。

「光莉、大丈夫か⁈」

すると光莉は手でオッケーサインを出し僕にアピールした。

良かった、大事には至ってないようだ。だが、回復専門のローナがいなくなってしまった今、光莉を治すことが出来るのは誰もいない。これでもう、光莉は闘えないってことだ。

「優莉は下がってー。ここは僕がやるよー。って言うか僕以外がやったらダメだよー」

カリナは妖精で超回復があるが、僕と光莉は人間だ。自然に回復は出来ない。出来るとしても長い年月が必要になる。ここの適任はカリナか……。

ここに来てまたカリナに託さないといけないないんて、申し訳ない……。

「そうだな……、悪い」

どうして僕は肝心な時に闘えないのだろう。いつも守ってもらってばかりだ。自分の妹がやられたのいうのに……。

「オマエカ。スグ、ジゴクイキダ」

そう言って魔王は、愛莉の身体でこっちに跳んで来る。

「ここから離れていてー」

カリナは僕に言った。僕は頷き、光莉の元へと走った。頼むぞ、カリナ。今はお前だけが頼りだ。

「うっ、ガホッ」

光莉は口から大量の血を吐く。

「本当に大丈夫か?」

さっきはオッケーサインを出したが、今見る限り全然大丈夫ではない。むしろヤバい状況なんじゃないかと思えるほどだ。

「うっ、がっ、はぁはぁ、まあ、何とか……」

光莉は力なく答える。少しの油断とはいえ、光莉を一発でここまで仕留めるなんて……。やはり魔王といったところか。

「はー、とーう、てーい」

カリナは掛け声と共に攻撃を繰り出す。

「ふっ、ソンナモノカ」

だが、魔王はそれをことごとく受け流す。

「くそー、強いなー」

カリナはさらにスピードをあげ、超攻撃に転ずる。

「オソイワ、コンドハコチラカライクゾ」

カリナの攻撃をを受けつつ、魔王は反撃を仕掛けて来る。

「うがっ、くっ、おりゃー」

一発魔王の攻撃が入ったらしい。しかしカリナは攻撃の手を緩めない。ここで緩めたら一瞬で決着が着くことをわかっているのだ。

「くそっ、食らえ!旋風疾風突き!」

僕はいても立ってもいられなくなり、カリナに加勢しようと思った。それにカリナのことしか見ていないと思った僕はチャンスだと思ったのだ。

「ナンダゴミケラガ」

ドコッ

「かはっ!」

僕は一発で吹き飛ばされてしまった。

「優莉ー!だから下がってって言ったのにー」

「うがっ、ごほっごほっ」

くっ、くそっ!確実にやったと思ったのに。しかも完全に死角からの攻撃だっただろ。何で反応出来るんだよ。それに僕の最高速の攻撃だったのに……。

カリナはこんな化け物と普通にやりあっているのか……。

「クチホドニモナイ。ゼンインマトメテシネ」

魔王は両手を合わせる。

「アンコクマホウ、テンチメツ……」

呪文を唱えようとしたその時、魔王は頭をいきなり抱え始めた。

「クソッ、ナゼデテコヨウトスル。オマエハカクジツニフウジタハズダ」

どうなっているんだ?何が魔王に起こってるんだ?

「愛莉?愛莉なの?」

光莉は何かを感じ取ったらしい。それに愛莉って……。

「魔王がー、抑え込まれようとしてるー」

まさか⁈愛莉が魔王を自分から追い出そうとしてるのか?

