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ローナは禁じ魔法を使ってまでして僕らを助けてくれました

「何すんねん!離せや!」

僕と光莉が地下から上がってくると、ローナは敵に捕まっていた。

「おい、ローナ!」

敵の数は十数人。そう多くはない。

「ローナさん!」

だか、集団で囲まれている。ローナは闘うことが出来ないんだ。この状況はヤバすぎるぞ。

「旋風疾風突き!」

僕はその光景をみるなり、速攻で相手を一人倒した。

「な、何だお前⁈」

敵は僕の方を見て驚いたように聞く。

「僕はお前らの処刑……」

「ぐはっ!」

僕の自己紹介をしようとしていたら、光莉が跳んで割り込んで来た。

「はい、そんなの良いから、ちゃっちゃっと倒すわよ」

せっかくかっこ良く登場出来なのに……。

「へいへい。ってことで旋風大回転!」

ローナは飛ばさないように加減をして技を使った。

「帰って来んの遅いわ!あほ!」

半泣きになっているローナが言った。

「遅くなって悪かったな」

僕はローナの頭をポンポンと二回軽く叩き謝った。

「も、もう、ええわ。さ、さっさと倒してや」

何やら顔が赤くなっているローナ。どうしたのか?

「僕の後ろに居てくれよ。巻き込む可能性があるから」

僕はローナに注意して敵の方へ向かった。

「わかっとるわ!あほ!」

何だよ……。いきなりアホなんて……。まあ、今は、敵を倒すことに集中!

「風神旋風かまいたち!」

「剣技、乱舞」

僕と光莉は攻撃力の高い技で敵を次々と仕留めていく。

「く、くそっぉ!何でこんなに強いんだ!」

ん?強い?僕たちがか?敵から見るとそうなのだろうか?

「お世辞をありがとう!」

光莉はお礼の言葉と共にぶった斬る。

「そんなに強いのか?僕たちは?」

ふと疑問に思った僕は口に出した。

「お兄ちゃんは弱いよ、私より」

くっ、それはそうだが……。言い返せない……。

「きゃー!」

⁈どうした?僕は振り返る。するとローナが捕まって首を締められているではないか。

「へっへっへっ、これでどうだ。三大妖精は全員死ぬぜ?」

プチン

僕の糸が切れた。

「お前、許さ…………」

「はぁぁぁぁぁ!剣技、暗黒斬り!」

僕よりも先に光莉が敵に攻撃した。光莉は僕よりはるか遠くに居たはずなのに一瞬で敵の後ろに立って、首を斬っていた。僕を追い越した様子もない。どうやったんだ?

「けほっけほっ。はぁ、あんたらと組むと本当に疲れるわ」

ローナは苦笑いで言った。

「はいはい、悪うございました」

僕はローナを挑発するように言ってやった。

「何や!そんなこと言うんやったもう治癒したらんで!」

久しぶりのこの絡み。何だかとても懐かしい。

「思いふけってるところ悪いんだけど、まだ敵いるから」

光莉の喝が僕に飛ぶ。

「あ、はい……。ごめんなさい」

兄弱し。妹に対して全く勝てる要素がない。

「剣技、乱舞!」

光莉はさらにペースを上げて敵を倒す。それに負けないように僕も敵を斬る。

「旋風疾風突き!」

一突きで敵を倒し、残りは二人となった。

「くそっ、こいつら強すぎるぞ。に、逃げるぞ!」

その二人は僕に背を向けて、逃げて行く。

「逃がさないって。旋風疾風突き!」

「剣技、花吹雪!」

僕が一人に倒し、もう一人が怯んだ隙に光莉の攻撃が当たる。

僕の疾風の風で花吹雪の花びらがいっそう舞った。

「ふぅ、何とか間に合って良かったよ」

僕と光莉はローナと気絶しているカリナの元へ向かった。

「本当よ、少しは攻撃の魔法はないの?」

光莉の言う通りだ。強い奴ほど全てにおいて秀でているものだと思う。光莉がその例だ。本当に何でもすぐにこなしてしまう天才。妹LOVEスイッチが入らなければ……、だけど。

