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76.質問の嵐

「マジ何なんだよみんなして……」

 みんなに事情を聞かれたおかげで結局昼飯食えなかった……。そのせいで午後の授業は死んでいた。

「なにやつれてんだよ桐崎」

 後ろから誰かに背中を叩かれた。真田だった。

「なんだ真田か」

「なんだとはなんだ。なんだとは。俺じゃ不満か?」

「いや、別に」

 こいつはなにも知らねぇのか?なにも言ってこねぇしなにも聞いてこねぇ。真田に知られたら冷やかされること間違いなしだから逆にありがたいけど……。加賀美がいろんなところでバラしたおかげであんな目に合わされたし。

「なぁ桐崎、お前俺になんか言うことあるよなー?」

「えっ……」

 ドキッとした。真田はすごくニヤニヤとした顔で俺を見た。やっぱり知ってたなこいつ。じゃなきゃこんなにニヤニヤした顔で俺を見てこねぇし……。ドSな奴め……!

「俺には全てお見通しだぞ?」

 うわー。そうやって鎌をかけようとするところが更に嫌味だ。

「あーもううるせぇ!別にいいだろ!?」

「やっぱりあるんだな。さぁ言え!」

 真田のくせに……。宮本さん来たら冷やかしてやる絶対に。

 そんな真田を無視して部室のドアを開けて中に入ると既に先客がいた。乃愛さんだった。それも机に突っ伏した状態で。

「おい……こいつ死んでねぇか?」

「……死んでない。眠いだけだもん……」

 真田の言葉に反応して乃愛さんが起きあがった。すごく眠そうな顔をして目をこすっていた。

「すげぇ眠そうだな」

「いろいろと疲れたもんでして……」

 その気持ち、なんとなく分かる気がする。俺も加賀美を含めたあいつらのせいですげぇ疲れたし腹は減るし……。

「お前もいろいろあるんだな」

「うん……。だからみんながそろうまで寝させて……」

「あぁ分かった。1つ質問に答えたらな?」

「質問?なに?」

 真田のニヤリとした顔を見て俺は嫌な予感しかしなかった。そしてその予感は的中した。

「お前ら実際どうなってんだ?付き合ってるんだろ?」

「……えぇっ!?」

 乃愛さんの顔は真っ赤に染まった。分かりやすい……バレバレだよ乃愛さん。真田は乃愛さんがこう反応することを分かっていてわざと聞いたんだな。それに俺がなにも言わないから。

「なななな……なんで!?」

「テンパり過ぎだろお前」

 真田は乃愛さんの反応を見て面白そうに笑いながら言った。乃愛さんの顔は赤いままだった。

「いやー桐崎が答えてくれないから如月に聞こうと思って聞いたんだけど……。図星だろ?」

「うぅ……。真田くんのそういうとこ嫌い!緋華が来たら言ってやる!真田くんに嫌がらせされたって!」

 ちょっとちょっと乃愛さん!?否定も肯定もしないってどういうことだよ!?どっちかにしなよ!

「否定も肯定もしないんだな」

「っ!」

 早速指摘されたし!そして答えない時点で怪しいだろ!乃愛さんの顔はさっきよりも赤くなっていて耳まで真っ赤だった。

「……もう別にいいでしょ!?わたしが誰と付き合っても!」

「っ!」

 もう投げやりになったのか乃愛さんは開き直ったかのように言った。それを聞いて今度は俺の顔が赤くなった。と同時に部室のドアが開いてそこにいた部員が目を丸くしていた。微妙な空気が流れる。

「えっと……あの……」

 乃愛さんがなにかを言おうと口を開いた瞬間、部活に来た部員が騒ぎ出した。

「ええっ!?乃愛って付き合ってる人いるの!?」

「如月が付き合ってる奴って誰!?俺らの知ってる奴!?それとも他校!?」

「ちょっと待ってみんな!わたしの話を聞い――」

「他校ってまさか元カレと寄り戻したとか!?」

「嘘!?乃愛ちゃんが元カレと別れたのって1年以上前の話だよ?そんなわけないじゃん!」

「ちょっと!元カレネタ引っ張らないで!禁句だよ禁句!」

 ……元カレ?乃愛さんには前に付き合っていた人がいるのか?そういえばそういう話ってしたことなかったな……。でもいてもおかしくねぇよな。あー……なんだろう。すげぇ悔しいしその元カレに嫉妬しそうなんだけど。

「桐崎だよ。如月の彼氏」

 俺が乃愛さんの元カレについていろいろ思っていると真田がバラした。

『ええっ!?』

 悲鳴にも似た叫び声が部室内に響いた。

「ちょっと真田くん!?」

「おい真田!」

『許可なくなに勝手にバラしてんの!?』

 俺達は口をそろえて言った。すると部室内は更に騒がしくなった。

「おいおいマジかよお前ら……!」

「えっ!?いつから!?ねぇ教えてよ!」

 ほら絶対こうなると思ったよ……。真田は俺達に許可なく勝手に言ったり俺達が口をそろえて言った時点で。

「それはその……」

「ちょっと待って乃愛さん」

 乃愛さんが口を開いた瞬間、彼女の口の前に手を差し出した。

「こういうのって……言わない方が面白くない?」

「面白くねぇ!もったいぶらずにさっさと言え!」

『そうだそうだ!』

 部室のいろいろなところから野次が飛ぶ。隣にいる乃愛さんはオロオロしている。そんな彼女の耳元に顔を近づけた。

「乃愛さん。……逃げようか?」

「……うん!」

 2人で同時に後退りをしてドアの方に近づく。みんなの視線は俺達に向けられたまま。

「さぁ言うんだ桐崎!」

 真田が面白そうに叫んだ。お前は知ってるからいいだろとつっこみを入れたくなった。

「言うってなにを?」

 突然後ろから声がしたので振り向くとそこには宮本さんがいた。

「緋華!ちょっと聞いてよ!真田くんが――」

「お前知ってたか?桐崎と如月、付き合ってんだって」

 また許可なく勝手にバラしたよこいつ!絶対面白がってる。

「えぇ!?嘘!おめでとー!で、いつから?」

「それを教えてくれないんだよこいつら」

「ちょっと乃愛!教えてよ!」

「えっと……それはその……」

 乃愛さんが困った顔で俺を見た。そして俺は口元に笑みを浮かべて乃愛さんに言った。


「……行くよ」


 俺は先に部室を出た。

「うん!」

 返事をした乃愛さんも部室を出て俺達は走って逃げた。

「あ、おい待て!」

「逃げる気か!」

 みんなが言うことを無視してひたすら逃げ、空いている教室を探した。


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