「でてけ!にいちゃんとねえちゃんをいじめるやつはてでけ!」

どうやら本当に愛莉が自分に取り付いた魔王と闘っているらしい。

「愛莉、頑張って!」

光莉は痛みを抑えながら言った。

「全ての神よ、悪を懲らしめよ!心体分離!」

カリナは何かの魔法を魔王にかけた。

「おい、カリナその魔法って」

僕はもしかしてと思って聞いてみた。

「あー、かけるの忘れてたやつだよー。これでどれだけ攻撃しても愛莉ちゃんは怪我しないよー」

おい!今まで忘れてたのかよ!幸い、魔王が強過ぎて攻撃は一発も当たっていないが……。それもそれでヤバい状況だな……。勝てないじゃないか。

「ウオッ、ウオぉぉぉ!ハァァァァァ!フウフウ、ヤットオサエコメタゼ。メンドウナガキダ」

その言葉はヤバい。光莉を刺激し過ぎ……。

「あ?何って言った?愛莉が何だって?」

あちゃー、やっぱり。妹LOVEスイッチがオンになってしまった。それもかなり凶暴なスイッチだ。

「ソレガ、ドウシタ!」

愛莉、いや、魔王は光莉に向かって来る。

バチッ!

「クソッ、ナゼオマエガタイコウデキルンダ?」

一発目は確実にもろに食らっていた光莉が攻撃を受け止めたことが信じられないらしい。

「僕も加勢ー!」

カリナは光莉の加勢をしに魔王に突っ込む。

「アア、モウイイ。コレデオワラセル」

何だ?今までの雰囲気と全く違う。

「おい、二人ともすぐ離れろ!」

僕は二人に言った。

「え?何?」

「どうしたのー?」

が、遅かった……。

「アンコクマホウ、テンチメツレツ!」

床が、城が、大地が揺れる。巨大地震が起こっているみたいだ。

「くそっ!すぐ離れろ!」

まだ大丈夫のはすだ!頼む、間に合ってくれ!

「アンコクマホウ、アンコクレンザン!」

「きゃー‼」

「うわっぁぁぁ!」

間に合わなかった……。足元に気をそらしているうちに身体に攻撃。なんて巧妙な技のコンボなんだ。

カリナと光莉はその場でバタリッと倒れてしまった。

「くそっ!食らえ、風神疾風かまいたち!そして雷神雷落とし!」

僕の攻撃の中でもスピード、パワー共に優れている技を二つ同時に繰り出した。

「エ?ナンカヤッタカ?」

くっ、これだけの大技をやってノーダメージかよ!どうする?考えろ、考えるんだ!

