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敵にも良い奴いました

僕らは強敵へビラーを何とか倒せた。しかし、失った代償は大き過ぎた。ユウナがヘビラーの自爆から僕たちを守るために身体を張って守ってくれた。そのせいでユウナは大怪我を負った。それに加え、自分がもう生きられないことを悟ったユウナは最後の妖力をローナに渡した。そして…………。

「くそっ!何であんなことになったんだよ!」

僕は悲しみが怒りに変わっていた。とても悲しかった、しかしユウナを守れなかった自分がそれ以上にムカつく。

「もう、そのことは気にすんなや」

ローナは力なく僕に言った。

「でも!」

僕は気にしないことなんて出来ない。最後までしっかりとヘビラーを見ておけばあんなことにはならなかった。あれは僕のミスだ。そのミスで仲間が一人いなくなるなんて……。

「お兄ちゃん!良い加減にして!」

光莉は僕に怒鳴った。

「すまん……」

光莉やローナも悲しいのは同じだ。僕だけが引きずっていていいものではない。

「さ、今は魔王を倒すことに集中しよっ?」

光莉は言葉でこの場を割り切った。しかし、顔はいつもと全然違う。やはり悲しみを隠しきれてない。

「ローナ、これからどうする?」

僕は立ち直り、冷静に物事を受け止めた。そして、今後の方針について考えようと思った。

「ユウナの言ったこと、覚えとるか?」

ローナは僕に質問してきた。

「妖精の超回復を何かによって妨げられてるって奴か?」

ユウナが残した闘いへの最後のアドバイス。これまでいろいろのことを教えてもらった。それはどれもありがたいものだった。今回も例外じゃない。例え小さなことでもわかったのだ。小さな一歩をユウナは最期にもくれた。