「あるって言ったらあるで?」

えっ⁈マジで⁈

「嘘……だろ?」

信じられない。回復専門だと言っているのに攻撃も出来るのかよ。以外過ぎて……。

「だったら何で使わないの?」

光莉が冷静に言った。

「うちら妖精は生まれた時から攻撃、防御、回復の三つのタイプに別れとるんや。でも、強くなればなるほど、他の魔法も使えるようになるんや」

知らなかった。妖精にはそんなことが生まれてすぐにあるなんて……。

「理由になってないわよ」

むすっとした顔で光莉は言った。

「続きがあってな、それを使うことはもちろん出来るんや。うちらも訓練場では三つとも練習する。でも、訓練場以外で自分のタイプ以外の魔法を発動すると……」

妙なところで切るな。

「発動すると?」

僕は続きが聞きたかったので言った。

「死ぬんや」

「な、何だよそれ!意味わかんねぇよ!」

自分のタイプ以外の魔法を使って死ぬなんておかしいだろ。

「そんよ、どうなっているの?」

光莉も少し焦っているのがわかる。

「生まれた時から決まってることや、仕方ないんや」

ローナの言葉には力がなかった。

少しの沈黙が訪れた。


「ま、まあ、それは良いとして、例の装置壊したぞ?」

僕は結果報告をローナにした。これで妖精の超回復も戻る。カリナも復活するはずだ。

「そうか、やってくれたんか。力が戻ってきたのもそのおかげやな」

ローナも自分で感じていたらしい。手をにぎひぎしている。

「これでカリナさんも大丈夫よね?」

僕が知りたいのもそこだ。あれだけの大怪我をおったカリナが戻って来るか心配なのだ。

「多分大丈夫やろ」

ローナはカリナに手を当て言った。

「良かった。これでユウナも報われるよな……」

ユウナありがとう。お前の残してくれた言葉のおかげでカリナは助かる。本当にありがとう。

「うん……」

「そうやな」

光莉とローナも頷き、僕と同じことを思っているだろう。

「ジジ……。ジジジジ……」

ん?気のせいか?

「何か音するか?」

これは僕だけの気のせいであって欲しかった。

「いや、するな。これ、ハチ型爆弾やな」

⁈まさかさっきの奴から残して行ったのか。

「おい、どうする?」

前回もこれで仲間を一人失っている。

「とにかくここはマズイわ。場所を移動しないと」

光莉はそう言ってローナをお姫様抱っこし、跳んだ。

「そうだな」

僕はカリナを担ぎ、光莉と同じ方へ向かった。

「ジジジジジ……。ジジジジジジジ……」

これはもう気のせいじゃない!明らかに近くにいる!

「おい、何でまだ音が聞こえるんだ?あの場所からは数百メートルは離れただろ?」

僕と光莉の脚力なら本の数秒でそのくらいは移動できる。ローナの身体能力向上の魔法のおかげだ。

「変ね……」

光莉も不思議がっている。

「そうか、わかったで!二人とも、自分についてないか探すんや!」

なるほど、そう言うことか!それなら移動しても最後まで追ってくるってことか。

僕と光莉、そしてローナは必死に自分についていないか探す。

「うちはなかったで」

「私も」

「僕もだ」

しかし、全員がなかったと言うことは……。

「ジジジジジジジジジ……」

音がどんどん大きくなる。時間がもうない、急がないと!

「カリナだ、カリナについてる!」

僕の声で三人ともカリナについていないか探す。

「あった、これや!」

見つけたのはローナ。一つカリナについてたらしい。

「投げろ!」

僕は叫ぶ。

「わかっとるわ!」

ローナは思いっきり投げた。

「あれはすぐ爆発する。それに投げても自動でこっちに向かってくる。だから逃げられんで」

ローナは何かを覚悟したような表情だった。

「おい、まさか!」

「そのまさかや。悪いな。ここでカリナやお前ら二人を死なすようじゃユウナに顔を合わせれん。だから魔王を倒すまで生き残ってや……」

ローナは色々なことを口にするが、ぼくの頭の中には一つも入ってこない。

「ダメだ!やめろ!」

僕は言うが、ローナは首を振るだけだった。

「やめて、ローナさん!」

光莉も訴える。しかし……。

「あんたら兄妹に会えていろいろと楽しませてもらったわ。ありがとうな。うちにとってお前らは最高の仲間や」

ローナは涙を流して言った。声が震えて自分でも怖かっているのが伝わる。

「やめろ!やめてくれ!」

ローナは答えない。

「優莉、うちはあんたのこと結構好きやったで。光莉には負けるけどな……」

ふふっとローナは笑って言った。

「いいよ、もういいから!やめてくれ!」

「ローナさん……」

光莉も涙を流し、言葉が出ないようだった。

「悪いな、先に逝ってしまうわ。魔王をしっかりと倒してくれや。今までありがとう」

やめてくれ!もう仲間を失うのは嫌なんだ……、嫌なんだよ!

しかし僕の声は喉に押し潰されて出なかった。

「全ての神よ、我に力を!全ての大地よ、光りに変われ!魔法転換、防御!ユウナ、力を貸してくれや……。フェアリーキューブ!」

辺り一面が光りに包まれる。これはユウナの絶対防御、フェアリーキューブ。まるで本当にユウナが魔法を唱えているみたいだ。

「ローナさーん!」

「ローナ!」

僕と光莉はローナを探し、その光りの中で叫び続ける。

「うちはここや。お前ら兄妹に未来を託すで」

そう言うと光りが消え、元の場所へと戻った。

「ローナさん……」

光莉は大粒の涙を流す。

「くそっ!何で、何でだよ!何でこうみんな……」

僕も目から涙が止まらなかった。ローナは最初に会った妖精であいつがいなければこんな妖魔世界なんて来れなかった。あいつがいなければ愛莉に魔王が取り付いたなんて知らなかった。あいつがいなければ僕はここまで闘ってこれなかった。あいつがいなければ…………、くそっ……。

