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 生えた耳と無口少年

 始まりはほんの二か月ほど前に合ったお話です。西の果てにある自然ばかりの何もない田舎町でのお話です。


 お家は大体五つほどありました。その五つのお家の中に一つ、変わった運命にあった男の子がいました。いえ、その運命にあった人は他にもたくさんいました。ですが、その中を代表してその男の子のことを紹介します。




「…………」

 寝起きの頭はぼさぼさで、瞼が重そうです。クリーム色の髪をした少年の名前は「てぃあの」といい、随分と無口な子でした。(ですから私がこうやってこの少年の代わりに語っています)

「てぃあの、おりゅがぬちゃんが来てるわよ。早く支度しなさい」

 てぃあののお母さんが一階の階段から呼びかけています。


 おりゅがぬ? そうか、今日から学校だったっけ。

 

 てぃあのはベッドからのそのそと降りて、鏡の前に行きました。

 目はその時しっかりと瞑った状態でふらふらとくしのある位置を手探りで探し、持ち手を掴んでゆっくりそのぼさぼさの髪を梳≪と≫き始めました。


 ですが、何かおかしいです。てぃあのは目を閉じたまま寝ぼけた状態で髪を梳いているからでしょうか。頭のてっぺん付近をくしで梳けません。これにてぃあのも違和感のようなものを感じたのでしょうか。一旦髪を解く手を止め、開いた方の手で頭のてっぺん付近を触ってみました。

 すると、そこにはふわふわ、もふもふ、と、自分の髪がワックスで固められたかのようにある一定の形になっていました。てぃあのは瞑っていた眼を開けて何が起きたのか確認しようとしました。


「…………」


 これは…どうやら狐の耳のようです。自分の頭の上に生えていました。

 てぃあのは特に反応しませんでした。ただ、自分の頭に生えている狐の耳を触り、自分の意思で動くのか試したりしていました。かすかではありますが、耳はぴくぴくと動き、自分の意思と連携しているようでした。

 頭の耳が生えているからと言って、自分に本来生えている人間の耳はなくなっているわけでもありません。

 てぃあのはあまり深く考えることなく、また髪を少し梳いて一階に降りました。


 下に降りるとお母さんの姿はありませんでした。代わりに美味しそうなごはんと小さな手書きのメモが机の上にありました。


『お母さんはお仕事なので先に出ます。おりゅがぬちゃんには学校に先に行くように伝えておきます。ゆっくり食べてもいいけど、学校に遅れない程度にしてくださいね。では、行ってきます。 お母さん』


 てぃあのは内心少しほっとしたようで、食卓の椅子に座って黙々と朝ご飯を食べ始めました。




 ご飯を食べる最中、ふと思い出したことがあったようです。

 昨日見た夢のことです。目玉の大きなスライム状のオブジェに似た生き物が自分たちを取り巻き、何かカプセル状のものを飲み込まされたような夢です。自分たちを、というのは、自分以外に何人か誰かがいたのでそう言ってみただけのようです。そこで夢は途切れるという何とも不思議な夢だったそうです。

 ご飯を食べ終わり、何も無くなった食器を台所に運びました。パリンという音が聞こえたのはきっと気のせいでしょう。


 てぃあのは家のドアノブを掴み、外側にあけました。


「………遅い!」


 文句を言われました。

 そこにいたのは先に学校に行っているはずのおりゅがぬでした。


「随分と余裕かましてるのね。もう、学校まであと十分あるかないかじゃない。どうしてくれるの!」


 勝手に待っていたくせにこの言い草はなんだろうかと思うが、口に出せばまた怒り出すだろうと予測し、てぃあのは相変わらず黙認を続ける。


 …ふと、てぃあのは疑問を感じ、おりゅがぬに聞きました。


「…耳?ああ、これ?」


 自分と同じように耳が生えていました。ですが、それはてぃあののそれとは違い、長くてだらんとした、兎の耳のようなものでした。


「今日起きたらこんなのになってたの…、って…、てぃあのも生えてるじゃない。あたしだけじゃなかったんだ。ちょっと安心」


 赤ワイン色の髪を鬱陶しそうになびかせながら、ちょっと偉そうにするこのおりゅがぬとてぃあのは、幼い時からよく遊ぶ仲のいい関係でした。ですが、ある一定の時期からどういうわけか主従関係のようになり、てぃあのを見下したような行動をとるようになって、いつも偉そうにします。てぃあのはそれを虐められていると思い、自分勝手なおりゅがぬをあまり好きになれず、最近は嫌いになってきています。


「まぁ、あたしだけがこんなよくわからないことになってないって知った以上、別に不安を抱えることないんだよね…。

 ………何見てんのよ。ほら、さっさと行くよ!」


 おりゅがぬはてぃあのの腕を掴んで学校に向かって走り出した。



 *



「A-1、B-1の調子はどうだ」

「どうやらいいみたいだ。ウィルス『Cx:B2238z1』の培養も成功しているようだ。

 さて、これからどうする?」

「我々『メタマ星人』が地球を乗っ取るためにはこのウィルスを他のCCX-1やCCY-1に感染させる必要がある」

「なるほど」

「そうか」「いやだがまて」「うーぬ」

「取り敢えず、今は実験段階の浅いA-1、B-1の様子を見てから引き続きウィルスの培養、感染実験を行おう。後にC-1やD-1にも発症しだすだろう。この四人をなんとしてでも全員接触させるんだ。それまではCx:B2238z1の改良版であるCx:B2258z1の実験も行ってみようと思う」

「おお!」「それはすばらしい」「人間を捕まえるんだ!」

「これさえ成功すればメタマ星人は地球をいとも簡単に乗っ取ることが出来る!ギシュシュシュシュシュシュ!!!!!!」

「ギシュシュシュ!」「ギシュシュ!」「ギシュシュシュシュ!」




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