78.改めて実感しました!
教室に残されたわたし達の間に流れるのは沈黙だけだった。
「……」
「……」
お互いなにも話さない。目も合わさない。どうしよう……。なにか話したくても話題がない。でも桐崎くんはなにかを言い出そうとしてないし……。あーもうどうすれば……!
「……あ、あのさ」
そんなことを思っていると桐崎くんが口を開いた。
「な、なに?」
「ごめん、まさか加賀美があんなに言いふらすとは思わなくて……」
「えっ?あ、あのこと……」
「そう、あのこと」
「えっ?なんで謝るの?」
どうせいつかは知られること。黙ってたら黙ってたで知られた時に騒ぎになるし。それにわたしは最初から隠すつもりはなかった。だから謝られてもどう反応すればいいのか分からない。
「いや、だってあんなに騒がれたら困るかと思って……」
「困るのはわたしより桐崎くんの方だと思うけどなぁ……」
「俺!?」
「だってそうじゃない!?桐崎くんの方がかわかわれるに決まってるって!第一わたしのことからかうのなんて真田くんか加賀美くんくらいだよ?わたしにはからかわれるほど親しい男子ってあまりいないんだから!多分部活とクラスの一部の男子くらいだよ……」
「うわマジかよ……」
桐崎くんは髪をくしゃっと掻いた。そんな姿がちょっと可愛いと思った。そんなこと口に出せないけど……。
「だから桐崎くんが謝ることはなにもないって。むしろ桐崎くんの方こそ困るんじゃ……?」
桐崎くんの彼女がこんな女の子好きの女子なんて知られたらそれだけで桐崎くんが恥かきそう。
でも桐崎くんはそんなわたしの考えを無視してさらっと言った。
「まさか。どうせ言いふらすつもりだったし。困ることなんてねぇよ」
「なっ……!」
言いふらす!?わたしと付き合うことを!?いやいや、それはそれで恥かきますよ!?いやいや本当に!わたしみたいな男子が苦手な人と、男子に対して態度が冷たい人と付き合うなんて知られたら……。
「一応言うけど俺と仲良い奴は俺が乃愛さんのこと好きだって知ってたからな?ほら高村とか」
桐崎くんが言う高村と言うのは同じクラスで桐崎くんが加賀美くんの次によく一緒にいる人のこと。
「乃愛さん知ってるか分からないけど俺と高村、一応中学同じだから。中学から仲良いし」
「……えぇっ!?そうなの!?」
なにそれ初耳……。初めて知ったんだけど……。
「あ、やっぱり知らなかったんだ。そうだよ。高村は俺の中学時代からの友達だから。で、高村には加賀美の次にバレたかな。……というか前に部活帰りに乃愛さんと本屋に寄った時のことについて聞かれて、話したらバレた的な?」
……それでバレたの?とか思いつつもわたしもそれがきっかけで遥奈や雪帆に知られたけどね。そうだ、遥奈と雪帆にも言わなきゃ。大切なことだから噂で知られてしまう前に言わなきゃいけない。
「桐崎くんが言いふらしたいなら言いふらしても、いいよ……」
わたしは桐崎くんから視線をそらして言った。自分からこんなことを言うのは滅多にないからやっぱりちょっと恥ずかしい。
「えっ!?本当にいいのかよ!?」
「うん。桐崎くんがそうしたいならわたしは桐崎くんに任せるし合わせるから!だって……付き合ってるのは本当のことだもん」
「そっか、そうだよな」
桐崎くんは手をわたしの頭の上に乗せて優しく撫でた。実はそれがすごく嬉しいとは恥ずかしすぎて口にできないけど。
「ヤバいかな俺……。めちゃくちゃ嬉しいんだけど……」
桐崎くんは照れているかのように頬を少し赤くした状態で言った。
「えっ?なにが?」
「これだよこれ。『友達』だったらこうやって頭撫でたりすること出来なかっただろ?それに彼女がいるってみんなに言いふらしたりできるのがすげぇ楽しい!その彼女が乃愛さんだから尚更嬉しい!」
ドキッ。反則だよ桐崎くん。そんなこと簡単に言わないでよ。嬉しすぎてなんて答えればいいか分からないよバカぁ……。
「じゃあさ……わたしも言っちゃっていい?付き合ってる人がいるんだって」
わたしがそう言うと桐崎くんは一瞬キョトンとした顔をしてそれから優しく微笑んだ。
「当たり前だろ?隠す気は毛頭ないんだから」
「……ありがとう!」
桐崎くんは優しい手つきで優しい顔をしてわたしの頭を撫でた。この優しい顔、付き合う前の『友達』の時は見たことないもん。付き合ってるからこそこんなに優しい顔をするの?彼女じゃなかったらこんなに優しい顔をしなかったのかな?あ……わたしがナンパされたのを助けてくれた時の表情は優しかったかも。
「……桐崎くんってこれ好きだね?」
わたしはわたしの頭を撫でる桐崎くんの手を指さした。
「あぁ。だって隙をみつけてやるって言っただろ?だからやる。それに乃愛さん、これされても嫌じゃないだろ?」
「っ!」
見透かされてる……!わたしの思ってることが。桐崎くんにはお見通しなんだね。
「乃愛さんの表情見るだけで大体分かるからな?」
「うぅ……」
なんかすごく照れる。めちゃくちゃ恥ずかしい。この感じ、いつになったら慣れるかな。
「……だからあまり油断しないでね。乃愛さん」
「へっ?」
油断しないでねってどういうこと?わたしには隙がありすぎるってこと?
「いや、やっぱなんでもない。さぁて、そろそろ部室戻ろうか?」
そう言って桐崎くんはまたわたしの頭をポンと撫でた。
「う、うん……」
なんとなく納得はいかないものの1人になるのは嫌なので一緒に戻ることにした。
部室に戻ると待ってましたと言わんばかりに部員のみんなに囲まれ、質問攻めにあった。少し離れたところにいた真田くんと緋華は笑いながらわたし達を見ていた。更に言うと緋華に助けを求めても緋華は助けてくれなかった。
再開したものの若干短め(泣)ごめんなさい!
胸きゅんシーンもあまりなくてすいません!
これからは胸きゅんシーン増やしたいんですけどね、なかなかできないんですね……。