「うぉぉぉぉぉ‼」

僕は大泣きした。高校二年になってこんなに大人になって、大泣きするとは思えなかった。ローナは家族くらいの絆が深かったと思う。そのローナがもう…………。

その場に残っていたのはローナが死を持って作った絶対防御、フェアリーキューブと僕と光莉、カリナの三人だけだった。


僕らはユウナに続いて、ローナも失った。ユウナは敵の自爆から僕らを守るため、ローナもハチ型爆弾から守るため禁じての魔法を使って死んでしまった。

それもこれも僕が不甲斐ないからだ。僕がもっとしっかりしていれば、あんなことにはならなかったはずだ。僕が、僕が…………。

「お兄ちゃん、元気だそ?ローナさんもこんなお兄ちゃん望んでないと思うよ?」

光莉は僕にそう言って優しく抱きしめてくれた。光莉も悲しいはずなのに、僕のことを気遣ってくれたのだ。本当は僕がやらなければいけないのに……。

「ああ、ごめん」

しかし、涙はポロポロとこぼれ落ちる。ローナはバカだったけど、いつも僕と光莉のことを考えていてくれた。いろんなことも教えてくれた。出会ったのはあっちの世界。もうなんだかだいぶ昔の気がする。それほどこっちで出来た絆が深かったのだ。大切な人になっていたってことなんだ。

「うっ、うっ、だってぇ」

僕は泣いてしまった。

「いいよ、お兄ちゃん。今は私の胸で泣いて」

光莉はギュッと僕を抱きしめる。僕は光莉の、妹の胸でしばらく泣いていた。

「くっ、あ、うーん……」

何だ?僕はカリナがいる方を見る。

「うーん、痛たた……」

上半身を起こしているカリナな姿が見えた。

「カリナ?カリナが起きたぞ、光莉!」

光莉はちょうど後ろを向いていたので、後ろを振り返った。

「嘘、カリナ……さん?」

光莉は手で口を覆った。信じられない光景だったのだ。今までピクリとも動かなかったカリナがついに、息を吹き返したのだ。

「んー?」

カリナは所々痛そうにしているが、別に悪いところはなさそうだ。

「大丈夫か?」

僕はカリナに尋ねる。

「うーん、多分大丈夫ー。今から、超回復しちゃうよー」

そう言ってカリナは意識を集中する。周りの光りがカリナに集まっていく。

「はぁー!」

カリナはゆっくりと目を開ける。

右肩の負傷は治っており、完全に回復していた。

「良かったよ」

僕は俯く。本当だったら、ユウナとローナもいて一緒に喜んだと思うと……。

「本当に良かった。おかえり、カリナさん」

光莉は涙を流してカリナに抱きついた。

「うわー、どうしたのー?」

このゆるい話し方、とても久しぶりだ。この場の空気が柔らかくほぐれる感じだ。

「良かった、良かったよ」

光莉はただ、カリナに頭を擦り付ける。そこまで嬉しかったのだ。僕もとても嬉しい。

「うんー。ところでユウナと、ローナはー?」

ピクリと光莉が反応する。思い出したくない光景が脳裏をよぎる。

「私たちを守るために命を張ってくれました。それで……」

光莉はその後のことを言えなかった。

「僕らが不甲斐ないせいで、命を落としました。僕がもっとしっかりしていれば……」

僕は自分を責める。

「いやー、そうかー」

相変わらずのゆるいトーン。本当に何も思っていないのじゃないかと思うほどだ。

「カリナさん、仲間が二人も死んだんですよ?気絶していて今は混乱しているかもしれませんが、これは重大なことなんです!」

そんなカリナの反応を見て、光莉は詰め寄る。

「わかってるよー、僕も怒ってないわけじゃないんだよー?」

本人はこう言っているが、話し方があれだから……。

「そうですか……。そうですよね。三大妖精として付き合いも私たちよりも長いはずてすし、当たり前ですよね」

光莉は冷静に戻り、うんうんと頷いている。

「その敵はー、何だったー?」

状況を知らないカリナのために僕はあったことを一から全て話し、どうしてこうなったかを伝えた。

「そっかー、爆弾で二人ともー。許さないぞー、魔王ー」

全く許さないと言っているように聞こえないカリナの言葉。どうしてこんな喋り方になってしまったのだろう。僕が不思議がっても、意味はないが……。

「じゃあ、行こうー。魔王はー、許さないー。僕がこの手で殺すー」

この残酷な言葉をゆるく言うカリナも久しぶりに見た。そして、黒いオーラを既に身にまとい、戦闘体制に入っていた。

「行くよー」

カリナが跳んだのに続いて、光莉、僕の順に跳ぶ。

これから僕らは最終決戦、魔王と闘う。待ってろよ愛莉。もうすぐお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けに行く。


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