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8.ヒロイン抜擢されました!

「遅いっ!なにやってたんだ!」

 会館に入ると予想通り真田くんに怒鳴られた。しかもご丁寧に入口で待ち伏せまでして……。

「うぅ……。ごめんなさい」

「あぁ悪い。寝ちゃった」

 桐崎くん、それを言っちゃ真田くんに……。心の中で呟いた瞬間、桐崎くんは真田くんに頭を叩かれた。

「いった!なにすんだよ真田!」

「なにが寝ちゃっただ!第一今日は会館で部活だとあれほど言ったのに部室に行くとか……」

「大丈夫。如月さんもだから」

「桐崎くん!それは――」

 バシッと言う痛そうな音がわたしの言葉を遮った。

「いったぁ!なんでわたしも叩かれるのー!?」

「なんで部室行ったんだよ!副部長なんだから活動場所くらい覚えてろよ!」

「如月さんは部誌を取りに来ただけだから」

「ちょっと桐――」

 わたしの言葉はまたも真田くんに叩かれる音で遮られた。

「いったぁ!2回も叩くことないでしょ!?」

「部誌を取りに行ってたのかよ!副部長が遅刻と忘れ物か……」

「遅刻は仕方ないでしょ!臨時の委員会だったんだから!」

「だったら俺に一言言えよ!」

「言う暇がなかったの!」

 昼休みになって突然言われたことだし!

「まぁまぁ。2人とも落ちつ――」

「桐崎くんは黙ってて!」

「桐崎は黙ってろ!」

 2人の声がハモった。桐崎くんは迫力に負けてなにも言わなかった。

「まぁいいや。脚本はどうなの?って1日じゃ無――」

「ある程度なら出来上がったけど?」

『えっ?』

 今度はわたしと桐崎くんの声がハモった。

 だって、えっ?桐崎くんと2人で脚本を書くんじゃなかったの?なんである程度出来上がってるの?桐崎くんは全然ダメって言ってたけど……。

「今回は俺のシナリオと桐崎のシナリオ、どっちがいいか部員全員に決めてもらう」

『……はっ?』

 会館内にいて真田くんの声を聞いた部員は一斉に声をあげた。そりゃそうだ。彼は今一体なんと言った?とんでもないことを言った気がする……。

「ちょっと待て真田……。お前、それはマジか?」

「あぁ。マジだけど?」

 真田くんは本気で言ってるみたい。でも多分みんなが採用するのは真田くんのシナリオだと思う……。桐崎くんはシナリオなんか書いたことないし。

「それで勝手に配役を決めた。主役は如月だ」

「えっ?わたしがやるの?いやいや無理だってそんなの!主役の経験ゼロだけど」

「だからやらせるんだよ」

「そんなぁ……」

 第一主役をやっていたのはほとんどが男子生徒。シナリオ的に男子目線がほとんどだった。多分女子目線のシナリオは今回が初めて。

「桐崎、お前も如月をヒロインとするシナリオを書いてくれ」

「ちょっと待て真田。お前のシナリオが出来上がっているならそっちでいいだろ?なんでわざわざそんなことを……」

「……なんでだろうな。みんなの考えを聞いてみたいってのもあるけどよく分からない」

 よく分からないのにやるのか……。

「桐崎くん、書いてよ。シナリオ」

「如月さん!?」

「多分真田くんにはなにか考えがあるんだよ。でもそれを知るのは今じゃなくてもいいんじゃない?」

「それもそうだけど……。――分かった。書くよシナリオ。如月さんをヒロインとするシナリオを」

 そうだった。わたし、一応ヒロインに抜擢されたんだった……。しかも突然。

「よし、それじゃあ桐崎のシナリオが完成するまで俺ので練習だ。まだ仮だけどこんな感じだから」

 そう言って真田くんから渡されたプリントには配役とあらすじが書いてあった。

 真田くんの書いたシナリオはやっぱり少しシリアス。暗めの内容だった。

「えっ……。こんなキャラをわたしが演じるの?」

 主人公は幼い頃に両親を殺された孤独な少女。そして数年後、成人した少女は両親を殺した犯人に復讐するというなんともいえない暗めのストーリー。

「まぁまだ仮だから修正する部分もいくつか出てくる。頑張って役作りしろよ?」

「……はーい」

 真田くん、今回は気合いが入ってるように見える。やっぱりプライドみたいなものがあるのかな?

 ……って、そんなことを考えるよりまず役作り!真田くんの書いたシナリオの主役を演じる人はいつも役作りがなってない!って真田くんに怒鳴られるし。怒鳴られないようにしっかりしなきゃ!

 わたしはわたしがやるべきことをやるだけでいいの。少なくとも今は。他のことを考えるべきではない。

 普通に男子と話してみたいとかそんなこと……考えるのは今じゃなくてもいいんだから。


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