「そう、それや。うちはその何かを見つけてぶっ壊そうと思おうとる。そうすればカリナは自然に回復していくはずやからな」

なるほど。何かはわからないが、それを壊せば妖精の力がフルに発揮されるということか。

「わかった。それを見つけた方が今後、楽になるな」

僕と光莉はローナの回復魔法で治せるが、カリナはローナの力を持ってしても治せなかった。それなら原因を叩いた方が早そうだ。

「私も賛成ね。カリナさんがいないと攻撃が手薄になるもの」

確かにカリナの攻撃力は僕と光莉の比ではない。カリナがいたらユウナが死ぬことはなかったかもしれない。

「おし、それで決まりだ。どこから探す?」

やることは決まったが、どこにあるのかもわからないし、何をすればいいのかわからない。

「それならいい方法があるわ。私に任せて」

自信満々に光莉はその案を提案した。


「おし、来たぞ」

僕らは物陰に隠れ、敵が少人数で来るのを待っていた。

そして待つこと数十分。やっとチャンスが来た。

「オッケー。はいっ、ごめんなさいね」

そう言って光莉は敵をすぐに倒して行く。だが、最後の一人は急所を突かず、峰打ちで止める。

「お兄ちゃん、こいつの身動き封じて」

僕は光莉の言われるがままに相手をうつ伏せにし、腕を抑えて上から乗った。

バチッ

「気絶してないで起きなさい」

光莉は気絶して身動き取れない相手を容赦無く叩く。

しかし相手は起きない。

「ちっ、一発で起きろよ」

光莉が小さく舌打ちし、小さな声で言った。もちろん、僕には丸聞こえなんだが……。ローナが聞いたら何と言うか……。

バチッ、バチバチバチバチッ

今度は連打をする。敵だがなんか可哀想だ。

「う、く……」

どうやら目を覚ましたらしい。

「やっと目覚めたわね」

光莉は相手の顎を手でグイッとあげ、相手が自分の顔を見るようにした。

「うぐっ、な、何するんだ」

相手は抵抗出来ない上に、光莉の威圧的な顔。見ているこっちが怖い……。

「妖精の超回復を妨げてるものを教えなさい」

光莉は相手を真っ直ぐに見て言った。

「し、知らない」

「へぇ、白を切るんだぁ。どうなっても知らないよぉ?」

ヤバイ。光莉に変なスイッチが入ってしまった。

「ほ、本当に知らないんだ」

相手は何もしないでと言うように訴える。しかし光莉は……。

バチッ

頬を叩く、無表情で。

「それのせいで大切な仲間が死んだ。言いなさい!」

いや、それ以前に僕らはそいつらの同胞を限りなく殺して来たんだが……。

「知らないって言ってる!」

敵はキレる。光莉に向かってキレた。

ベチッ

「いい加減にしてくれない?こっちはあなたの命を握ってるのよ?その意味がわからないの?」

光莉は恐ろしい目で相手を圧倒する。しかもまた頬を叩いたし。

「だから!」

相手も必死に訴える。しかし光莉の表情は変わることはない。

「知らんって言っとるやろ?もうそのくらいでええんじゃないか?」

ローナもこの光景を見ていられないのか、光莉向かって言った。

「いや、まだよ。これだけじゃ足りない」

光莉はローナの方を見ずに言った。

「俺は知らないんだ!本当だ。助けてくれ!頼む!」

相手はとても必死に訴える。身体は動かないように僕が封じているが、それが解けそうになるくらいだった。

「いや、あなたは知ってる。もし、これでも言わないと言うなら……、指を一本ずつ切っていくわ」

残酷なことを眉一つ動かさずに言う光莉。

「おい、そこまでしなくて良いだろ!」

僕は光莉に言った。しかし光莉は僕の方を向こうともしない。

「だがら、知らないって……、言ってる」

相手はとうとう泣き出してしまった。

「そう、なら仕方ないわね」

そう言って光莉はナイフを出し、相手の人差し指に当てる。

「や、やめろ……。頼む!知っていることなら全部言う!だから!」

相手は必死に訴える。だが、光莉はやめようとしない。

「少し遅いわ。これは警告よ。死にたくなかったら私の言うことをしっかりと聞くべきだわ」

そう言って光莉は人差し指を切り落とした。

「うわぁぁぁ!うぐっ、うぐっ」

相手は僕の下で悲鳴を上げて涙をポロポロ落としていた。

「おい、光莉。少しやりすぎじゃないか?」

僕は慌てて止めようとするが、光莉は僕の言うことを聞こうとしない。まるで心がないロボットのようだ。

「さあ、次をやられたくなかったらすぐに言うことね」

光莉は威圧する。

「わかった。わかったから。言う、言うって」

相手は痛みを抑えて言ってるようだった。

「なら早くしな。早くしないと次切り落としちゃうよ」

光莉の目は完全に死んでいる。

「俺たちはお前らが来ることを知っていた。だから、それで準備をしっかりとしていんだ」

「そんなこと知ってる。それ以外ないのなら殺すまでね」

それは僕らにとって知っている内容であり、今は必要ない。

「ま、まだある。この城には数百の兵士がいる。だから、お前らは絶対に逃げられない」

それを聞くと光莉の目の色は一瞬で変わった。

「地雷を踏んだわね。これで右の指はないわ」

そう言って今度は親指にナイフを当て、そのまま切り落とした。

「うっ、うっ、くそがぁぁぁ!」

相手はジタバタとして痛みを訴えている。

「私たちは妹を助けて絶対帰るの。もうだれも死なせない」

鋭く芯の通った言葉だった。

「ふっ、無理だね。魔王様がお前らなんて……」

そう言った瞬間、光莉は中指にナイフを当て、切り落とした。

「うわっ、うわぁぁぁ!」

「魔王が何だって?聞こえなかったわ」

残酷だ。カリナの闘い方より残酷で惨い。

「光莉、もう良いやろ……。楽にしたれよ……」

ローナは手を口に当て気持ち悪そうにしていた。

「ダメよ、知っていることを全て話さない限り私はやめない」

しかし光莉はスパッとローナの言葉を切った。

「俺はもう何も知らないんだ。頼む、頼むから……」

相手も力無く訴える。

「残念ね。まだ口を開かない何て」

今度は薬指を切り落とす……。相手の悲鳴がここ一帯に響く。

「くっ、くそが……」

「あら、そんな言葉使いはダメでなくて?」

続けて右手最後の指、小指を切り落とした。

「うわぁぁぁぁぁ!うっ、うっ、うっ、何で、こんなこと……」

これで右手の全ての指を失った相手は光莉に聞く。

「そんなのあなたが一番わかってるんじゃないの?私の知りたいことを話さないのが悪いわ」

そう言って今度は左手を持った。

「おい、光莉!もう良いだろ!」

僕はもう耐えられなかった。見ているのもごめんだ。

