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94.2人きりです!

 あの後、麻由を待とうと思ったが紗弥に「桐崎くんが待ってるよ。送るって言ってるんだから一緒に帰ったら?」と言われて帰ることになった。……というわけでわたしは桐崎くんと一緒にいる。

「……」

「……」

 でも会話はない。なぜならわたし達はお互い自転車だから縦に並んで進んでいる。多分話すとしたら信号待ちで止まる時くらいだろう。そうじゃなければ家に着くまで無言のままだ。まぁあとちょっとで家には着いちゃうし。てか……わたしの家の前には1回しか行ったことないのに道覚えているのね。なんか意外。でもそれがほんのちょぴっと嬉しいというのはわたしの中だけの秘密。

「家、ここだよね?」

 とあるマンションの前で桐崎くんはスピードを落とした。もうわたしの住むマンションに着いてしまっていた。

「うん、ここだよ。すごいね桐崎くん。1回しか来たことないのに道覚えてるなんて」

「一度来た道は大体覚えてるからね。あ、あと乃愛さんの家だからっていうのも理由かな」

「ちょっ……!」

 なんとまぁこんな恥ずかしいことをさらっと言うのだろう。わたしには絶対できない。

 まだ付き合って間もないから2人きりはどうも慣れない。こういう場合、どうすればいいのかよく分からない。付き合ったことはあるけどあれは友達の延長みたいな感じだったし……。友達みたいな感じだったらフツーに話せるのに付き合ってるとなるとなんか落ち着かない。

「どうした?」

「えっ!あ、はい!」

 突然声をかけられて返事がおかしくなった。あー……もう、どうすればいいのか本当にわからない。

「ずっと下向いてるけど?」

 桐崎くんはわたしの顔を覗き込むようにしてわたしを見た。そして目が合った。

「え、いや、あの……。なんかボーっとしちゃって……」

「本当?」

「ほ、本当……」

 目を見ていられなくてさりげなく目をそらしてしまった。うわー、わたし、全然可愛くない……。

「もしかして……緊張してるとか?」

「えっ!?」

 桐崎くんは冗談っぽく笑いながら言った。桐崎くんは冗談のつもりでもわたしには全然冗談に聞こえない。

「えっ?マジ?」

「……」

 マジに決まってるでしょ……。男子と2人きりになる機会なんて滅多にないんだから!緊張しないわけがない。逆になんで桐崎くんがそんなにフツーにしていられるのか気になるよ。

「はぁー……、緊張してるのは俺だけだと思ってた……」

「えっ?」

 桐崎くん、今なんて……。

「言っておくけど、俺だって緊張してんだ。付き合うのは初めてだからな」

「……初めて?」

 一瞬わたしの頭には桐崎くんの再従妹の楠木美嘉ちゃんの存在が浮かんだ。

「あぁ。美嘉のことならカウントすんなよ?あれは付き合ってるフリをしてただけでちゃんとした彼氏彼女じゃなかったんだから」

「あ、そっか……」

「……その反応、絶対カウントしてただろ?」

「あ、あはは……」

 やっぱり見抜かれちゃってる……。とりあえず笑ってごまかしてみる。

「笑ってごまかしてももうバレバレだから」

 ……無理だったけど!

「俺さ、乃愛さんと付き合うまで告白されたこともないし告白したこともないんだからな?それくらい恋愛なんてあまり興味なかったよ。ホント、三次元より二次元の方がいいって何度思ったことか……」

 おぅ……。やっぱり三次元より二次元派の人なのか彼は。今は付き合ってるから違うとわかってはいてもそんなこと言われると少し傷つく。また二次元の方にいってしまうんじゃないかって不安になる。

「でも乃愛さんと会って変わったよ。最初は可愛い人がいるなーって思っただけだったけど、話していくうちになんかどんどん気になり始めて。自分にもこんな感情があるんだって驚いたよ。ありがとう」

 不意打ちの言葉にドキッとした。そんなこと言うなんてずるいよ……。嬉しくなって舞い上がっちゃうじゃないか……。

「こちらこそ……好きになってくれてありがとう」

 そういうと桐崎くんは優しく笑った。その笑顔を見たらわたしも嬉しくなってつられて笑ってしまった。

「それと……そういう顔、あんまり他の人に見せないでね?」

「えっ?なんで?紗弥達にも?」

「いや、林原さん達は別に構わないんだけどただ……やっぱなんでもない」

「えぇーっ!そこまで言ったら言うべきでしょ!」

「なんでもないったらなんでもないんだ!」

 桐崎くん……なんかムキになってるのは気のせい?そんなに言いたくないの?ならなぜ途中まで言った!?言われたこっちはもやもやすると言うのに!