「はぁぁぁぁぁー!」

魔王の後ろからカリナが攻撃をしようとする。

「ダカラ、ソンナノデワタシヲタオスコトハデキナイ」

魔王は振り返り、カリナを突き飛ばす。

「うわっ!」

だが、カリナはまた走って来る。超回復をフルに生かして、魔王に攻撃する前に完全に回復するようにしているのだ。

「こっちがおろそかだぜ!風神疾風かまいたち!」

完全に後ろを向いていた魔王に対し、僕は正面から見てもほとんどわからないかまいたちを使った。

「全ての空よ、我に力を!フェアリーブレス!」

正面からはカリナの攻撃。これで確実に捉えた。

「アンコクマホウ、ハリケーン!」

なっ⁈

「これならどうだ!旋風疾風突き!」

物理攻撃なら確実に当たるはずだ。至近距離とはいえ、かまいたちは物理攻撃ではない。それを上手く突かれてハリケーンでかわされてしまった。

「全ての空よ、我に力を!フェアリーランス!」

カリナの手は空気で出来た槍のようになり、魔王に向かって一直線に来る。

「フッ」

そう言って魔王は地面を蹴り、空に飛んだ。

「優莉、避けて!」

⁈な、何⁈

正面からカリナが猛スピードでこっちに向かって来る。

「カリナも上手く避けてくれ!」

猛スピードの技同士がぶつかり合う。

ドシャーンガチャーンバコーン

「うっ、くそが……」

僕はギリギリカリナの攻撃を避けれた。しかしカリナの攻撃を思っていたより範囲の広く、少し怪我をしてしまった。

「って、カリナ!しっかりしろ!」

僕の剣にはカリナが刺さっていたのだ。

「うっ、流石に痛いねー。でも大丈夫」

カリナは割と普通に立ち、剣をスポッと抜いた。

「僕には超回復があるからー」

カリナの傷口はみるみるうちに塞がっていく。

「でも、これは困ったなー。魔王が強すぎるよー」

どうやらカリナはお手上げらしい。ここまで魔法を使うカリナは見たことなかったが、それを全て受け流す魔王が強すぎるってことか。

「あっ、うっ」

光莉はさっきからあの場所から動けていない。見た限り足の骨が折れているように思える。光莉はもう闘えない。僕とカリナで何とかするんだ。

「光莉はそこで寝てろ!僕とカリナで何とかする!」

「で、でも……」

何とか出来る保証なんてどこにもない。むしろ確率はとても低い。だが、愛莉が魔王と頑張って闘っていたんだ。ここでほっとく訳にはいかない。絶対に助けなければ。


「でも、どうすれば」

何か案があるわけではない。しかし、僕と光莉には妖精のように超回復がないため、光莉の戦線離脱で攻撃力は格段に落ちた。だが、ここで誰かを失うよりマシだ。

「もう正面から行くしかないでしょー」

「そうだな」

小細工でどうにかなる相手ではないということだろう。実際魔王の力は強大で太刀打ち出来るものではない。だが、愛莉が待っているのだ。そんなこと言ってはいられない。何としても取り返さなければいけないのだ。

「行くよー」

カリナは跳ぶ。それに続いて僕も跳び、左右に散った。

「メンドウダナ。アンコクマホウ、ハリケーン!」

くっ、全方向への攻撃。散った意味がなくなってしまった。

「うぉぉぉ!」

カリナの声がここまで聞こえる。この凄い風の中でも必死に進もうとしているんだ。それに比べて僕は何だ?やる前から簡単に諦めて、少しはやってみたらどうだ?

「やってやるよ!おりゃぁぁぁぁぁ!」

僕もこの暴風の中に突っ込む。

「コレデオワラセテヤル。アンコクマホウ、インザンレンゲキ」

スパッ

な、何だ?僕の頬を何かがかすった。何も見えないのに、少し切れた。どうなっているんだ?

「おぉぉぉぉぉ!」

⁈カリナはこんな中でもしっかりと前に向かって歩いているのに、僕は何いちいち止まっているんだ。僕にも何か出来るはずだ。考えろ、考えるんだ。そうすれば何かがわかる。

スパッ

わかったぞ!

「これでどうだ!旋風台風嵐!」

僕はこの風より強いのを吹かせれば止むと考えたのだ。

「はぁぁぁぁぁ!」

僕の中で風を使う最大の攻撃。それでこのハリケーンも!

「クッ」

「てやぁぁぁぁぁ!」

バッ

ハリケーンが吹き飛んだ!おし、今だ!

「アンコクマホウ、インライヅキ」

「うわっ!ガホッ、ガボッ」

そこには目を覆いたくなる事実があった。

「カリ……ナ?カリナ!おい、しっかりしろ!」

カリナが魔王に刺されていたのだ。

「フッ、コレデオワリダ」

魔王はカリナを地面に振り払い、そして、

「おい、やめろ!やめるんだ!やめろぉぉぉぉぉぉ!」

「優……莉」

ズシャッ

…………。

「フフフフフ、ハハハハハ、ハーハッハ!コレデノコルハオマエヒトリダ。ドウスル?」

魔王はカリナの、カリナの心臓を…………。

「うぉぉぉぉぉ!旋風台風嵐!風神疾風かまいたち!雷神雷落とし!」

僕は冷静さを失っていた。ユウナ、ローナ、そしてカリナまでもが……。

「おぉぉぉぉぉ!」

技を連発する。力が続く限り、永遠に。

「フッ、マダアオイ」

「黙れ!黙れ!黙れ黙れ黙れぇぇぇ!」

僕はやめない。連続で、敵に隙を与えないように。もう、誰も殺させないように。

「お兄ちゃん!」

光莉の声がする。それはとても遠く、世界の反対側にいるみたいだ。


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