「ダメよ、お兄ちゃん。しっかりと持っていてね」

光莉は僕に微笑んで言った。しかし、そこには優しさの欠片も無い。

僕は何も言い返せなかった。こんなことはやめるんだと一言が言えなかった。

「いいこと考えたわ。もうお兄ちゃんどいて良いわよ」

何だろう。光莉は手をパンっとやって僕に言った。正直僕はこの光景をもう見たくなかったのでその案にのった。

「はいっ、これで歩けないわよね」

そう言って斬ったのは足の腱だ。

「あっ、うっ、くそっ」

僕はどいたて相手は立って逃げようとする。しかし、足の腱が切られてるため、逃げれない。

「これで逃げれないわよね?」

僕とローナは後ろを振り返って、カリナの方へ行った。

「ダメだ、こんなの耐えられない……」

「そうやな、うちも同じや……」

僕とローナはカリナの近くで固まり、光莉の方を見ないようにした。

「さぁ、知ってることを言いなさい!」

光莉は怒鳴り相手に言った。

「だから、もう本当に知らないんだ……」

「そう、あくまで口を割らないつもりね?だったら痛みをあげるわ」

そう言って光莉は左の親指にナイフを当てた。

「頼む、本当なんだ!信じてくれ!」

問答無用で指を切り落とす光莉。

相手の悲鳴が響き渡る。

ローナは聞こえないように耳を塞ぐ。それでも身体はガクガクと震えていた。

「さあ、言う気になったかしら?」

光莉はまだこんなことをするらしい。

「だから、もう何も知らないんだ。ずっとそう言ってるだろ!」

相手は光莉に訴えるが、光莉は全く聞こうとしない。

「ウザいよ。いい加減にしな」

カチャンッ

光莉はナイフを地面に落とした。そしてその代わりに持ったのは……、剣だ。

「やめろ、やめてくれ!」

相手も必死で叫ぶが、光莉の目は遠くを見るようで死んでる。

「優莉、うち、もう……」

ローナはついに泣き出してしまった。

僕はローナをしっかりと抱きしめた。

「大丈夫、だから今は泣いていいよ」

僕は優しく言葉をかけ、ローナをギュッと抱きしめた。ローナもそれに答えるように僕を抱きしめる。

「妖精の超回復を防ぐ装置のことを教えなければ、この剣があなたを苦しめるわよ」

光莉は左肩に剣を突きつける。

「わ、わかった。もう、言う。だから待ってくれ!」

ついに光莉は相手の信念を打ち砕いた。

「なら、早く言うことね。滑って斬り落としてしまうかもしれないから」

光莉はふっと笑い言った。

「あれは、妖力強制遮断装置。文字通り、妖力を遮断するんだ」

相手は続ける。

「それはこの城に入った妖精の妖力を遮断して超回復を断つ。だからお前の仲間も回復しないんだ」

光莉はまだ剣を突きつけたままだ。

「まだ、知ってるわよね?場所はどこ?」

光莉はさらに攻める。

「地下にあれはある。だからそこに行って壊せば妖精の妖力をフルに使えるだろう。俺が知っていることはこれで全てだ」

相手はどうやら本当に知っている全てを話したらしい。

「その地下にはどう行くの?」

光莉は妖力強制遮断装置を壊しに行くらしい。

「地下に続く階段は一つしか無い。そこの階段を下に降りて、右に行って突き当たりにある階段を下に行けば地下に行けるだろう。だが、そこは兵士でいっぱいだ。オススメはしないな……」

相手は僕たちに次々に情報にくれた。

「そう、わかった。ありがとう」

そう言って光莉は相手に背を向けた。

「最後に俺の頼みを聞いてくれ」

相手は光莉を呼び止めた。

「何?」

光莉は相手の方へもう一度振り返った。

「俺は情報をお前らに渡したとしてここで生かされても、味方に殺される。それはなら敵のお前の手で殺してくれた方が兵士としてまだマシだ。だから、ここで俺を殺してくれ」

それは心からの願いに僕には聞こえた。あれだけのことをした光莉に最後はトドメを自分から刺してくれと言ったのだ。奴は兵士としてとても凄い奴だと思った。もし、これが味方だったら良かったのに……。僕は心の中でこう思った。

「そう、わかったわ。情報提供ありがとう」

そして光莉は相手の首を跳ねた。

ビチュッ

それと同時に血は吹き出し、辺り一面血の海に沈んだ。

「おい、光莉!そこまでしなくても良かったんじゃないか?」

僕はローナをそっと離し、光莉に駆け寄った。

「そうね、そうかもしれないわ」

光莉は俯き、呟く。本当はこんなことはしたくなかったような顔をしていた。

「でも、仕方ないのよ。愛莉を必ず助けなきゃいけないし、それにユウナさんのことも……」

やはり光莉は完全にユウナのことを忘れられたわけではなかったらしい。そのことも引っかかって今回このような事をしてしまったのだろう。

「そうか……」

僕にはこう言うしかなかった。どんな言葉をかけていいのか見つからない。奴は敵の中でも優れている頭を持っていただろう。しかし、僕たちの敵として目の前に現れてしまったが故の結果だ。これがもし、少し違ったら仲間になっていたかもしれない。

「この作戦は情報を聞き出すためのものだったのよ。あんなことになるなんてわかっていたでしょ?」

さっきまでの光莉はもういなかった。冷徹で他人を痛めつけても何も思わないあの光莉はいったいどこに行ったのだろう……。そんなことはわかるわけない。だか、その光莉のおかげで良い情報を得たのは事実。これを生かして、ユウナにも伝えるんだ。最期まで助けてくれてありがとうってな……。

「悪かった……」

僕は光莉に謝りこの場を済ませた。

「終わった……?」

ローナが泣き顔でこっちを見て言った。

「ああ、心配すんな」

僕はローナの方へ行き、頭を軽く撫でてやった。まだ震えている。よほど怖かったのだろう。

僕も光莉があそこまで冷たくなれる人間だとは思ってなかった。しかしそれは愛莉を助けたいという思いと、ユウナのことを思ってのことだ。やはり妹のこととなると人間性を失うのかもしれないと思った。

「悪かったわね、あんなもの見せて」

光莉はローナに頭を下げて謝った。

「終わったことはもういいやん。うちも綺麗さっぱり忘れる」

あんな残酷な光景は二度と見たくはない。ホラー映画を見ているかのようで、鳥肌が立ちっぱなしだった。

「そうね。聞いた情報を少しでも生かすことがあいつに対しての敬意よね。やりましょう」

そう言って光莉は奴が言った階段へと向かって行った。

それを追うように僕はカリナを担いでそこへ向かう。ローナも僕について来て、そこには相手の死体しか残らなかった。


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