「乃愛さんってすぐ表情変わるね」

 桐崎くんは笑いながら言った。

「えっ?そう?」

「うん。さっきはすっごく笑顔だったのに今は頭の周りにクエスチョンマークがいっぱい浮かんでるような顔してる」

 クエスチョンマークがいっぱい浮かんでるような顔ってどんな顔!?よくわかっていないような顔のこと?だったらはっきり言えばいいのに!てかそういう顔をするように仕向けたのは桐崎くんでしょ!桐崎くんが途中まで言っといて最後まで言わないから!わたしは言いたかったことを言わず、心の中で叫んだ。

「ほら、また変わった」

「えぇっ!」

「そういう素直な行動、可愛いな」

「な、な……!」

 と、突然彼はなにを言うんだ!か、可愛いだなんてよくもまぁそんな言葉をさらりと……。ってさっきも思ったような……。やっぱり桐崎くんってよくわからない。

「あ、あんまりそんなこと言わないで……。言われ慣れてないんだから……」

 とか言いつつ言われ慣れてはいる。もちろん、女の子限定だが。男子に可愛いと言われたのは血の繋がりのある人以外では多分桐崎くんが初めて。元カレはそんな単語を発しようともしなかったし、発するようには見えなかった。……って、元カレなんて過去の人だからもう関係ないし!

「それを言ったら俺だって言い慣れてないからな?」

 桐崎くんがそう言ったちょうどその時、突然ケータイの着信音が鳴った。

「電話じゃない?」

「あ、本当だ……ちょっとごめんね」

 桐崎くんにそう言って電話に出るとそこから聞こえたのは――

「乃愛、あのね聞いてほしい話があるの」

 紛れもなく麻由の声だった。

「麻由!?話ってもしかしてあのこと?」

「うん、そのこと」

 麻由の声は至って冷静だった。その声からは麻由の気持ちを想像することは難しい。

「ヒロくんと話した結果ね、付き合ってくれるって!」

「えっ?ホントに!?」

「うん!」

「わぁー!よかったじゃん麻由!おめでとう!」

「ありがとう!……とは言っても1ヶ月限定だけど」

「えっ?」

 1ヶ月限定……?わたしはその言葉の意味が理解できなかった。

「えへへ、やっぱりなに言ってるかわかんないよね?1ヶ月限定で付き合うのってやっぱり変?」

「変ではないけど、一体どういうこと?」

「ある意味賭けに近いかな。これはあたしから提案したことなの」

 麻由が提案?1ヶ月限定で付き合うということを?なんで麻由はわざわざそんなことをしたの?本当に加賀美くんが好きならそんなことしないはずなのに……。

「ヒロくんにね、『1ヶ月だけあたしと付き合って!あたし、やっぱりヒロくんのこと諦められない。だからヒロくんに好きになってもらえるよう頑張るから、1ヶ月だけあたしに猶予期間をちょうだい。その間に好きになってもらえなかったら潔く諦めるから』って言ったの。結構むちゃくちゃなお願いだったけどヒロくんはいいよって言ってくれた。だからとりあえず1ヶ月だけはヒロくんの『彼女』でいられるの」

 でもそれって、1ヶ月の間に加賀美くんが麻由のことを好きになってくれなければ、麻由は諦めざるを得なくなる。それは、麻由にとっていいことなの?

「あたしは、もしヒロくんに好きになってもらえなくても後悔しない。逆に1ヶ月だけでもあたしのわがままを聞いて『彼氏』になってくれたことに感謝する。だからこれが最後なの」

「麻由……」

「そういえば、今桐崎くんと一緒なんでしょ?」

 突然話が麻由のことから今のわたし達への話に変わり、わたしは一瞬にして戸惑った。

「ちょっ……えっ!?なんでそれを……!」

「紗弥から聞いたよー。桐崎くんに『送るから』とかなんだか言われたんでしょ?それで紗弥が気をきかせて2人で帰らせたって言ってたし」

 紗弥め……。いろいろとやってくれましたね。まぁ、一応感謝はしてますよ?

「よかったね。送ってもらって」

「ま、まぁ……」

「なにその曖昧な返事ー!あ、近くに桐崎くんいるなら代わってほしいんだけど」

「えっ、あ、うん。わかった」

 わたしはケータイを桐崎くんに渡した。

「……えっ?なに?」

「麻由が桐崎くんに話あるらしいよ?」

「俺に話?なんだろう……」

 桐崎くんはわたしからケータイを受け取ると、麻由に話しかけた。


かなーり遅れました!

すいません!


それとご報告です!

諸事情により10日ほど休止します!

下手したらさらに延びるかもしれませんが……。


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